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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記11

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「ちょっと待ってください!まさか、椛を地底に行かせるおつもりですか!?」
「何か問題でもあるかい?」
「大ありです!!椛を地底に行かせるなんて・・・危険すぎます!!」
普段から、今みたいにもっと感情を表に出せばいいと思うんだけどねぇ。
「あらぁ~?にとりには地底と御山の友好の懸け橋になるよう勧めておいて、椛は地底に行かせないだなんて、どんな差別かしら~?」
御影はこういう展開になることを容易に予想していながら、完全に状況を楽しんでいる。「そっそれはっ・・・しかし、椛は空を飛ぶことができません。おまけに狗現化(ぐげんか)もできない。鬼が住んでいるようなところで、もし何かあっても、あの娘じゃ対応しきれないかもしれない!!」
狗現化というのは、天狗一族が等しく持つ固有能力のことで、普段は人間に酷似した姿を取っている天狗が、本来の姿、詳しく説明すると、大天狗はあの有名な、燃えるような赤い形相に見事な長い鼻を蓄えた姿、白狼天狗の場合は通常よりも一回りも二回りも大きな白い狼の姿になることで、自身が持つ能力の限界を超えた力を使うことができるというものである。言ってみれば天狗特有の覚醒みたいなものだ。
椛が狗現化できず、空も飛べないのにはちゃんと理由、それもかなり複雑なものがあるのだが・・・まぁそれはしばらく置いておく。
「おいおい・・・あんたたち、あの娘にそんなことを命じたのかい?随分とまた酷なことをするねぇ。いや・・・それだけ期待しているということかな?」
「えぇ。にとりはこの先数百年、この御山にとってとても重要な人材と成り得る素質があります。それと、誤解のないよう断っておきますが、私はにとりに命令はしていません。あくまで課題として提案しただけです。・・・ちょっと卑怯かな?とは思いましたけど。最終的にはにとりもかなりやる気になっていましたよ」
実際は卑怯とも思っていない。神奈子に話す手前の体裁である。しかし今の美理にはこの御影に対してツッコミをいれる余裕もない。
「話を逸らさないでください!!神奈子様、どうか御再考を!!何ならこの私が責任を持ってその任にあたらせていただきます!!これ以上椛にきつい思いをさせるのは!」
必死だ。なぜ美理はこんなにも椛に執着しているのか?その理由もかなり複雑なものがあるのだが・・・これも今は置いておく。
「美理・・・少し落ち着きなさい。そんなに声を荒げると、諏訪子様たちが起きてしまうわ。それに、本人のいないところで椛の個人的なことをペラペラと喋るのはどうかと思うけど」
能ある鷹は爪を隠すというが、真の実力者というものは、普段はおちゃらけていたり、ちょっと不真面目だったりする。つまり、爪を隠した状態のことだが、ここぞという時はいつも冷静なものである。実際美理は万能で、非の打ちどころがない人物であるが、御影は更にその一枚も二枚も上手なのである。
「っ!!」
「・・・御影がにとりや椛に期待しているように、あたしもあの二人には期待しているんだよ。じゃなかったら、河童の産業革命なんて、大きな計画を彼女に持ちかけたりなんかしないさ。それに、地上の存在なら誰もが未知の恐怖に怯える地底だからこそ、武術にも長け、礼儀正しいしっかり者の椛に頼みたいんだ。お前がどう言おうと、今回は椛に行ってもらう」
「くっ!!」
美理は今にも神奈子に飛び掛かろうかという雰囲気である。
(神奈子様もよくやるなぁ。まぁ、美理様の気持ちもわからなくはないけど・・・)
文は期日の話をしてからずっと蚊帳の外状態である。傍観している。
「・・・そんな怖い顔をしちゃ、折角の綺麗な顔が台無しだよ。さて、結局結構長居してしまったね。手紙のこと、宜しく頼んだよ。そろそろあたしらは帰るとするよ。ほらっ、青、諏訪子、いつまでも寝てないで起きな」
「う~ん、ムニャムニャ・・・やっぱり、下ろし醤油が一番合うね~・・・」
「むぅ~・・・諏訪子殿、それは私の秋刀魚ですぞ~・・・」
夢が同調している(笑)。
「・・・あんたら、実は起きてるだろ?まさか・・・天然!?って、そんなことはどうでもいいのよ、ほらっ、起きた起きた!!」
「う?う~ん・・・話は全部終わったの?」
「むぅ・・・申し訳ない、少々眠ってしまったようじゃ」
起きた二人を連れて、文を含んだ全員にもう一度軽く挨拶をして謁見の広間を出ようとした神奈子の背中に、突然少し強い口調で御影が声をかけた。
「神奈子様」
「うん?なんだい?」
呼び止められ、振り返った神奈子の目に、真剣な面持ちの御影が映る。
「青蛙神殿のお話を聞いた今でも、核融合の力はこの御山に必要だと思いますか?」