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アーケイズムの花

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お客さん旅の人かい?
聞いていきなよ俺の不思議な体験を、

俺は長いこと、この酒場を切り盛りしているのだけど、
そこに2人の旅人がその扉から入ってきた、
ひとりはフードを被っていて最初よくわからなかったけども
もうひとりが偉い別嬪さんでね、カウンターにいた男が声をかけたのさ、
でもその別嬪さんは黒い瞳をフードの男に向けたままでね、カウンターにいた男は気を悪くした。
男は酔っ払っていたんで気が大きくなっていたんだろう、その美人を抱き込もうとしたように私には見えた。

確かに、そのときはそう見えたはずなのにどうだろう、
フードを被った男が両の手を叩いて鳴らすと、カウンターに居たはずの男は消えていたんだよ。
勿論男に出していたお酒もなくて、まるでそこに男は居なかったというように、
フードの男はカウンターに腰掛けて私にこの街のことをあれこれ聞きながらフードを脱いだ、
そりゃあいい男でね、美人がずっと見ていたのも頷けるくらいに綺麗な色の髪と瞳をしていたねえ、
一通り情報を聞き終えるまで、カウンターで軽く食事をして2人は去っていった。

するとどうだい?

2人が居なくなったあと、消えた男がやってきたのさ、
でも聞けば、その男はまだ今日は酒を飲んでないって言うんだよ。
また同じ酒を注文して、またいい気分になって帰っていった。
な?不思議な話だろ?
まるでその男の時間だけが巻き戻ったみたいに、

そんなこと、あるわけないのにねえ。

作品名:アーケイズムの花 作家名:りぃ