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ナターリヤさんが家出してきました。

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第2話



■前回までのあらすじ■
突然やってきたナターリヤさんが本田家に住みつくことになりました。
着物の着方がわからないと言うので着付けてあげました。
・・・・・・・胃痛が止まりません。


『日本』こと本田菊の家はのどかな雰囲気と、緑に囲まれた田舎に位置していた。本田自身、田舎っぽさが気に入っていたし、都会の喧騒に巻き込まれたくなかったのもひとつの理由である。この家の、まるでタイムスリップしたような昭和っぽさを好んでいた。本田は毎日縁側で茶を飲み、桜を眺め、新緑を感じ、紅葉を楽しみ、雪をいつくしんだ。季節を愛し、穏やかな暮らしを愛した。
しかし、そんな本田家に彼の叫び声があがる。
「なんですってえぇえええええええええぇええ!?」
思わず声をあげたのは『ベラルーシ』ことナターリヤ・アルロフスカヤが彼女の最愛の兄、イヴァン・ブラギンスキのところから家出してきたと聞いたからだ。彼女を語る上で兄のイヴァンは外すことはできない、というよりイヴァンに対する行動や発言だけで彼女のひととなりをすべて説明することができるだろう。そのぐらい彼女はイヴァンを愛していた。そのことを知っていた本田には、ナターリヤがイヴァンから離れることを信じられなかったのである。そして、彼女の愛を恐ろしく感じていながらもなんだかんだ言って妹をかわいく思っているイヴァンに、今の状況が露呈してしまったときのことを考えたら背筋が凍えた。本田はイヴァンに対して少しの恐怖心を抱いていたのだ。
(・・・・あの人怒らせたら怖いんですよ・・・・!!!!!)
「騒ぐな。近所の人に迷惑だろう」
今の状況のすべての元凶であるナターリヤはあっさりとしていて冷静である。
「・・・・その・・・イヴァンさんと喧嘩でもしたのでしょうか・・・?」
「いや、この間エリザベータ・ヘーデルヴァーリに会ってな・・・。」
ナターリヤは先日起こったことを本田に説明し始めた。



「それで?イヴァンさんにどうしたら振り向いてもらえるか・・・って?」
エリザベータはほのかに香りを放つ紅茶に口をつけた。ダージリン。少し苦味の混じった紅茶がゆっくりと喉を温める。
「ああ。毎日毎日結婚を申し込みに行ってるんだが、兄さんは逃げてばかりで・・・。」
ベラルーシは紅茶に手をつけず、スプーンをくるくると回していた。
「・・・・うーん。押してばかりじゃダメってことじゃないかしら。ほら、アタックしすぎると逆にさめちゃうっていうか・・・。たまには引いてみることも必要なんじゃない?少し距離をとってみるとか・・・。」
にこ、と笑ったエリザベータに、ナターリヤはぱあと顔を輝かせる。
「距離をとるか・・・・。つまり、家出をすればいいのか!」
「え・・・?そういうことじゃないんだけど・・・まあ少し離れてみるのも手かなぁと思うわ。・・・・・たとえば・・・本田さんのところとか、どうかしら?きっと住んでいいって言ってくれると思うわよ。ごはんもおいしいし。」
エリザベータはにんまり笑った。
「本田・・・って日本か・・・兄さんが欲しがってる・・・・。」
「名付けて『押してダメなら引いてみろ作戦!』どう?」
「ああ。今すぐ家出してくる!」



「と、いうことだ。」
「エリザベータさんでしたか・・・・。」
本田ははあ、と深い溜息をつく。ナターリヤがこんなにアグレッシブに動くのはイヴァンのためだけなのだと思い知らされた。彼女の行動力に感服しつつ、エリザベータを少し恨みに思った。あとで電話しよう。
「今の流れでは貴女が何故どろだらけだったのか全くわからないのですが・・・。」
「・・・・お前の家を探して歩き回ったんだ。あと転んだ。」
「わかりました・・・。」
「そういうわけでしばらく住むことになる。よろしく頼む。」
「・・・・もう何を言っても聞かないんでしょうね・・・。どうぞ、気がすむまでいらっしゃってください。ぽちくんとも仲良くしてあげてくださいね。」
諦めて額に手を置いた本田は、ナターリヤに愛犬を紹介する。どこからかぽちくんがやってきて、ナターリヤに吠えた。
「ワン!」
「ふぉぉおおおお!お前の家は犬を飼ってるのか!!!よしポチくん!遊ぶぞ!!」
ぽちくんをみるとナターリヤはふるふると震えた。どうやら動物が好きなようだ。彼女の家では寒すぎて犬を飼うことはできないのかもしれない。
(意外と、かわいらしいところもあるんですね・・・。)
本田はくすりと微笑んで電話に向かった。エリザベータに一言言わなければ気が済まない。
ジリリリリリ
「もしもし?ハンガリーです。」
「本田です。エリザベータさん!なんてことをしてくれたんですか!!」
「なんてことって・・・?」
怒る本田とは対照的に、エリザベータは穏やかだった。
どうやら思い当たる節がないらしい。
「まったく・・・ナターリヤさんのことですよ・・・。よくも私の家をすすめてくれましたね・・・・!」
「ああ!ナタちゃん!今日そっちについたんですか?」
「ついたんですか?じゃありませんよ!イヴァンさんにばれたらどうするんですか!」
「まあ、なるようになるでしょ。それに、本田さんちょっと嬉しいんじゃないですか?」
いきなりそんなことを言われて本田は少し動揺した。嬉しいなどと・・・・。そんなこと、あるはずもない。
「ど、どうしてですか・・・・。」
「世界会議のときいっつもナタちゃんのほう見てるじゃないですか。好きなんでしょ?ナタちゃんのこと。」
「ち、ちがっ!!そんなわけ、ないじゃないですか!!!」
「だから、そうじゃないならそれでいいじゃないですか。一緒に暮らしてればそのうち自分の気持ちもわかると思いますけど?」
エリザベータの話は正論だった。なんとも思っていなければ普通に暮らせるのだから。本当になんとも思っていなければ。
「うっ・・・・・・わ、わかりました・・・。」
「イヴァンさんのほうはこっちでもいろいろフォローしておきますから。ナタちゃん、攻略のしがいあると思いますよ?じゃあ!」
「・・・・・・はぁ・・・・」
受話器を置き、再びため息をつく。
とりあえず彼女の食べられそうな夕飯を作ろうと、本田は台所に向かうのだった。