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みっふー♪
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かぐたんのゲテモノ日記

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×月×日(9)



ハラが減ってはバトルはできぬ、山中に迷い込んで以来、食うや食わずのコーチのために私はとっておきの漁法をひろうした。
――ハァァァァァ……!!!!
川の流れの最中に立ち、拳を構えて精神を統一する。目を閉じ、耳を澄ませてえぐるべき一点を心眼に感じ取るのだ。……見えたッ! そこだァッ!! さくれつゥ! 水・辰・尖ッ!! ドワシャァァァァ!!!!! 湧き上がった巨大な水柱が崩れ、川辺をびしゃびしゃに浸して飛沫が舞った。……要は川の水面に正拳突きをカマすのである。あとは衝撃波食らってプカプカ浮いてきたおサカナさんたちをらくらくゲット~♪ なお、地域によっては禁止されている漁法であるおそれがありますので詳しくは各水産資源管理事務局に直接お問い合わせ下さい。
……閑話休題、火を起こして焼き魚をはふはふしながら私はコーチに訊ねてみた。――ねぇねぇコーチは何教えてる人? 趣味の少年やきう? サッカー? ミントン? あっ、テヌス! テヌスがいいな私!! コーチといったらテヌス、テヌスといったら熱血コーチである。両者は分ち難く結びついている。その上私はコーチに”お嬢”と呼ばれているのである。まるであらかじめしつらえられたかのごとくすべてがおあつらえむきであった。(舌噛んだ)
――おじょうちゃん、そりゃ”お虫葉”じゃないかい、おじちゃんが苦笑いでたしなめた。
――やめてよ! 私はおじちゃ……コーチの腹に正拳突きをカマした。――くはッ、腹を抱えてコーチが地面にくずおれた。串に残ったおサカナを一息に剥ぎ取ると、骨までバリバリ噛み砕き、ゴックン、飲み下して私は言った。
――おじょうちゃん、だなんて私もう子供じゃないの! 呼んでよ、私のことを”お嬢”って、……相手はかつて大都会の片隅で野良犬のような暮らしをしていた自分を拾って生かしてくれた恩義アル親分さんのひとり娘、目の中に入れても痛くない、愛されてすくすく育ったわりに「こんなおやつが食えっかいっ!」大したワガママも言わず聞き分けもよく、何よりちょー激マブ★の美人さんでスタイルグンバツで使える特技持ちで街角美少女☆スナップとかにもちょいちょい載っちゃうカンジの学校じゃ生徒会長まで務めているのに学園のはっちゃけたイケてる女子グループからも一目置かれ、……とにかくそんな非の打ち所のないよくできた娘のボディガードとして陰になり日向になり、もう一人の父親のような気持ちで見守ってきたはずの彼女に自分が抱いている正直な感情を、ある日男は自覚してしまうの。だってしょうがないじゃない、今は亡き娘の母親は遠い昔に男が愛した女、日に日に彼女に重なる面影、彼女もとっくに気付いていたのよ、男が自分を見つめる重奏曲のまなざしに、……ああ、だけど運命は残酷だった、叶わぬ恋は道ならぬ恋でもあった、なぜなら娘の本当の父親は男自身であったから、そう、二人は実の親子だったの!(♪ジャカジャーン←効果音。) 男は絶望するわ、己が抱いた我が娘への不埒な感情に、そしてたまたま引っ掛かったけんこうしんだんで知ることになるの、我が身に忍び寄る病魔を、自分のいのちがはかないことを。――どうせ散らせる命なら、男は長差し懐に単身敵襲をかけるわ。長年の抗争で組織は追い込まれつつあった、……忠誠心? ううん、何もかも自分が愛した女とその娘を守るためよ、最後に男は自問する、己が本気で愛したのは、果たして母親だったかその娘か、そして降る銃弾の雨、長差しかざしてトッ込みながら男は叫ぶの、「お嬢ーーーーーッッッ!!!!」


――ねぇねぇおじちゃん、聞いて、私口笛うまくなったでしょう? ♪♪♪♪♪……
――ああ、そうですねお嬢。こんど一緒に、二重奏でもやりましょう……

【~耳に残るは音程の外れた君の口笛~劇終】


……てなカンジに情感込めて呼んでよ! 私のことを”お嬢”って! 私はコーチに長々と熱弁を振るった。
――よくわからないよ、おじょうちゃん、
よろよろとコーチが起き上がった。地面に四肢を着いたまま、生まれたての小鹿のポーズでコーチは自嘲気味に肩を揺らした。
――だけどひとつ思い出したことがある、……ずうっと忘れていた、いや忘れたフリをしていた、自分がいったい何者だったか、世に轟かせた二つ名を、――すちゃ! コーチは縒れたグラサンの位置を正した。
――知りたいかい? おじょうちゃん、
漆黒のアイウェアがギラリ重厚な光を放つ。地べたすれすれから見上げる視線の威圧に押され、ゴクリ、私は唾を飲み込んだ。髭面のコーチの口元がふと歪んだ。
――失くしたはずの私の名前、泣く子も笑う”四つん這いのハセガワ”ってね、
瞬間、鳥の囀りが止んだ。川を渡る風が凪いだ。せせらぎさえも足を止めて聞き耳を立てているかに思えた。


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