二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
みとなんこ@紺
みとなんこ@紺
novelistID. 6351
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

トラリトゥルリ

INDEX|1ページ/5ページ|

次のページ
 






吹き抜けていく風が、心地良い熱をはらんで渡る。
風は気持ちが良いし、天気も良い。
いつもは何らかの騒ぎを起こす彼も、今日は大人しく書架にこもっているようだし。
――――うん、良い日だ。
概ね何も心配事もなくて、彼は気分良く優雅に午後のお茶を楽しんで―――
「ネスーッ!ネスネスネスー!」
「・・・・・・。」

ああ、もろくも崩れた静かな一時よ。




声の主は返事を返すまであの調子で呼び続けるつもりらしく、一向に引く気配もない。
…というかどうして庭から声がするんだ。
君はさっきから書架に篭もっていたんじゃないのか。
…途端、微妙に疼きだした頭痛から気を逸らす為に、(というか根本から原因を抑えるために)「ここだよ、マグナ」と彼を呼んだ。
さほど大きな声ではなかったはずだが、ピタ、と階下の叫び…もとい、呼び声が止まる。
そのまま軽いフットワークで階段を上がってくる音が聞こえ、ひょい、っと見慣れた笑顔が顔を出した。
「見つけた」
「…まったく。一度呼べば済むだろう。騒々しい事この上ないな、君は」
早速のお小言にもめげずに、コレコレ、と差し出された紙片に目を通すと、僅かにネスの表情が動いた。
「ファナンに?」
「補給に立ち寄るだけだって書いてあるけど。ねぇネス、せっかく…」
「却下だ」
みなまで言わせずに一刀両断。
間髪入れずに盛大な抗議の声が上がるが、じろりと無言で睨め付けると少々後ろめたいマグナの方が、う、と詰まった。
「…この間の件の報告書、期日は明日までだった筈だな?」
「・・・ハイ」
「即取りかかれば良かったのに放っておいて、期日ギリギリまで延ばして。結果、ファナンの大祭にも行けない、遠方からの客をろくにもてなす事も出来なかった上、盛大に気まで遣わせたバカは何処の誰だ?」
ん?
と笑顔で聞いてくるのが非常に怖い。
最近身につけたらしい、ネスのこの攻撃をかわす事は実はまだ一度たりとも成功していない。
うう、折角なのに、お祭りなのに、と唸りだしたマグナに「自業自得だ」とトドメを刺しておいて、ネスは一つ息を付いた。
「・・・取り合えず、報告書をあげろ。チェックが終わらないとどうしようもないだろう」
ぽん、と机にすがってえぐえぐ言っている手の掛かる弟弟子の頭をはたいてやって、小さく、不備がなければ考慮する、と付け加えてやった。


「――――ホントは、さ」
小さな、独り言のような呟き。
「トウヤたちや、来てくれた皆に悪いなーとは思うんだけど」
いつかみたいにネスと2人で祭り、行きたかった。
…ゴメン、と。
小さく、色々なものに謝ったらしいその言葉を聞かなかったふりをして、ネスは小さく息を付いた。

「祭りは毎年あるんだ。なくなったりしない」
だからまた行けばいい。

マグナは小さなその答えに、ふわりと笑って、うん、と小さく頷いた。
作品名:トラリトゥルリ 作家名:みとなんこ@紺