ささめゆき
生まれいづる感情
部屋に入ってきた桂は静かに障子を閉めた。
その様子を銀時は布団の上であぐらをかいた状態で眺める。
「なんだ、まだ寝てなかったのか」
銀時の視線を受けて桂は言った。
「ああ、気になったからな」
そう銀時が返事すると、桂は眼を伏せた。けれども、すぐに視線を元の高さにもどし、銀時の近くまでくると腰を降ろして正座する。
「で、どんな話だったんだ?」
銀時は桂にたずねた。
銀時と桂は数ある攘夷軍のうちの一つに所属している。
そして、先程、桂は軍の大将に呼ばれてその部屋に行ってきたのだった。
桂はこの軍の軍師だ。
大将が夜ひそかに軍師を呼び出してする話とはなんなのか、銀時には気になっていた。
一瞬の沈黙のあと、桂は話し始めた。
銀時たちが潜伏しているこの地からそう遠くない場所にある天人軍の砦に、最近、天人や武器が集められているという情報を得た。それはすなわち、近々、攘夷軍を襲撃するつもりであることを意味する。標的がこの軍であるとは限らないが、なんの対策も講じないわけにはいかない。
「それで、どーすんだ?」
「共同戦線を張ろうかと思っている」
桂はこの近くで駐屯している別の攘夷軍の大将の名を挙げた。
「……それさァ、難しくねーか。頭堅くて有名なヤツだろ」
「まあな」