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貴方と君と、ときどきうさぎ

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あれから二週間





「少し時間を下さい」と告げてから二週間が過ぎた。
臨也さんは急がないからゆっくり考えてと言ってくれた。
自分から告白しておいて相手を待たせるなんて情けない。
こうなること、予想できなかったわけじゃなかった。
観察対象として付き合おうと言われるか、俺男には興味ないし、とか。


『だから俺の恋人になって』


とても、とても真剣な顔だった。
真直ぐに僕の瞳を見つめてきた熱い視線。
人の姿だったら顔が真っ赤になっていたに違いない。
それぐらいドキドキしたんだ。

嬉しかった。堪らなく嬉しかった。
電話をくれる度、チャットで内緒モードで話してくれる度
特別な気分になれた。街で見かけた時静雄さんにも嫉妬した。
名前を出しただけで嫌な顔をするくせに、いつも楽しそうなんだ。
その口から洩れる名前は僕だけでいい。
その目は僕だけを見てくれればいい。
何度も何度もそう心の中で呟いては押し殺してきた。

僕の頭の中は毎日毎日貴方で埋まっていた。それは今でも変わらない。
ダラーズを口実に何度も貴方に連絡を取ったのは下心があったから。
本当は今すぐにでも彼の胸の中に飛び込んでいきたい。
抱しめてもらって、臨也さんの温もりも香りも全部全部僕のものだって感じたい。

