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最高のFINALE

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そこは辺りを砂漠に囲まれた中にある、唯一獣が生息する草原地帯だった。切り立った岩の小山の一つを選んで、トランクスは着地する。
(確かに、この辺りに父さんの気を感じる…)
トランクスは気を集中させ、再びべジータの気を探った。

(…あった!)

近くの地表にその気を感じたトランクスは、一気に岩の小山を飛び降りる。
「父さん!どこですか!?」
声を張り叫ぶトランクスの耳に、不意に懐かしい声が届いた。
「そんなに怒鳴らなくても聞こえている」

振り返ると、そこにべジータの姿があった。
相変わらずの、厳しい表情と、声。姿も数年前と変わらぬまま。しかし決定的に違っているのは。
「…なんで戻って来たんだ」
カプセル・コーポからこの場所までは、大した距離ではないはずだった。けれどもべジータは明らかに疲弊していた。昔なら、何という事もない距離。歩くよりも容易い事だっただろう。しかし、今では僅かに肩で息をするほどに、彼の体力は衰えていた。
「何で、って…、俺は…」
突然のその問いかけに口篭るトランクスに、べジータは舌打ちする。
「もう、俺にかまうな」
「そ、そんな言い方…!」ないじゃないか、とトランクスが反論しようとしたその時。
「俺が、ここに来なければ、お前は家で大騒ぎしただろうが」
べジータのその言葉に、トランクスははっとした。
「だから、もう、俺にはかまうな」

この言葉は、父なりの、家族に対する優しさなのだ。トランクスは気付いた。
母や、妹に余計な心配をかけまいとする、不器用で、けれども誠実な優しさだった。
でも、とトランクスは思った。上手くは言えないがそれは、きっと間違っている。
「…どうしてこんな時まで、意地を張るんです」
トランクスはどうしようもなく、胸が痛んだ。
自分の命の最後が近づいているこんな時にまで、家族に意地を張るその姿に、どうしようもないもどかしさを感じた。
しかしそんな事を言っても、聞き入れる彼ではない事をトランクスは良く知っていたが、それでも言わずにはいられなかったのだ。自分が最も尊敬し、目標としていたその存在が、その生き方が、あまりにも胸に痛くて。

「もう、いいじゃないですか!」トランクスは声を荒げた。
「俺は、父さんにまだ何もしてあげられていないし、父さんを超えられもしていない…。だからせめてこんな時位は、傍にいさせて欲しいんです」
微かに潤んだトランクスの目をじっと見据えて、べジータはただ静かに立ってその言葉を聴いていた。
そして、ふっと息を吐くと、ゆっくりと話し始めた。
「…俺は何も変わらず、最後まであいつの傍にいると決めた」
トランクスは、父の意外なこの告白に驚きを隠せなかった。
自分の心の内を、身内や他人を問わず人には話したがらないはずの父。それがこんなにも真っ直ぐに、自分に向かって話してくれている事に。
「あいつには、最後まで笑っていて欲しい。ブラや、お前にも」
思わずトランクスは顔を下げた。父の言葉は、あまりにも優しすぎた。あり得ないほどに。それが尚更、この現実を突きつけてくる。

別れという、現実を。

「お前はもう一人で生きていける男だ。認めてやる。だからもう、俺にはかまわず自分の道を生きていけ。そして、本当に大切なものを守り抜け。それが、俺を超えた証になる」

涙が止まらなかった。
トランクスは思った。俺は、母や妹は、本当に父に愛されている。本当に、心から。


東の空がゆっくりと白んでくる。

太陽が上るに連れて、二人の輪郭がはっきりと朝の光の中に浮かんでいく。
「…じゃあ、俺、戻ります」
トランクスのその言葉に、べジータはただ頷くだけだった。
きっと、これが、父との最後のやりとりとなる。

「父さん!」トランクスは思わず声を上げた。




「最後に…、一つだけ、俺の我侭、聞いてくれますか」




それから、最後に言わせてください。
俺、あなたの息子に生まれて、本当に良かった。


そして、トランクスは振り返る事なく、その場から飛び去った。
べジータはその息子の背中が見えなくなるまで、空を見上げていた。



作品名:最高のFINALE 作家名:めぐる