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薔薇の棘

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第二章






源田が現れた時、皆がその顔を見て固まった。
いつもの引き締まった顔が緩んでいたからである。

「どうしたんだよ源田!!」


「何があった」


「あ、それ貰ったんですかぁー? 可愛い子に一目ぼれしちゃったとか?」

成神が目ざとく手の中の紙袋を見つけて、揶揄するように言った。
すると急に源田の頬が赤くなる。

「え!!もしかしてマジですか!!」

発言の元凶の成神自身が驚いた。

「へー、そんなに可愛かったのか?」
珍しく寺門が話に乗ってきた。

「と、とても可愛かった」
源田は恥ずかしそうに俯いてこぼす。まだ逢瀬の余韻が残っているようで、彼の周りには甘い雰囲気が残っていた。


「何貰ったんだ?」
友人の希少な姿に辺見は面白そうに言ってきた。

すると源田ははっとした表情になって、辺見を見て
そして幾分きつい口調で


「いや、これは俺にじゃなくて。お前にだそうだ」

そう言って辺見に差し出した。
源田の瞳は敵意がこもっている。フィールドの時とは全く違う敵意だった。


「え!!何!!辺見先輩あてなんですか?!!源田先輩を陥落させた子が!?」

成神は絶叫した。

「明日は槍が降るかもな」

寺門が言った。






「あ、ありがとう」

いたたまれない空気と、それでも美少女が自分に差し入れをくれたという事実が辺見の頭にぐるぐると回る。
嬉しいやら恥ずかしいやら申し訳ないやらでなんとも奇妙な気分だった。


源田は手から紙袋が離れるとき、切なそうに眼を伏せた。
それがさらに辺見の胸を締め付ける。


辺見は紙袋をそっと見た。確かに宛名は自分だった。
しかしどこかで似たような字で、辺見は急いで記憶から該当項目を弾きだす。
筆跡の持ち主を思い出した瞬間、辺見は無意識にバリっと紙袋を破いていた。


「なんてことするんだ!!!!」
源田が激高した。

「そうだぞ。お前を想って持ってきてくれたんだろうが!!」
寺門が源田とは違った意味で怒った。

「辺見先輩の分際でなんてことするんですか!!」



「うるせーよ!!!お前らには関係ない!!!」
辺見が怒鳴り返した。
珍しく反抗してきたことに、皆が一瞬止まったが、
すぐに気を取り戻し源田が殴りかかった。


「落ちつけ源田!お前には関係ないだろ!!」


「うるさい!!せっかくの頂き物を粗末に扱うな!!」


「お前に言う資格あるかよ!!」

源田が女子にしてきた仕打ちを指摘したが、源田はひるまなかった。

壁に打ち付けられ、源田がこぶしを振りかざしたとき、

「言っておくけどなあ。あいつ男だぞ!!!」

自棄になった辺見が叫んだ。



「男・・・?」

源田の動きが鈍くなる。
あまりの出来事に信じられないといった目で辺見を見た。

「男だよ。俺の幼馴染で佐久間次郎。一緒に風呂入ったこともある」


辺見が緩んだ源田の手を襟首から外す。

「成神、紙袋の中の手紙見てみろ」


「あ、はーい。えーと。"元気かデコ。お前にぴったりなヅラがあったから持ってきてやった。感謝しろ。佐久間次郎" なんか俺と気が合いそうです。デコっていうネーミングセンスが気に入りました」


「そりゃもうお前と気が合うだろうよ。アイツは性格が悪いからな」

辺見が殴られた頬をさすりながら言った。
すると戸口が開いて、鬼道と少年が出てきた。


「性格悪くて悪かったなデコ」


「佐久間!!」


「ここがサッカー部の部屋か。中々設備整ってるじゃねーか」
佐久間は嬉しそうに部屋を見渡した。
見た目は女子のように見えるが、所作は立派に男である。


「鬼道さん、一体何でまた佐久間と一緒に?」

「編入生だ。今日からサッカー部員になる。佐久間から聞いたぞ、お前と幼馴染だそうだな」



「あ、お前さっきの。…へぇ」

佐久間は源田を見つけ、声をかけた。
そして乱闘の痕を見ると、口角を上げる。


「辺見にちゃんと渡してくれたんだ、サンキュな。で、ぶち切れたデコに殴られたってとこか。悪かったな」


佐久間は源田の外れたホックを止めてやる。身長差のためどうしても佐久間が見上げる形になるが、それがあまりにも官能的で源田は頬に熱がこもる。


「いや、俺殴ってない。殴られたの俺。見てわかんねーか?」


「お前が殴ろうとして殴り返されたんだろ。相変わらず喧嘩弱ぇーな」

佐久間がそう言って辺見を笑った。




「確かにすっごく綺麗ですけど、性格に難がありますね」
一連の流れを見て成神がこそっと辺見に耳打ちをする。


「だろ?」


「薔薇には棘があるって言いますしね」


「棘の方がいくらかマシだ」


源田に微笑みかける佐久間、それをみて嬉しそうに笑う源田。
辺見は源田が哀れでならなかった。

茨に捕まった源田。


彼はそこから逃れられないだろうから。



作品名:薔薇の棘 作家名:rita