──…でも、怖い。
あの人を信じたい。
けれど信じきれない。


臨也さん。

心の中で呟いただけで苦しくなる。
そんな貴方が僕を好きだなんて、どうすればいいんだ。





「竜ヶ峰!!!」
同級生の声に顔を上げる。顔面に強烈な痛みが走り後ろにのけ反った
体は地面に叩き付けられた。すぐに理解できた。ぶつかったのはサッカーボールだと。
体育の授業中男子はサッカーの試合をしていて集中できていなかった僕が招いた
不注意だ。
「おい、大丈夫か?」
「顔面…だったよな…」
クラスメイトの男子が数人近寄ってきて声を掛けてくる。
じわりじわりと痛みが広がる顔を擦りながら「大丈夫」と言って
立ち上がろうとした時だ。
「…いっ」
苦痛に顔が歪み右足首に激痛が走った。
立つ事もままならずしゃがみ込んでしまい足首を抑えた。
「帝人!!」
正臣だ。正臣が駆け寄ってきた。正臣のクラスと合同で試合を
していたため騒ぎに駆けつけてきたんだろう。
「どうした?……足捻った?」
「…あはは、そうみたい」
顔面も痛いし右足首もじんじんと痛い。
「顔…は、ちょっと赤いけど鼻血とかは出てね―みたいだな」
正臣の手が頬に触れて、心配そうに僕の様子を伺っている。
「おーい保健委員〜!竜ヶ峰が怪我したんだ!こっち来てくれ〜!」
「待って待って、俺が保健室に連れて行くよ」
正臣がクラスメイトの言葉を遮った。同時に僕は肩をかりてゆっくりと立ち上がる。
多少痛みはあるものの歩けない事はなさそうだ。
「おお、そっか?じゃあ頼んだ紀田」
「おう。……歩けるか?」
「…う、うん。大丈夫」
僕達は近くまで来てくれた保健委員に断りの挨拶を交わすと
試合を再開した級友達に背を向けてグラウンドを後にした。
「っとに帝人はとろくさいんだからなあ、気を付けろよ」
「…ごめん」
「なーに悩んでるんだよ」
「え」
視線を正臣の方へ向ければばっちりと目が合った。
俺に隠せるとでも思ってるのかと言わんばかりの目だ。
「ここんとこずっと上の空だっただろ。俺達と一緒にいてもきな返事ばっかりで
携帯をいじっちゃ空を見上げて溜め息。追っかける視線はなーぜかカップル達ばっか。
こりゃ完全に恋の悩みだろ」
「そ、そんなんじゃないよ!…ちょっと夜更かししちゃって体調が悪くて、
上の空だったっていうか」
笑って誤魔化すが空しく僕の声は静かな廊下に響いた。沈黙が落ちて
時間だけが流れていく。遠くからグラウンドにいる男子達の声が耳に届いた。
正臣は何も言わない。ただ、僕を見ているだけだ。いつものお調子者の顔じゃない。
怖い位真剣な顔で。しばらくして正臣は正面を向いてしまった。ごめんね、正臣。
臨也さんの事を良く思っていない正臣に本当の事は話せないよ。
「……俺にも言えない事なのか?」
「ち、違うよ、本当に…ただの寝不足なんだ。それにほら、この前突然変身しちゃって
音信不通になったから親に連絡入っちゃってさ、凄く心配かけちゃってお説教とか
色々されて、ここのところよく電話がかかってくるんだよ…何してるのとかもう寝た
のか―とか。参っちゃうよね、僕もう高校生で一人暮らしもしているのにさ」
「……そっか、おじさんとおばさん最後まで池袋に来るの反対してたしな」
よく、説得できたと思う。僕の場合こんな体だ。万が一秘密が漏れたら大変な事になる。
頭ごなしに猛反対されたが何度も何度も説得に説得を重ね、学費以外はバイトで
稼いで自分でやりくりする事でなんとか話しを付けた。けれどこのご時世都会で
一人暮らしの高校生なんて生半可な気持ちではやっていけない。
そんな僕を心配してか母さんは毎月仕送りと食料品を送ってきてくれる。
本当にありがたい。けど自分で決めた事だ。約束は約束。仕送りは全て
貯金に回していた。
「うん、でもやっぱり僕この街に来て良かったって思うよ。学校生活楽しいし。
だから正臣、本当に気にしないで」
実家にいたら臨也さんとだって出会えなかったかもしれない。
「……わかった。けどなんかあったら絶対俺を頼れよ。
体の事だって知ってんの俺だけだしさ。色々心配だし」
「…ありがとう」
多分正臣はわかっている。嘘だって。それでも深く聞いてこないのが正臣のいい所だ。
親に心配されたのは嘘じゃないけれど嘘も混ざってる。本当は風邪で寝込んでたって
言ってあるだけ。僕は心の中でもう一度、ありがとう、ごめんねと呟いた。



放課後僕は正臣と園原さんに付き添われて病院に行った。診断結果は軽い捻挫。
保健医が下した診断と同じだった。数日安静にしていれば治るそうだ。二人は
僕の怪我を気にしつつ時折肩をかしてもらいながらアパートまで送ってくれた。
「二人とも今日はありがとう」
「大人しく安静にしとけよ。まあ帝人が家でダラダラしている間にこれから
杏里と俺は夜の池袋の街に二人っきりで楽しんでくるから心配は御無用だぜ」
ビシッと人差し指を人に向けるな人に。
「え、そうだったんですか?」
「杏里〜!」
「気を付けて帰ってね園原さん。特に隣の紀田正臣には」
「はい」
「そうか、照れてるんだな杏里。俺ってば罪な男だ。本当はメロメロなんだって
俺知ってる!」
正臣は腕を組んでうんうんと勢いよく頷いている。
「メロメロって今時使わないよね」
「容赦ない突っ込みありがとう」
「それじゃ、竜ヶ峰君。私達はそろそろ帰りますね。お大事に、また明日学校で」
「うん。二人とも本当にありがとう」
「じゃあーな!」
二人を見送り部屋に入って私服に着替えた。日課ともいえるダラーズのサイトに
一通り目を通していたらふと、チャットが気になった。最近臨也さんとの事が
あってからログインしていなかったのだが久しぶりにホームに行ってみると
セットンさん、罪歌さん、…甘楽さんの三人で会話をしていた。
少しログを読んでいくとスイーツの話題で盛り上がっていて完全に
ガールズトークである。