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みかど☆ぱらだいす@11/27UP

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これが恋だなんて詐欺だ




良く言えば趣のある、悪く言えばボロいアパートの一室で、竜ヶ峰ミカドは携帯片手に唸っていた。それはもう鬼気迫る顔で。
ミカドを背中に凭らせて愛用のパソコンをいじっていた帝人は、そんな片割れの様子にため息を吐いた。
「気になるなら、メールすればいいのに」
ぼそりと言えば、背中越しに片割れの身体が震えたのを感じた。じわりじわりと伝わってくる感情は怒り迷い焦り、そして戸惑いだ。多分ミカドもそうすべきだと理解はしているのだろう。
しかしできない。その理由は、
「こっちからメールしたら負けのような気がする・・・」
らしい。
「負けって、ミカドは恋愛を勝負事と履き違えてない?」
「れんあっ・・・・・そんなんじゃない」
そんなんじゃないよ。
そう言って、ミカドは手に持っていた携帯を畳みの上に落とした。メール画面になったままの携帯。宛先は、―――折原臨也。
酔狂にも、 ミカドを好きだと言ってくる、自称素敵で無敵な情報屋だ。それだけでも胡散臭いのに、実態もやはり胡散臭い。幼馴染で親友である正臣はミカド達が池袋に来 た当初から、近づくなよと警告をしたほどだ。しかし、今では危険な奴と教わった一人である平和島静雄と帝人は交際しており、一番危険人物と言われた折原臨也は、会うたび会うたび、ミカドに愛を吐くのだ。人が好きだと豪語する同じ音で。酷薄な笑みを敷いた唇で。それを信じるほど、ミカドは臨也を信用していない。人でなしだとは知っている。だからこそミカドは彼の一言一言に揺れ動く自分が嫌いなのだ。
そうだ。これは恋愛なんて甘ったるいものじゃあない。
どちらが先に堕ちるか。人の心を試す、あの男が仕掛けた碌でもないゲームなのだ。
どんなに冷めてたって、ミカドは年頃の娘だ。恋というものに、憧れるし、幻想だって抱く。恋はきっと、帝人と平和島静雄がするような、綺麗で甘やかなものなのだと、ミカドは想っている。だからこれは恋愛なんかじゃない。
「・・・帝人」
「ん?」
「休みなのに、平和島さんと会わないの?」
「ああ、静雄さん今日は休日出勤なんだって。急に入った仕事らしくって、部屋の壁べこべこにして怒ってた」
その時のことを思い出したのか苦笑する片割れの背中にミカドは体重を掛ける。「重い重い」と前のめりになる帝人に、「仲が宜しいことで」とミカドは唇を尖らせた。恋として憧れの二人ではあるが、やはり平和島は大好きな片割れを奪っていった憎い奴であることに変わりは無い。心の中で(ざまあみろ)と金パツバーテン服に呪詛を吐くと、帝人に「こら」と窘められた。どうやら伝わってしまったらしい。
ふざけたように片腕を上げる帝人に笑いながら謝って、そのまま横に倒れる。古い畳の匂いが鼻を擽った。
(年頃の女の子が住むところじゃないよね)
そう言ったのは、件の情報屋だ。そういえば、平和島静雄も帝人を送ってきた時には渋い顔をしていた。セキュリティが云々とか言っていたような気がするが、 家賃が安く、高校も通える範囲の物件はここしかなかったのだからしょうがない。まあ、ある程度ネット関係のバイト等で貯金も増えたが、引っ越しをする予定はいまのところ無い。住めば都だ。そう思っていること自体、信じられないと高級マンションに事務所兼自宅を持つ情報屋は言っていたが、どうでもいいことだ。
横になっていると眠気が襲ってきた。その気配に気付いたのか、帝人がパソコンから目を離し、「眠いの?」と声を掛けた。それに生返事をした時、ピン ポーンと呼び鈴が鳴る。何事かと思わず上半身を上げたミカドは同じように扉を向いた片割れと目を合わした。するともう一度鳴り、慌ててドアへと向かおうと すると、ミカドの携帯が着信を知らせた。
「わ、わ、」
「ミカドは携帯出て。僕があっち出るから」
「うん、よろしく」
焦ってしまっていたのか、誰からか確認せず、ミカドは通話ボタンを押した。
そのことを後悔したのは、機械越しに届いた声を聞いてからだ。
「はい、竜ヶ峰で」
《やあ、ミカドくん》

