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リオ・ナユ

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月夜…ティント編



人里離れたところにある“月の紋章”に呪われた種族「吸血鬼」が住む村。
ただ、そこでは月の紋章がもたらす力だけで暮らしていく事が出来ていた・・・「魔力」さえ求めなければ。
しかし我がの欲望の為に里に伝わるこの紋章を盗み出した者がいた・・・それがネクロード。
月の紋章がなくなれば、里に住む者にとっては選択肢は二つ。

そう。
人を襲い、血をすするか、静かに、死を、待つか・・・。
そして多くの者が「死」を選択した。

「・・・悲しかったぞえ。我が子たちがみな、死していくのを見るのは・・・。そして呪われたわが身を恨んだ。“始祖”であり、死ぬ事の出来ぬわが身を・・・。」

紅い瞳が部屋に入ってくる月明かりで光った。

「“月の紋章”はとりかえさねばならぬ。これ以上、やつめをのさばらすわけにはゆかぬ・・・。・・・失われた魂は・・・戻らぬが・・・。」

そっと呟くように言ったシエラは、とても儚く見えた。

そしてカーン。
彼にとってはネクロードは、父や祖父のかたきだという。そして、ネクロードを倒す事は、もはやカーンの存在意義だ、と。

「人は誰でも、自分の人生に価値を見出そうと苦しんでいます。そして、いつかはその答えを出す時がやってくる。ネクロードを倒した時が、わたしにとって、その時なのでしょう。」

夜更け、2人と個別に話をしてみたナユは、しばらく一人で外の月を見ていた。
・・・月。
あの時の事を思い出す・・・ジョウイ・・・。

それからやっと自室として使わせてもらっている部屋にもどった。

「貴様はたいがい動き回りすぎだね、とっとと寝れば?」
「な、なんであなたがここにいるんです!?」

ぼんやりと部屋に入ったら、ベッドに腰掛けたリオがいた。
リオはナユ達がここに戻ってきて、今日はもう出かけないと分かると、またどこかにいっていたようである。
少なくともナユは、今の今まで姿を見なかった。

「何その言い草は?ごあいさつだね?ケンカうってるの?」
「べ、別にそうじゃありませんが・・・今までどこにいたんです?」

リオの姿を見た瞬間嬉しくなった自分が嫌だと思った。

「どこって、別に?なぜ?そんなに僕の事知りたいの?」

にっこりとリオが言った。

「ち、違っ。そりゃ、あなたは今回はもともと戦闘要員として組み入れてませんでしたけど、非常事態ですし、あまりどこにいるか分からないような事はやめてもらえませんか。」

・・・それらしく聞こえる、よね?
実はそばにいて欲しいとか、姿が見えないと心配だとか、そんな風には聞こえないよね?

「ふ・・・。やっぱり貴様は僕の事が好きなんだねぇ?」

だがリオは笑ってそう言った。

「違います!!あ、いえ、そりゃあ好きだとはいいましたがっ、って、何また言わすんだ、くそっ。」

ナユはおもしろいくらいに動揺した。
そんな様子をリオはククク、と笑って楽しんでいるようである。

「まあ、いい。とっとと寝れば?」

それからそう言って、リオはベッドから立ち上がって、ナユに譲るようなポーズをとった。

「・・・あなたはどうするんですか?」
「僕?適当にするよ?」
「てゆうか、あなたこそちゃんと眠ってるんですか!?最近あなたが眠ってるところを見た記憶がないっ」
「そりゃあ貴様が眠ってるからだろ?」
「それはそうですが・・・てゆうか忘れてた、人に勝手に薬飲ませたりとか、何するんですか。」
「別に怪しい薬じゃないよ?ていうか相変わらずうるさい。早く寝ないとまた薬飲ますけど?それとも襲おうか?」
「どちらも遠慮します!!」
「ネコ科になった割にその辺は野生化されてないね?つまらん。」
「何言ってんですか・・・て、どこ行くんです?」

リオが踵を返して部屋から出ようとしたので、ナユが聞いた。

「どこって、部屋から出るだけだけど?それとも何?添い寝でもしてほしいの?」

またこの人はどこかに行こうとする。

城にいる頃はいつも追い出してもリオの部屋でなく、こちらの部屋にいりびたっていたくせに。
なぜかこの遠征から、どうも自分と距離をとろうとしているとしか思えない。

・・・なぜ・・・?
嫌われた・・・?

だが肝心な時は守ってくれていたようである。
それにちょこちょことは接触はとってくれている。
最近ますます分からない・・・。

その時ふと、遠征前日の事を思い出した。
あの時もリオはありえないほどそっけなかった。嫌われたのかと本気で思った。
だがそれは結局はナユの体を思っての、リオなりの配慮だったと分かった。・・・分かった時点では襲われてしまったが。
もしかして今回も・・・?そう、思っても、いいだろうか・・・?

「っい。」

ナユは俯き加減で何か言葉を発した。
だがまったく聞こえなかったので、リオはけげんそうに近づいて、何?と聞いた。

「っだからっ、そっ、添い寝っ、し、て下さいっ。」

ナユは真っ赤な顔をして耳を垂らした状態でそう言い放ち、近づいていたリオのそでをギュッと持った。
リオがポカン、とナユの顔を見たが、俯いている上に、ギュッと目を瞑っている。

「っち・・・」

え、なんか舌打ちした・・・?
垂らしてもよく聞こえる耳に入ってきた音に、ナユは反射的に身をすくませた。
だがデジャヴが脳裏をよぎる。そういえばあの時も・・・。

「・・・その無自覚な言動、やめてくれ・・・。」
「・・・え?」

リオがボソリと言った言葉はあまりちゃんと聞こえなかった。今の耳でも。
考え事をしていたのもあるが、それほどに呟くような声だった。

「・・・別に。・・・いいよ、分かった。」

今度は比較的はっきりと言って、リオはそのままベッドに向かった。無言でナユをうながす。
ナユはホッとしたような、でもはずかしい気持のまま、布団にもぐりこんだ。

だって・・・仕方がないじゃないか・・・今は・・・そばにいて、欲しい、んだ・・・。

そうして同じく横になってくれたリオの胸元に身を寄せた。
リオは一瞬身をこわばらせたような気がしたが、お得意の毒もはかず、何も言わず、そんなナユに手をまわして背中をポンポン、とたたいてくれた。
殺戮魔とは思えない、と思いつつも、どこかでやっぱりこの人は優しい人だ、と分かっている自分がいる。
ナユは、知らないうちにずっと張っていた気が、ようやく取れたような気が、した。
作品名:リオ・ナユ 作家名:かなみ