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ハガレン短編集【ロイエド前提】

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恋のチカラ







「アルーっっっ!!!!!」


司令部内に響き渡る程の、大きな声。


「だって可哀想じゃないかっっっ!!!」


後を追うように上げられた言葉に、あぁまたアルが何処からか猫を拾って来たんだなと把握する。


「またやってますね」


相変らずだなぁ、と、笑みを見せながら、フュリーが言った。


「何か、ああ言う所可愛いですよね。あの二人がああやって走り回ってるの見ると何だかほっとします」


フュリーの言葉に、確かにそうだとぼんやりと思う。

ついこの間までは、張り詰めた空気を纏っていたエドとアル。

それが解れて来たのは何時の頃からだっただろう。

ふぅっ、と煙を吐き、あぁそうかと思い出す。


「大佐とデキてからか・・・」


思わずぽつりと呟けば、向かいに居たフュリーが「大佐がどうかしましたか?」と不思議そうに聞いて来た。


「あ?あぁいや、何でも無ぇ」


唯の独り言だと言ってやれば、フュリーは「そうですか」と軽く首を傾げて見せた。

最初は水と油のように反発して・・・いや、エドが一方的に敵対心を燃やしていただけだったのだが、それが
何が切欠だったのかは知らないが何時の間にか恋人同士になっていた。

しかも面白い事に最初の頃エド本人は、一生懸命隠そうとしているようだったが、何しろ大佐に対する態度が
前とは全く違うので一目瞭然で。

今まで観た事も無い笑顔を見せたり、ほんの少しはにかんだような仕草をしたり。

解り易いったら、無かった。

こうも変われる物なんだなぁと、しみじみ思った事を覚えている。

恋のチカラってのは、凄い。

序でに言うならエドをああも変えてしまった大佐も凄いが。

他人の恋愛なんか興味も無いし、首を突っ込むつもりもさらさら無いが、不思議な事にどう言う訳かあの二人
の姿を追ってしまう。

きっと、羨ましいんだろうなぁ。

残念ながら、俺はあんな素直な恋愛なんてした事が無いので。


「ハボック少尉」


不意に名を呼ばれ、そちらに視線を移すと、エドがドアから顔を覗かせていた。


「よぉ大将。アルとの追いかけっこはもう済んだのか?」


エドは眉を寄せ、唇を尖らせると、「逃げられた」と紡いだ。


「ねぇ、大佐は?執務室に居なかったけど」

「あぁ、何時の間にか仕事放って逃げてたって言って、さっきファルマンがホークアイ中尉と探してたな」

「またぁ?もー・・・ちゃんと言ってんのになぁ・・・」


呆れたように息を付いて見せたエドの様子に、一丁前にちゃんと恋人してるなぁと思わず噴出し掛ける。


「まぁ、座って待ってろ。もうすぐ見付かるだろ」

「うん」


腰を降ろし、俺を見上げて「えへへ」と笑って見せるエドに、一瞬ぐらりとした。

ヤバいヤバい。

何かこう言うの、弱いんだよな。

無垢って言うか、素直って言うか。

ホントに何だか、いろんな意味で。


「少尉?」


どうしたの?と、ほんの少し首を傾げ、俺を見上げるエドの頭をぽんぽんと軽く叩き、「いや、可愛いなと思って」
と言ってやると、エドは真っ赤になって俯いた。

ホントに、いろんな意味で。

このエドの素直さに一番ヤられているのは、実は俺なのかも知れない。




                             Fin.