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SLAMDUNK 7×14 作品

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消しゴムを忘れた日










「みやぎ、消しゴム貸して」
差し出された手のひらに、面食らってしまった。
「はい?」
いきなり2年の教室にやってきて、臆することなく入ってきたと思ったら。
おはよう、とか。いい天気だな、とか。そういう社交辞令はすっ飛ばして。
消しゴム貸して、だってさ。
「一個しかないんですよ。悪いけど、他の人に借りてくれませんか」
わざわざ来てもらったのにスミマセン。なんて、思ったりしないけど、一応謝っておく。
「めんどくせえ。ここまで来たんだから、それ貸せ」
そう言って、一個しかない消しゴムを指差す。
めんどくせえ、とは。今日はいつにも増して俺様だ。
「だったらここまで来なきゃいいデショ。だいたい、消しゴムなんて隣の席の奴にでも
借りろよ」
「俺はセンパイだぞ。うやうやしく敬語を使え。逆らうな」
んな無茶苦茶な。
「だから、これ貸したらオレのが無くなるんだって」
「じゃあ、他の奴に借りろ」
「アンタね…」
おもわず頭を抱えたくなった。
なのに当の本人は、アンタって言うな、三井センパイと言え、とまじめな顔で言う。
カンケーねえ! こんな頭の悪い奴が先輩なんぞであってなるものか!
「わかりましたよ。じゃあコレ持って行ってください」
これ以上この人の顔を見ていると、掴みかかって殴りたくなってしまう。ここは早々に
退場してもらおう。
手のひらに押し付けた消しゴムは、三井サンの指先にくるまれる。
「いいのか?」
なんて、どこか嬉しそうに聞いてくる。
いいワケないだろう。オレは怒りよりも、この人の小さな脳みそに哀れみを感じた。
「もう返さなくていいですから」
三井サンはそっと消しゴムを見つめて、それからオレを見て。
「貰っていいいの?」
「ドウゾ」
見下ろされた顔が、恥ずかしそうに笑った。
「さんきゅ」
ぎゅっと握られた、さっきまでオレの物だった消しゴム。
「大事にする」
それは、どうもありがとう。
気が済んだのか、三井サンは意気揚々と引き上げた。




「来たわね、やっぱり」
入れ替わりにオレの所へやってきたのは、なんとアヤちゃんだった。
「おはようアヤちゃん。今日もいい天気だねv」
ああ、神サマありがとう。これは、さっきの苦難を乗り越えたご褒美なんですね!
「おはよう、リョータ。三井先輩、消しゴムを借りに来たんでしょ」
「そうだけど・・・」
はっ、もしかしてアヤちゃん! オレが消しゴムを取られたのを見ていて、自分の分を
貸してくれようと…!?
「それで、渡したのね。そう…。リョータ、三井先輩が消しゴムを借りに来たのはね。
それに名前を書いて、誰にも見られずに使い切るためよ」
んん? なんかどっかで聞いたことあるようなフレーズ。
「昨日、小学生の頃に流行ったおまじないを三井先輩に教えたの」
そう言って、アヤちゃんは席に戻って行った。
昔流行ったおまじない。オマジナイ。消しゴムを使った…。
「恋のおまじない!?」
ガターンッ! 勢い良く椅子が転がった。
「リョータ、HRが始まるわよ!」
アヤちゃんが教室の中から言った。
それまでには戻る、と叫んで、電光石火の宮城リョータが廊下を駆け抜ける。
とんでもない! あの消しゴムに、いったい誰の名前を書くつもりだっっ!
思考のずれたセンパイの元へ走る。わき目も振らず、冷や汗を散らして。
みやぎ、と呼んだあの人の声が、いやにリアルに脳内でリピートされた。
ああ、ホント勘弁してください。
オレの叫びは、校舎に響く。





「三井サン、消しゴム返して!!!!!!」














作品名:SLAMDUNK 7×14 作品 作家名:鎖霧