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輪廻の果て

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八話





帝人はとても居心地の悪い思いをしていた。
ちらりと、視線を前に持って行けば先ほどから瞬きもせずにこちらを見つめてくる少女達と視線が合う。
じーっと見られていることに慣れていない帝人はすぐにいたたまれなくなり、また俯いてしまう。

(臨也さん・・・早く帰ってきて)

膝の上で作った拳を強く握り、今はここにいない漆黒の妖怪を思った。
半刻前、臨也に浚われ連れてこられた場所は崖にへばり付くようにして建っていた屋敷だった。

(すごい・・・)

それが帝人の第一印象。自分が住んでいた神社も大きく威厳があった物だったが、こことは何かが違う。
作りもどこか唐物めいていて、帝人は感嘆の息もらしながら臨也に手を引かれるまま屋敷を歩いて行った。

「ちょっとここで待っててもらえるかな?帝人くん」

臨也に通されたのは整頓された個室だった。花菖蒲の生け花の香りが鼻孔をくすぐる。
必需品しかない部屋はどこか殺風景に感じると思った反面、完成された部屋だとも思った。
臨也を見上げると、彼はにっこりと笑ってここ、俺の部屋なんだと照れ臭そうに笑った。
もう一度部屋を見渡すと、なるほどと思う。部屋に一歩踏み入ればよりいっそう感じた。
使われている木材からはじまり、畳や文机、生けられている花やその花瓶でさえもどれも一級品。
帝人が上役の部屋でしか見たことがない物ばかりだった。

(・・・臨也さんって)

後ろを振り返り、にこにこと笑っている臨也を見つめる。改めて己が付いてきた存在を知った気分だ。
帝人は急に自分の存在が恥ずかしくなった。自分は今や何一つ持っていないただの小娘。
そんな女にさえ成りきれていない自分がこの大妖怪の傍にいても良いのだろうか。

(臨也さんは優しいから、僕がすがったりしてきっと良心で助けてくれたんだ・・・。
 そうじゃなかったらこんな胸もないような小娘を浚うとかあるはずない)

たとえ臨也が良心で浚って傍に置いてくれたとしても、他の妖怪はきっと赦さないだろう。なにせ自分は妖怪を滅してきた存在なのだから。
暗い思考に支配され、顔を段々と俯かせていく。

「帝人くん」

そんな悪い思考を巡らせていた帝人をすくい上げたのは臨也の声だった。
臨也の手が、指が震えながら帝人の頬に添えられ、顔を持ち上げさせる。

「臨也さん・・・」

帝人は目を見開いた。あの豪語不遜、唯我独尊、厚顔無恥の臨也が頬を染め何かに耐えるように帝人を見つめていたから。
もう一度、帝人は臨也の名前を呼ぶ。

「臨也さん・・・?」

「帝人くん、俺は君をもう手放さない。手放せない」

「え」

「君の自由を、人の世界を奪った俺だけど・・・君から望んで傍にいてほしいんだ・・・。
 たとえ君が嫌がろうと、ここから逃げだそうとしてもきっと俺は君を捕まえる。どんなことをしても俺の傍にいさせようとする。
 ふふ、俺って最低でしょ?」

自嘲気味に笑う臨也に帝人の心臓は鷲掴みにされたかのような痛みが走る。帝人は自ら腕を伸ばし、臨也の首に回した。
臨也の体が硬直したのが帝人に伝わる。

「っ・・・、僕もっ、僕だって傍にいたいっ・・・!貴方のっそばにっいさせっ」

帝人は最後まで言葉が言えなかった。何故なら臨也がその口で帝人の口を塞いだから。
蒼玉の瞳から雫がこぼれ落ちる。

「いざやさ・・・」

「ありがとう帝人くん」

臨也は今にも泣き出しそうな顔で笑うと、帝人の華奢な体を愛おしそうに抱きしめた。
帝人も臨也に縋るように抱きつく。こんなにも心臓が痛くて苦しくて、けれど溢れんばかりの歓喜の気持ちを帝人は今まで知らなかった。

ひとしきり抱き合った後、臨也は名残惜しそうに帝人の頬に何度も唇を落としながら、ごめんね、と呟いた。
帝人はくすぐったさと恥ずかしさに身をよじっていたが、臨也の謝罪に眉をひそめる。

「何で謝るです?」

「ちょっと、君をここの屋敷に迎える準備をしてきたいんだ。だからほんのちょっとの間だけ、ここで待っててくれる?」

さきほどの謝罪は帝人をこの部屋に一人残すことに対しての謝罪だと帝人は察した。
そんなことに頭を下げるぬらりひょんなど誰が想像できようか。帝人は苦笑を漏らすと臨也の髪を梳くように撫でる。

「僕なら大丈夫です。だから臨也さんは行って下さい」

「ん、すぐ戻るから」

臨也は帝人を抱きしめると、そっとその身を翻し物音一つたてず部屋から出て行った。
臨也を見送り、部屋においてあった座布団の上に腰掛け、中をぐるりと見渡しているとばたばたと誰かが駆けてくる音が響く。

「え?」

「いっざにー!おかえりー!!」

帝人が不思議がったその瞬間、勢いよく襖が開かれ現れたのは可愛らしい二人の少女。
三者三葉、驚きの顔でお互いを見る。いち早く動き出したのは三つ編みの少女だった。

「わぁお!何々イザ兄!?とうとうやったの!?もう意気地なしとか思ってたけどやるときはやるんだねクル姉!」

「良」

「え!?え!?」

帝人の目の前に勢いよく少女達は座ると三つ編みの子は帝人の両手をつかむとぶんぶん降り、もう一人の少女はきらきらと歓喜の瞳を向けてくる。
そんな二人の少女に帝人はたじたじだ。

「で!で!どこまでいったの!?もしかしてもしかしてイザ兄の子供とかもう出来てちゃってたり!?」

「答」

「ふぇ!?こ、こども!?」

「あ、その顔だとまだかー!もうイザ兄ったら押しが弱いねっ」

「同」

「あ!だったら口づけは!?それくらいならしたんじゃない!?」

三つ編みの子の言葉で先ほどの光景が帝人の目の前を駆け巡る。ぼんっという音と共に帝人の顔は真っ赤に染め上がった。

「きゃー!かわいい!かわいいよお!」

「愛」

三つ編みの子に抱きつかれ、先ほどから片言の子にはキラキラと見つめられ帝人はいたたまれない。

(い、臨也さーん!た、助けてっ)

帝人は心の中で悲鳴を上げながら臨也に助けを求め、それがかなったのは二人のテンションにへとへとになってしばらく経ってからのことだった。



作品名:輪廻の果て 作家名:霜月(しー)