「「え!?」」

声が重なる。
ミカドが思わず玄関を見ると、片割れが扉を開いた先に佇んでいた人物を見て驚いていた。
「静雄さんっ?」
「しず、おさん?」
《ああ、静ちゃん来たんだねぇ》
何と云うタイミングだ。ここで折原臨也の名を出すと、平和島静雄がどうなるかわからない。帝人が居るから大丈夫かもしれないけれど、念の為ミカドは携帯片手に隣の部屋へと移動した。
部屋の仕切りである襖を閉めた途端、押し当てた携帯から笑い声が聞こえた。
《気持ち悪いタイミングの良さだ。いっとくけど、図ったわけじゃないよ》
「そんなの聞いてません。――――何か用ですか」
自然低くなる声に、相手は気にしたふうもなく、《だってミカちゃんから連絡こないから》と言った。
「ミカちゃんは止めてください。それに僕が貴方に連絡する意味がわかりません」
つい先までメールするか否か悩んでいた癖に、こんなふうに返してしまうのはもうミカドの性格でしかない。余裕ある振りして、すげなくする。これじゃまるで構って欲しいと想ってるも同然じゃないかとミカドは唇を噛んだ。
《ねえ、ミカドくん》
「・・・何ですか」
《今日何回メール画面開いた?》
「っ!」
《アドレス帳から俺の名前を、何回捜したかな》
笑みの混じった声。
全てお見通しだと。お前の浅はかな想いなど、全て知っているのだと。
そう告げてくる音。
《何時間、携帯と睨めっこしてた?》
腹の底がかっと熱くなる。本当に、この人は、最悪だ。
「用が無いなら、切ります」
《ははっ、用があるから電話してるんじゃないか。―――ほら、耳を澄ませてごらんよ》
反射的にミカドは意識を外へと向ける。
すると襖越しに、片割れと平和島静雄の会話が聞こえてきた。
(仕事が終わって、)
(連絡をしてくれても、)
(直接来たほうが早ぇし)
どうやら仕事が早く終わり、直接アパートに来たらしい。多分本当は今日会う約束でもしてたんだろう。ミカドはため息を吐く。このままでは自分がお邪魔虫だ。そう思った時、ミカドは臨也の思惑に気が付いた。
「折原さん」
《なーに?》
「貴方、平和島さんがこっち来ること知ってましたね?」
《別に。俺は今日の静ちゃんが鬼のように仕事を終わらせたっていうのを小耳に挟んだだけだよ》
折原臨也と言う人間は、無駄に頭が切れる。1を知れば10以上のことがわかる男だ。きっとそれだけで、平和島静雄が帝人と約束をしていて、仕事に潰されて、躍起になって早く終わらせて、そして帝人の元へと行くということまでわかったのだろう。そして、ミカドがそのせいでお邪魔虫になることも。
《さてさて、ミカドくん。俺の用件わかってくれたかな?》
「・・・ほんっと性格悪いですよね、貴方ってひとは」
今度は遠慮なく、電話を切った。
(むかつくむかつくむかつく)心の中で呪詛を吐きながら、ミカドは部屋着を着替え、肩掛けの鞄に財布と携帯を突っ込む。そして勢い良く襖を開けた。
「わっ・・・・ミカド、どうしたの?」
「ちょっと用事できたから出掛けるね。あとついでに、こんにちは、平和島さん」
「・・・・おう」
「用事って、携帯の相手?」
さすが片割れ。鋭いなぁと思って、頷いた。
作品名:みかど☆ぱらだいす@11/27UP 作家名:いの