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アーケイズムの花

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wallclock





「っん、ふ、」



角度を変えて何度も何度も柔らかな感触を啄むと
漏れ聞こえる菊の声は甘く感じて、身体が逆上せ上がり、
その声さえ自分のものにしたいと、深く息を奪うようなキスをする。

できるだけ優しくと思って菊を抱き込んでいた腕が強張ったのは
近づいてきた後ろの気配に気づいたからだ


「…まだ何か用か?」


俺は後ろを向かずに言うと上体を起こしてから、菊を見せないように抱き寄せる。
後ろを見ずとも、紫電の瞳がおかしそうに細められたのを感じて虫唾が走った、


「君が面白いものを見つけてるなあと思って」

「物じゃねえ、」


「そう?壊せる物に変わりはないよ」



いつかの、君に懐いていた鳥みたいに、羽を捥いでもいいかい、
と、振り向けば目で嘲笑っているイヴァンを嫌悪の眼差しで見、
肩を少し震わせた菊を抱く力を強めた。

すぐにその腕が凍り付き始める、
イヴァンの魔法から守るように、凍り付き始めた腕を菊の盾になるように動かした

「全部凍っちゃう前に差し出したらどうだい?」

「っ、こいつは死んでもやらねえ」


魔法を使えなくても、菊が逃げる時間を稼ぐぐらいできるだろうと、
彼に逃げるように言おうとしたのと、俺の凍った腕を治そうと触れてきたのが同時で、

魔力負けした菊の手まで、パキリという音と共に凍り始める


「馬鹿何やってっ!」


「だってっ!だって私は…っ」


もう貴方があんなにボロボロになるのは、見たくありません、と
彼の顔を歪めているのは凍りついた手の違和感だけではないのだとわかってしまって、
己を犠牲にしてしか、彼を助けられない自分の不甲斐無さに泣きたくなってくる。

氷の膜が張った腕は少しの衝撃で崩れ落ちる、

そのことを、以前、自分が怪我の治療をしてやった鳥を凍らせて、
なんの躊躇もなく羽を叩き割ってしまったイヴァンを見たことのあるギルベルトは
菊の手に現れ始めた同じそれと、それを目に留めたイヴァンの笑みにゾッとした、

自分は人質だから砕かれることはないが、菊は違う、


「菊っ、俺はいいから逃げろ!!」


というギルベルトの声と、ちょっと遅いんじゃないかなあ、と
ギルベルトから標的を菊にしたイヴァンが手にしていたステッキを
彼の細い手に振り下ろすのに、ほとんど間がなくて、菊は衝撃に耐えるように目をきつく閉じた。


(カチリ、)


「あ?」


ギルベルトは自分の目が信じられない、というように、
もう一度瞬きしてみたが、目の前の光景が変わることはない。
彼の目の前では今まさにイヴァンが振り下ろしたステッキが菊に当たるその刹那で、
時がそこで止まってしまったように、そこから先へは動かない、


「どうなってんだ」


ギルベルトは自身の身体が動くのを確認すると、
イヴァンの杖を彼の手から抜き取って放り投げるが、杖は空中で静止した。
また、なんとかして菊の手の氷が取れないかなあとじっと見ていると、
氷が巻き戻されるように無くなっていく


(あれ?もしかしてこれって)


すべての時間の流れが停止していて、投げた杖が途中で停止したところまでの
一定範囲内でしか自分が影響を及ぼすことができないのを確認して、
確実に影響を及ぼせるのが自分だけであることから確信する。

これがギルベルトの魔法だということ、


時間を止め、時計の針を動かすように、時を巻き戻したり、送ったりする。
(たしか、音を立てると元に戻るんだよな、)
氷を巻き戻した自分の手で、菊の手を取ると指パッチンで時間の流れを呼び戻す。

そのまま状況についていけてないイヴァンと菊を他所に、
菊の腕を引いて、ギルベルトは走った、
自らにかけられた魔法も巻き戻して、屋敷から遥か遠くを目指して足を動かせば、
いつの間にか菊と息を弾ませるほど走っていて、声に出して笑った。



「やった!やったぞ菊っ、俺様は自由だ!!」

何が起こったのか、未だわからず、
息を切らせながら首をかしげた菊が可愛くて、

そこは街中だったけど、思うままに抱き寄せて、染まった頬にキスをした。



作品名:アーケイズムの花 作家名:りぃ