For one Reason
*few years later*
「月君月君っ! それならせっかくなので最後に団子を買って来てください」
「……わかったよ、ネットで買えばいいのに……」
「ご当地限定だから意味があるんです!」
はいはい、と呟いて月は座席を立つ。
隣に座ってもぐもぐと八橋を食べているLは出会ったときと同じ、奇妙な体操座りをしてぼさぼさの黒髪でずるずるのジャージ一歩手前の服で。
隣に置いてある荷物の中身の半分は甘味かもしれない。そんな気もしてくる。
とりあえず彼は何も変わらない。
「えーっと、土産っと」
トランクを預けてくるついでにどうして団子を買っているのか理解できなかったが、とりあえず適当なのを手にする。この量なら飛行機に乗るまでに食べ終わりそうだ。そう判断して清算を完了させ、店から出てきた時、月は驚愕に足を止めた。
そこにいたのは、忘れもしない。
「勝ったわ」
「……え?」
「あなたに」
「真紀、さん?」
戸惑った月に真紀は笑う。
言葉の意味がわからなくて、月はその場に立ち尽くす。
「ありがとう。君達のおかげで今年の夏もガッツリ売れたわ」
「売れた……?」
「そりゃあ世界のLと実際にあった事件を扱ったから不謹慎と言えばそうだけど、世の乙女はリアリティを求めているものね」
「はい?」
月が全く理解できないことを言ってから意味深な笑みをいつものように浮かべた真紀は、その続きを口にした。
「完結作が出るのは来年の夏コミだから、今年の発刊分の〆はいつもこうよ、「あなたも死神に名前をかかれぬように」最終作の分は考えていないけど」
落とされた言葉の意味がわからない。
最後の最後になんて事を言うのか、彼女は。
「さようなら、夜神月」
指先に口付けて、投げキッスを送った真紀はすぐに背を向けた。
***
長かった。
かききった。
たのしかった。
補足が蛇足になりそうで怖くてできませんでした。
一ついうなれば真紀さんの目的はそう、
「次のコミケで出すオリジナルBL本のネタ集め」
でした。
作品名:For one Reason 作家名:亜沙木