二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Second to None 後編

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 

第4話


遡ること、三年。アルフレッドがまだ研究機関に所属していたときの話。

「だから、所長が言っただろう!アンドロイドの研究はするな、諦めろ!」
「嫌だ!別にロボットが人型になっただけじゃないか!どうしてダメなのさ!」
「どうしてって、どうしてもだよ!そういう暗黙の了解ってもんがあるだけだ!」
「俺はそんなの知らないぞ」
「アルフレッド!」
「俺はそのために今日までここでいろいろ勉強してきた」
「それを他のことに生かせ」
「嫌だ、俺は作るって決めたら作るんだ!」
「じゃあ出て行けばいいだろう、ここから出てけ、所長にも他の研究員にも迷惑がかかる」
「ああ、いいよ。俺はどこへだって出て行ってやる!」
「出て行かれるのですか、アルフレッドさん」
「「菊!」」
「あ、すみません。お花を届けに参りましたら、お二人の声が聞こえたのでつい。それにしても寂しくなりますね。アルフレッドさんが出て行ってしまわれるなんて」
「あ、いや、お、俺は…」
「何だよアルフレッド、今さっき俺に向かって豪語したじゃねえか」
「アーサーは黙ってろ!」
「ふふふ、本当にお二人は仲がよろしくてうらやましいです」
「「仲良くなんかない!」」

研究所の隣には、小さな花屋があった。そこで働く菊に、アルフレッドは恋をしていた。なかなか踏み込まないアルフレッド、そんなアルフレッドに全く感づきもしない菊。アーサーは嫌気が差していた、何なんだこいつら青春しやがって。けれどそんな輪の中にいることがいつしか心地よくなったアーサー、結果的にアルフレッドが手を出すまで、または菊が行動を起こすまで見守ることにしたのはいいが。そんな日がくるのはいつになることやら、もしかしたらおじいさんになるまでこんな関係のままなのではないかと最近は思うようになった。けれど恋愛に口出しはご法度、それ故アーサーは今もこうして共通の友達として輪の中に収まることにしている。

「あ、そうだ。アルフレッドさんにお花です」
「俺に?誰からだろう」
「えっと、確か何とかっていう通信会社だったような…ちょっと待っててください」
「あ!多分この前開発した部品のお礼だ!きっと」
「そうなんですか、ではお受け取りのサインいただいてもいいですか」
「ここだな、うん」


***


「そんなところで座り込んで、何やってるんですか、アルフレッドさん、あなたの仕事場はお隣ですよ」
「菊!聞いてくれるかい!……あ、アーサーったらまだ俺を子ども扱いするんだ!」
「また喧嘩したんですか?」
「喧嘩じゃない、けど…喧嘩かもしれない?」
「私は喧嘩できる誰かが居るのってとてもいいことだと思うんですけど」
「そう、かい?」
「ええ、お互いのことを思ってるからこそ口が出ちゃうんじゃないでしょうか?」
「…そう、なのかなあ」
「そうですよ、きっと。…あ、アルフレッドさん、今何時です!?」
「え?えっと、お昼の12時48分」
「すみません、この後配達があるので」
「俺こそごめん!あ、それと、菊!」
「はい、何でしょう」
「誕生日、おめでとう!」
「…なんで、それを?」
「俺が知らないことなんてないぞ!ということで、今日はアーサーの家でパーティーするから、帰りはこっちに顔出すんだぞ!逃げたりしたら許さないからな!」
「あ、はい、わかりました。アルフレッドさん!」
「ん?」
「ありがとう、ございます」


***


「急に呼び出したりして、どうしたんだい、菊」
「私、あの、あ、アーサーさんと喧嘩しました!」
「…嘘、だな」
「アルフレッドさんこそ、私の誕生日におんなじこと言いました!」
「あれはその…なんて話を切り出せばわからなくて」
「私もです、何て切り出せばいいのかわからなくて」
「…え?」
「アーサーさんから聞きました。もうすぐお誕生日なのでしょう?アルフレッドさん」
「…え?あ、そうみたい」
「だから今度は私がお祝いします、楽しみにしててくださいね!」
「わかった、楽しみにしてる。それで、これから配達かい?」
「はい、お得意様に」
「気をつけるんだぞ、車には」
「はい、気をつけます」
「ほんとのほんとに気をつけるんだぞ」
「はい、気をつけます」
「いってらっしゃい、菊」
「いってきます」

いってきます、と言ったあの菊の声が、いつまでもいつまでも耳から離れなくて。


***


「アーサー!」
「アルフレッド」
「菊は?菊は!?」
「…ほぼ即死だそうだ」
「う そ だ ろ」
「遺体、見えるらしい。どうする?やめとくか」
「菊に会いたい」
「こっちだ」

ガラガラガラ。

「事故は、相手が菊に突っ込む形だったらしい。向こうの運転手は軽症すらなくて、今は警察で調書とられてる。菊はヘルメットをかぶってたが、最初に地面にぶつかったときの衝撃で吹っ飛んで、それから何度も地面に叩きつけられるような形になったらしく、そのときに頭を打って病院に来たときにはもう手遅れだったそうだ」
「だから二輪なんてやめろって言ったんだ」
「アルフレッド」
「それに俺の誕生日祝ってくれるって言ったんだ」
「知ってる」
「いってらっしゃいって言ったから、おかえりって言わなきゃいけないんだ俺!」
「うん」
「俺、菊を直す。俺ならできる。だって俺すごいんだぞ!俺は今まですごい発明してきたんだぞ!菊をまた目覚めさせることくらい!」
「俺たちは医者じゃない!モノは直せても、人は治せない!わかるよな、アルフレッド、生きてる限りは死ぬんだ、そんなこと言うなよ!」
「菊にはまだ生きる権利があった!そうだろ!事故だったんだ、こんな事故無ければ!」
「お前は菊を生き返らせてどうする!」
「どうするって、菊はまだ死ぬときじゃない!今日じゃない!」
「アルフレッド、おまえは菊を、二回も殺したいのか」
「ち、違う!」
「菊を目覚めさせるっていうのはそういうことなんだよ!生きてる限り、死ぬんだよ!」


「違う、違う、きく、菊 菊 菊 、俺はまだ好きだって伝えてないぞ」


作品名:Second to None 後編 作家名:こまり