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小説PSU EP1「還らざる半世紀の終りに」 第1章

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universe17 新たな事実


 整備が終わりカズン・ドッグを出ると、すでに午後2:00をまわっていた。
 アナスタシアは携帯端末を取り出し、その間は切っていた電源を入れる。特に重要な連絡はなかったが、出掛けに来ていたファビアのメールを、もう一度開いてみた。
『お疲れ様です、ファビアです。昨日はお疲れ様でした。調子はいかがですか? 本日より別任務に当たらなければいけないようなので、しばらくお会いできないかもしれません。それではまた連絡します――ファビア』
 アナスタシアは携帯端末の画面を見ながら、ため息をついた。朝早くに届いていたメールを午後になってやっと見たという事もそうだが、彼の気遣いに対して申し訳ないと素直に思ったからだ。
 ……ファビアと初めて出会ったのは、三年前。彼はガーディアンになって僅か一年だったが、持ち前の精神力と信念の強さで"将来のエース候補"と言われるほどの実力をすでに有していた。
 それでも奢らず、謙虚さを忘れず、周りを気遣える彼の姿勢は素晴らしいと素直に思う。何しろキャストのアナスタシアにはそういった気遣いは失念しがちだったので、尚更そう思ったのだ。
 もちろん、その思いは今も変わらない。
 そんな事を考えながら二の腕のカバーを開けて一本のケーブルを取り出して端末に繋ぐ。頭部のメインメモリに作った文章データをメールに流し込んだ。
(お疲れ様、アナスタシアです。心配はいりませんわ、メンテナンスも終わり気分爽快です。ではまた、次の任務でお会いするのを楽しみにしています――アナスタシア)
「……送信完了」
 アナスタシアは呟いてから、そのまま端末を叩いた。そういえば、ファビアからのメールの後にもう一通メールが届いていたのだった。それはガーディアンズ・ホルテス支部から届いたもので、差出人はガーディアンズ諜報部。昨日の任務での情報に関する事だとは推測できたが、朝はばたついて見る時間が作れなかった。
"アニー、元気にやっとるか? 昨日御前さんが持ち込んだ情報について話がしたい。明日の午後、いつでもいいからホルテス支部に寄っとくれ。なお、支部に来る時は元気良くな。シブシブ来るんじゃないぞ――ラジャ"
 ……なんとなくため息をついて、アナスタシアは端末をしまった。

「いらさーい ませ。グラールの平和を作るガーディアンズへようこそです!」
 受付のシーナは、製造されてまだ間もないキャストなので言語機能があまり発達しておらず、上手に喋る事ができないのだった。
「昨日諜報部に渡した情報の件で、ラジャに会いに来たのですが」
 カズン・ドッグもまた、支部と同じくホルテス・シティにある。ドッグを出て10分ほど歩くと、すぐにガーディアンズ・ホルテス支部に着いた。
 昨日の任務で得た情報が、わずか一晩で有益な情報に化けている可能性など微々たるものではあるが、それに期待するなと言う方が無理がある。とにかく、少しでもいいから何かを得たかったアナスタシアは、メールを見てすぐに支部へと向かっていた。
「ミーティングルームで諜報部のラジャがお伝えしますです。二番の部屋を使ってくらさーい」
「ありがとう」
 微笑んでから、アナスタシアは中へと進んだ。
 ミーティングルームに入ると、年老いたニューマン男性がいた。長い白髪を後ろでまとめ、ニューデイズ製の服に身を包んでいる。その顔は年相応にしわがあった。
「おお、ひさしぶりじゃの、アニー」
「お久しぶりですわ」
 言いながらアナスタシアは椅子に腰を降ろした。
「で、どんな情報が得られましたの?」
「まぁ、落ち着いて、まず茶でも飲め」
 言いながらラジャは、ニューデイズ製の陶器で作られた湯飲みを置く。
「しかし……!」
 焦った表情のアナスタシアに対して、ラジャは至って瓢々として言葉を紡ぐ。
「心配するな、情報ならチャ〜〜んとあるわい!」
「……」
 アナスタシアは言葉に詰まった。というより、むしろ勢いを削がれたと言った方が正しい。
 かれこれラジャとの付き合いも短くはなくなってきたが、彼はいつも重要な場面で駄洒落を言い、脱力させる。それは真剣味に欠け、あまりにもマイペースすぎるように見えるのだ。
 だが、これも彼の作戦かと勘繰りたくなる時もある。なぜなら、彼の分析・情報収集は常に素晴らしい結果をもたらせてくれるからだった。
「あっはっは」彼は笑って、「……が、今回はあまり期待に答えられんかもしれんな。すまんのう」
「……いえ。急な話でしたし」
 ゆっくりと声にして、気を抜くとあふれ出てしまいそうな期待を抑えつける。
「少しだけでも、良しとしますわ」
「うム。そうしてくれると、わしも楽じゃわい。……さて、しかしグラールは広いな。この三惑星に、一体何人の人間がいることやら」
「ですわね」
 彼が一見関係のなさそうな話題から入るのはいつもの事だ。アナスタシアはゆっくりと足を組み換えて、耳を傾け始めた。
「500年の戦争で人口はかなり減ったとはいえ、ここ100年でまた増え始めておる。戦乱などで世が荒れている最中には気付かれないが、落ち着き始めると違う種類の人間が増え始めるのじゃ」
「……悪人や犯罪者の類ですか?」
「ううむ、残念ながら満点はやれん……まぁ〜んてな!」
「……」
「近いんじゃが、定義としては"奪う者"かの」
「奪う……者?」
 その答えに首を傾げる。ラジャの言わんとする事がよく分からなかったからだ。
「うム。そもそも戦争の最終目的は、敵の物資・人民・領地を奪う事じゃろ。破壊だって相手から見れば奪う事に相違無い。そんな中じゃそういう類の行いは正当化されるわけじゃ」
「確かに……」
 言われてアナスタシアはいろいろと思考を巡らせる。単純に、そういう視点で物を見た事がなかった。
「悪人も近いんじゃが、その定義は状況によって変わるので満点ではないわけじゃ。最近では、ローグスを始めとする組織だった"奪う者"が増えているようじゃの」
 アナスタシアは何も答えず、代わりにテーブルに載せた両手を組んで、少しだけ前傾姿勢をとる。
「ヒューマン原理主義を掲げる組織やら、アルフォート・タイラー率いる宇宙海賊やらがその代表格なわけじゃが……そいつらより、最近気になっている組織がある」
 ラジャは言いながら、リモコンを取り出してスイッチを押した。テーブルの上にひとつのホログラムが映し出される。それは白衣を着た、一人のニューマンだった。
 アナスタシアは、その顔に明らかに見覚えがある。
「バーバラっ……!」
「そう、バーバラ=キンケード。かつては"天才博士"と呼ばれた女じゃよ」
「かつては……?」
 確かによく見ると、ホログラムの映像のバーバラは確かに若い。何より、出会った時のような歪んだ表情ではなく、むしろ意気揚々としている印象がある。
「16年前、ニューデイズでA・フォトン、ならびに遺伝子工学の権威ある博士だった彼女は、ある実験を成功させ、一躍時の人となったんじゃ。彼女はA・フォトンの"空間を制御する"という特性を生かし、物質以外のものを転送する技術を生み出した」
「……どこかで耳にした事がありますわ。まさか……」
「そう」
 ラジャは不必要なまでにじっくり間を置いて、絞りだすように続けた。
「"・記