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けんか【アニカビ第2期署名支援】

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 ここはプププランド。ナイトメアも倒され、平穏(へいおん)な日々が続いていたのだが……。

「カービィのばかやろう!」
 ブンが大声を張り上げ、手を振りかざした。が一歩身を引くことでカービィはそれをかわした。
「なにするんだよ」
 ぷくうっと頬(ほほ)を膨(ふく)らませた。
「一体何の騒(さわ)ぎ?」
 隣(となり)の部屋で読書をしていたフームがドアを開けた。
「フーム!」
「ねぇちゃん!」
 同時に呼びかけをしたため声が重なる。お互いバチバチと火花を視線で散らした後、ふん、とそっぽを向いた。
 その様子にフームはあきれたようにため息をついた。
「カービィが悪いんだ。俺のお菓子食べちまったんだからよ」
「だって ブンが たべていいよ っていったからさ」
「だからって全部食(く)うこったないだろう!」
 フームはお互いの言い分を聞いて、また空(から)のお菓子の袋を見て何があったのか大体把握(はあく)した。大(たい)したことのない子どものけんかである。
 遊びに来たカービィに少しのつもりでお菓子を勧(すす)めたら、食いしん坊のカービィの口の中に吸い込まれてしまったらしい。
「全く、そんなくだらないことで大騒ぎして」
 どっちもごめんなさいって言えばいいんじゃないの、とフームはふたりをたしなめたが、お互い謝(あやま)る気はないらしく、体はそむけたまま、目と目でそっちが先に謝れと睨(にら)みあっている。
 しばらくその緊迫した空気を壊(こわ)したのはブンだった。ただし悪いほうに。
「いたっ!」
 どんとカービィを突き飛ばしブンは部屋を出て行った。
「こらブン!」
 唐突(とうとつ)な行動にフームがあとを追いかけようと廊下を見るが、すでに彼の姿はなかった。
「大丈夫、カービィ?」
 フームが後ろを振り返ったときにはカービィの姿はなく、代わりに窓のカーテンがひらひらと風に揺(ゆ)れていた。
「なんなのよ、ふたりとも」
 フームはひとりっきりの部屋で小さく疑問の声をあげた。


「それではカブー」
「ああ、メタナイト」
 ふたつの声が会話をする。ここはカブーの谷。星の戦士団のシェルターのカブーと引退(いんたい)したとはいえ星の戦士であったメタナイト卿(きょう)は時折(ときおり)情報を交換(こうかん)していた。
 外へ出ようとするとピンクのまん丸とはち合わせた。
「カービィ」
「きょー…」
 いつもの明るい表情とは打って変わって物憂(ものう)げな顔に、メタナイト卿は仮面の下で訝(いぶか)しげに思うが、おいで、とワープスターの置かれているカブーの中に手招(てまね)きをした。
「どうしたんだ、そんな顔をして」
 中へとはいってきたカービィに問いかける。
「あのね……」
 まだたどたどしいカービィの言葉をゆっくりと聞きながらメタナイト卿は相槌(あいづち)を打つ。
「そうか、ブンとけんかしたのか」
「うん……おこらないの?」
「なぜ怒る必要がある? ふたりの間の事に私は口をだすつもりはない」
 聞き様によってはそっけない物言(ものい)いだがだが声の調子はあくまでも優しげだった。
「けんかしてどんな気分になった?」
「やなきぶん」
 ぽつりと答えた。怒鳴(どな)られたときはむかーとしたし、今こうしているととてもしくしくと胸が痛むのだ。
「けんかが悪いわけじゃない。自分の思いが曲げられないことなんかいくらでもある。そのときは思いっきりぶつかればいい。だが今日のけんかは割にあったか?」
 割になんか合わない。我(が)を押すようなことじゃなかった。ただいやな気持ちになっただけでなんにも残らない。
 それに先に悪いことをしたのはカービィだ。悪気(わるぎ)はなかったけれどブンは怒って当然だ。
「ボク、ブンに あやまる」
 その答えにメタナイト卿はいいとも悪いとも答えず、そうか、と受け止めた。
 自分で決めた結論なのだからそれに口を出したりはしない。自分で考え、自分で責任をとる。メタナイト卿はそういう哲学(てつがく)を持っている。
「けど、お前は立派だ。攻撃されてもやりかえしたりはしなかったんだから」
 そのことにカービィははっと気がついた。
「お前は確かにまだ子どもだ。だがその前に星の戦士だ。星の戦士としてどうあるべきかお前はきちんと分かっている、そうだろ?」
 メタナイト卿の問いかけに頷(うなず)いて、カービィは最初とはまるで違う明るい表情で外へと飛び出した。
「カービィはずいぶんと立派になったな」
カブーがメタナイトに声をかける。
「ああ、なんといってもこの私が見守っているのだからな」
 誇(ほこ)らしげなのは、自分は激しい戦いを常に生き延(の)びてきた、その自信に基(もと)づく発言であるからだろう。
「だが彼が成長したということは、お前たちの旅立ちのときが近いということでもあるだろう」
「……そうだな」
 カブーの指摘に同意する。ナイトメアを倒したカービィの戦闘能力(せんとうのうりょく)はともかく、まだ言葉が未発達(みはったつ)で、これからの始まる戦士団という集団での戦いにうまく加われるか疑問視(ぎもんし)され、その学力や心の育成のため猶予期間(ゆうよきかん)が持(も)たれたにすぎない。
「このあたりは平和でも宇宙のどこかにはまだ苦しんでいるものも多い。私たちだけ安穏(あんのん)としているわけにはいくまい」
 そう告げると、メタナイトも外へ出ようとした。
「守るべきものを守り、倒すべきものを倒す。ゆっくりだがしっかりと彼には大きくなってほしいものだな」
 いろんな感情の入り乱(みだ)れた本心をぽつりとメタナイト卿は洩(も)らした。


 一方ブンである。彼はいらいらしながら廊下(ろうか)をずんずんと歩いている。殴(なぐ)りかかったり、突き飛ばしたりしかけたのはやりすぎたかな、とちらりと思う。
「でも、悪いのはカービィだ」
 自分を正当化させるようにつぶやいた。先にカービィがお菓子をひとり占めしてしまったのがいけないのだ、そう言い聞かせるように。
「やーブン、一体どうしたんでゲスかな?」
 エスカルゴンが白々(しらじら)しく声をかける。別に、とそっけなく返事する。
「カービィとけんかでもしたんでゲスか?」
「だったらなんだって言うんだよ」
 食いついた、とエスカルゴンは内心ほくそ笑みながら、
「カービィに仕返しをしたくないでゲスか?」
 と囁(ささや)く。
「仕返し?」
「実はカービィをぎゃふんと言わせるいい作戦があるんでゲス。」
 そしてごにょごにょと耳打ちをふたりはし始めた。


 城に戻ってきたカービィはブンを探した。
「カービィ」
「フーム!」
 息を荒(あ)げて駆(か)けてきた。
「ブンみなかった?」
 同時に同じ言葉が出た。
 カービィも知らないの、と落胆(らくたん)の声をフームはあげた。
「なんだか胸騒(むなさわ)ぎがするの」
 むなさわぎ? カービィが首を傾(かし)げたとき、どおんっと大きな音が響(ひび)いた。
「何かあったのかしら? とりあえずワープスターを呼ぶわ!」
 ふたりは顔を見合わせると飛んできたワープスターに乗り込み、音のするほうへと駆けて行った。