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みかど☆ぱらだいす@11/27UP

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嬉し恥ずかし初デート!




空はあいにくの曇り空。
梅雨入りしたばかりだから雨が降っていないだけましなのかもしれない。
念の為と、片割れが折り畳み傘は持たしてくれた。
でも、「楽 しんできてね」と玄関で見送ったその顔が若干引きつっていたのが少し気になるところだ。
ぼんやり考えながら歩いていると、待ちあわせの時間が迫っていたのに気付き慌てて、駆け足で指定された場所へと向かう。
(もう少し、―――居た!)
人込みの中、ひょっこりと飛び出た金色の頭。
後頭部だが間違いなく帝人の待ちあわせの相手だろう。
足を止め、深呼吸をする。
浮き出た汗をハンカチで拭い、 ささっと衣服を整えてから帝人は意を決したように、声を掛けた。
「っ静雄、さん」
ちょっと震えてしまった声に、思わず顔を赤らめたのと同時に、金色の頭が振り返った。
トレードマークのサングラスが無い眸が僅かに瞠られ、そして柔らかく細まった。
「もしかして、待たせちゃいましたか?」
「いや、俺が早めに付いただけだ」
定番の会話をする二人は、先日晴れて恋人同士になったばかりである。
今日はその恋人になって初めてのおでかけ。
つまり、デートなのだ。
思いを自覚する前も後も、たまに二人で出掛けることはあったが、想いが通じ合ってからは初めてなので、帝人は激しく緊張していた。
静雄は言わずもながである。
「あー・・、帝人」
「は、はいっ」
口に銜えていた煙草を手に取り、少女を見下ろす。
見慣れた母校の制服ではなく、白いふんわりとした形のノースリーブのワンピースを着ている彼女は文句なし に可愛かった。
静雄は一度咳払いをしてから、少女に言った。
「その服、似合ってる」
「!~~~っあ、ありがとう、ございます」
朴念仁の静雄にしてはナイスな言葉である。
帝人は盛大に紅くなった顔を俯くことで逸らしたが、露になった耳や項までは隠せてはいない。
それを直視してしまった静雄は、うずっと動く右手を逆の手でがしっと抑えた。
今ここで手を出したら、ただでさえ見た目で充分犯罪の域にあるというのに、現行犯で静雄は検挙されること間違いないだろう。
そうしたら彼女に会えなくなる。
それだけは何が何でも避けたい。
「静雄さん?」
「・・・や、何でもねぇ」
(落ちつけ俺!今日はまだ始まったばかりだっての)
大人で男の自分が先走ってどうする!と静雄はなけなしの理性をかき集めて、何とか面目を保つ。(もしこの場に帝人の片割れが居たら「下校時間に観衆の前で 帝人を掻っ攫った犯罪者が何を言う」と鼻で笑われていただろう)
不思議そうに見上げてくる少女の頭を撫ぜれば、紅い頬そのままで帝人は嬉しそうに笑った。
「静雄さんの私服、初めて見ました」
「ん?・・・ああ、そうだな。俺も久しぶりに着た」
静雄も何時ものバーテン服ではなく、そこらへんの男子が着るような服だ。
しかもセンスがいい。
かっこいい人って何着てもかっこいいんだなぁと帝人は妙なことで感動する。
「すごく似合ってますよ」
「お、おお、・・・・サンキュ」
帝人の素直な賛辞に、紅くなりながらも、静雄は笑った。
お互い顔を紅くしながら褒め合うとは、初々しいというべきか馬鹿っぷるというべきか迷うところである。
しかし喧嘩人形が恐い池袋の住民は、この取り合わせに興味を引かれつつも、我が身可愛さに足早に通り過ぎる。
それこそが池袋で生きていく為の処世術 だ。
「と、ここで立ち話してんのも何だから、そろそろ行くか」
「はいっ」
今日のデート先は定番といえば定番の水族館。
帝人の片割れがバイト先で貰ったという水族館のチケットを譲ってくれたのだ。
片割れ曰く、「嫌だけどほんとうはものすっごく嫌なんだけど、でもあの朴念仁が帝人の為のデートプランを考えられるわけが無いし、帝人は帝人で優しいからデートとか忙しそうだからって誘 うの遠慮してるし、僕がきっかけ作りしなきゃまじ進まないというか、ああでも言っとくけど僕はあくまで帝人に楽しんでもらう為にこのチケットあげるんだからね。そこんとこきちんとわかってよ」とのこと。
何とも帝人至上な片割れらしい言い分だ。
さりげに朴念仁のレッテルを貼られた静雄は怒った方がいいのか感謝した方がいいのか複雑な気持ちだったが、「水族館、大好きなんです」と嬉しそうに笑った帝人が見れたので、静雄は良しとすることにした。
「帝人」
「はい?」
左手を出すと帝人はぱちりと瞬きをする。
どうやらうまく伝わってないらしい。
しかしここでひっこめたら男がすたると言うもので。
「手。・・・・はぐれたら困るからな」
そこで静雄の意図にようやく気付いた帝人の頬がまた紅くなる。
実は担がれたり抱き締められたことはあるが、手を繋いだことはまだ無かったのだ。
熟れた林檎 のような頬に(噛みつきてぇ)と帝人が聞いたら全速力で逃げだしそうなことを思いながら、静雄は帝人の行動を待つ。
やがて、白い小さな手が差し出した手に触れる。
一度だけきゅっと握って、静雄はごく自然に指と指を絡ませた。
俗に言う恋人繋ぎだ。
そう理解した途端、頭の中が沸騰するかと帝人は思った。
どうしよう、こんな真っ赤な顔だと変な目で見られる。
帝人は繋いだ手とは逆の手で火照る頬を必死に扇ぐ。
いっぱいいっぱいだった帝人は気付いていなかったが、頭一つ分上で静雄の顔も同じ色で染まっていた。
見てるだけで痒くなる二人である。
「えっと、静雄さん」
「お、おう」
照れ臭くて恥かしくて凄く緊張しているけれど、それ以上に嬉しくて、帝人は鮮やかに微笑んだ。
「今日一日、一緒に楽しみましょうね」
その笑顔に、池袋最強の喧嘩人形が撃沈したのはいうまでもない。








(そうだ。ミカドが静雄さんにって(折り畳んだメモを差し出し))
((嫌な予感しつつも受け取る)・・・?)
【門限は19時。それ以上遅れたら―――呪います】
(・・・・・・・・・・・(汗))
(静雄さん?)
(い、いや何でもねぇ・・)
作品名:みかど☆ぱらだいす@11/27UP 作家名:いの