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学級戦争

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番外/経年編


 問題学級2-Aから3-Aに上がれたのは学級の3分の1以下で、その3-Aから卒業に至ったのは結局、10人しかいなかった。

 高校を卒業し早6年、当時から好き勝手にしていた彼等は相も変わらず好き勝手に暮らしている。1人だけ卒業と同時に海外へ飛んだが、他の9人は飽きもせずに池袋周辺に住んでいるので出歩いていれば出くわすことも少なくはない。仲が良いのかどうかは知れないが悪くはなかった彼等は顔を合わせれば話もするし、稀に食事を共にしたりもする。





 門田京平は本日、元・級友の紀田正臣と出くわして互いに暇だからと露西亜寿司で昼飯を食べていた。
「委員長は元気なのか?」
「生きてはいるみたいなんだけどな」
 犬猿の仲どころではなかった2人は相変わらず戦争紛いの喧嘩をしているし、入学後すぐに付き合い始めた2人は未だに別れる気配はないし、歩く保健室だった男は闇医者として相変わらず白衣を着ているし、唯一と言って過言ではなかった常識人にして苦労人は相変わらず後輩の面倒に追われている中、彼等だけが当時とは異なっている。
 委員長こと竜ヶ峰帝人は海外へ、園原杏里は偏差値の高い大学へ、三ヶ島沙樹は女子短大へ、そして正臣はそこそこの大学へと、見事に各々がバラバラな道を選んだ。放課後などほとんど4人揃って遊びに行く様子を見ていただけに周囲は拍子抜けしたが、本人達はそんなものだと笑っていた。それでも頻繁に手紙や電話で連絡を取り合っているのだから、そう簡単に切れる縁でもないらしい。
「そもそもどこで何をしてるんだ?」
「大学出た後は知らねえ。届いた写真見てどこだよ!? って思わずツッコミ入れた」
「……まあ、元気そうで何よりだが」
「健康な人間だって流れ弾に当たれば死ぬけどな」
 帝人は世界を転々と渡り歩いているようだ。E-メールに添付された写真を見せて貰うと明らかに未開地だった。溜め息を吐く正臣に、しかし門田はこの分だと当面は死にはしないな、と勝手に決めつける。何だかんだ言って無事を確信しているからこそ送り出したのだろうし、タダでは転ばない性格と見た目に反してやたらと高い順応性を持っていた帝人があっさりと倒れるとは思えない。今もどこかで生きているのだろう、何をしているのかは皆目見当もつかないが。

「同窓会とか企画すれば帰って来るか?」
「止めろ、全員揃うと碌なことにならねえ」

 とりあえず正臣の提案は却下しておいて外へ出る。
 出たところで目の前をどこかの店の看板が飛んでいった。次いで破壊音と怒声に罵声。
「何で大人しく新宿にいないんだ、アイツは」
「一昨日の鍋に呼ばなかったのを恨んで、とかじゃね?」
図星なのかどうなのか、流れナイフが飛んでくる。避けたので事無きを得るが、被害は確実に周囲を巻き込んでいく。慣れ親しんだ光景だが頭痛がした。
「そういや進級した日にアイツ等を止めたの、お前等だったよな?」
「いや、アレは帝人が――――」
「僕がどうかした?」
「恐ろしい策略の末にヤツ等を止めた」
言ってからふと気づき、振り返る。
 それが当然のように、帝人が立っていた。
「久し振り。ああでも、正臣とは3日前にチャットで話したっけ」
「な、んで!? お前、何とか諸島にいるんじゃなかったのか!?」
「昨日帰国したんだよ」
「言えよ!!」
「ていうかさっきまで僕も露西亜寿司の中にいたんだけど」
「声かけろよ!!」
「真後ろの席にいるのに2人とも気づかないなー、って」
「気づけよ俺!!」
 ガーッ、と頭を押さえて騒いでいる正臣を放って、帝人は荷物から土産を出すと渡してきた。書かれている言葉がさっぱり分からない。正臣へと渡される土産を見れば文字すら見覚えがなかった。どこから帰国したのかすら分からない。

「委員長、帰国早々悪いんだが、アイツ等を何とかしてくれ」

なので詮索しても仕方ない土産より目の前で戦争を繰り広げる成人済みの問題児2人をどうにかすることを優先する。
「うーん、確実なのはどっちかに消えて貰うことなんだけど」
「穏便に頼む」
「僕も犯罪者にはなりたくないし」
 そう言って、しかしポケットから出てきたのは小銃だった。
「オイオイオイッ!?」
「大丈夫、空包だから」
言うや否や引金を引く。乾いた銃声が周辺に響き渡り、戦争している2人どころか周囲の視線が帝人に固定された。
「げッ!?」
「………………」
 喧嘩人形が潰れたような声を上げ、黒幕気質が苦々し気に表情を歪ませる。しかし衆目の凡そは帝人に覚えがない。
「久し振り」
そしてこの件が済めばどこにでもいそうな平凡な彼の顔は忘れられ、高校時代と同様に、噂ばかりが独り歩きを始めるのだろうと予想がつく。

「本当、相変わらずだね」

 そういう帝人こそ相変わらずなのだ。
 今度は学校だけでなく街中が荒れるな、と門田は嘆息した。
作品名:学級戦争 作家名:NiLi