二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
物体もじ。
物体もじ。
novelistID. 17678
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

幻水短編詰め合わせ(主に坊さま)

INDEX|10ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

akrajo (キルケ)



 鎌を選んだのは、単に剣が扱えなかったからに過ぎない。

 実際はどうあれ、固定されたものを刈るだけならば剣ほどには力の要らない鎌は、慣れない者にもまだ扱い易そうに見えたのだ。

 そんな理由であっても、幾年も使い込んでいれば、それなりのやり方、というものが身に付いてくる。

 角度。力。呼吸。

 効率的に仕事を終わらせるための術は、すでに身体の一部のように、染み付いている。


 首を刈る。


 そんな、絶望しか目に入らぬような、わざが。


 そうと気づいたとき、男は、低く笑った。

 闇深き処に在りて、生命を摘み取る鎌を振るう。

 それはつまり、死に神ではないのか、と。

 何の気もなく、ただ効率だけで仕事道具を選んだあのとき、すでに自分は、鎌の持ち主であることを。闇の中にのみ棲むことをも、選んだのだろうか 、と。

 それとも、首を刈るという仕事を効率だけで考えられた最初の最初から、間違い尽くしていたのかもしれないけれど。


 同じ暗さにいた者たちは、一人ずつ、堕していった。

 罪人とはいえ、人の命を刈り続けることに耐え切れず。または、絶対の主のように断罪の刃を振るうことに溺れきり。

 そんな中で、独り、ただの仕事としてしか捉えていなかった男だけが、ほんの初めと何ひとつ変わらぬ心のまま、残された。


 男は、手に馴染んだ首刈り鎌を見つめる。

 数多くの命を吸い、まだしばらくは吸い続けるだろう、鈍い輝き。

 けれど男はもう、それを死に神のものだとは、思えない。

 なぜなら、知ってしまったからだ。


 絶対なる冷厳さを持って、文字通り生命を摘み取り、吸い上げる本物の鎌を。

 一筋の迷いもなくそれを振るって見せる、酷薄なるその主を。

 血を、魂を際限なく狩り立てて昏く輝くその刃こそ、死に神の名に真に相応しいと、そう思ったから。


 だから、男は思ったのだ。

 そうなら、自分はもう、要らないのだな、と。

 そして、思った。

 だったら、違う場所に出てみようか、と。


 今まで棲んでいた昏い場所から出て、少しばかり、明るい処に出てみようかと。


 弾き出された、のなら。

 深き闇に相応しい主は別に在り、偽者はもういらないのだと、去るべきなのだと放り出され、宙に浮いたこの身柄を、昏き死に神のもう片方の手が無造作に掴み上げた。


 生命を摘み取る死に神の鎌と、生命の在る場所を守らんとする毅き意思を両の手に握る、光にも、闇にも染まらぬただ独りの少年。


 その、偽者などではない、本物の在り様を、見てみたいと、思った。


 ざらりと、キルケは、手に馴染んだ鎌を撫でる。

 首を刈ることしか知らぬ自分でも、今は、この戦乱の中なら、それを何かに使うことも出来よう。

 そして、本物の死に神を見つめ続けたなら、偽者でなく、他の何かになれようかと。



 だから、男は、もうずっと昔に選んだ鎌と共に、解放軍の軍主だと名乗るこの死に神のそばにいてみようと、思ったのだ。