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ハガレン短編集【ロイエド前提】

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爪痕






「ほんとですか?!」


ハボックがロッカールームに入ると、奥の方からフュリーの声が聞こえた。

また何かの噂話だと言う事は、継いで聞こえたブレダの「マジだって」と言う声で理解する。

取り敢えずハボックは着替えながら二人の話に耳を傾ける事にした。


「ああ。さっき大佐が着替えてる時、観たんだ。こう、背に左右、赤い筋が四本ずつあんのをさ。
ありゃ完璧に爪の痕だぜ」

「って事は大佐、昨夜は・・・ええええええっ?!/////あ・・・相手は誰なんでしょうねっ?!」

「大佐の事だから選り放題だろ。そう言えばこの間健康診断の時に医務局の女医の・・・えぇっと・・・
何てったっけ・・・まぁいいや。その女医から誘いを受けてたぜ?」

「ドクター・フレーズでしょ?美人で愛想がいいって評判でしたよ」


不意に違う声が聞こえ、ハボックはそれがファルマンだと把握する。

ファルマンは早速ブレダとフュリーに、ドクター・フレーズについての情報を語り始めた。


「セントラルのドクター・リンと並んで人気の高い女医です。歳は24歳。生まれはサウスフッドでここには

研修後初めての配属で4ヶ月前から勤務していますね。医大ではトップクラスの成績だったらしいです。
医務局も病院嫌いの者を少しでも減らそうと、健康診断にドクター・フレーズを投入しているようですね」

「へぇ・・・って、じゃあそのドクター・フレーズが昨夜の大佐の相手なんですか?!」

「そうとしか考えられねぇだろ」


バン、とロッカーのドアを閉める音が聞こえ、三人はハボックに気付く様子も無くそのまま会話を交わし
ながらロッカールームを出て行った。


「・・・面白い話だったなぁ・・・」


ぽつりと言葉を紡ぎ、ハボックはロッカーの前に置かれている椅子に腰を落ち着け煙草に火を点けた。




三人がロッカールームを後にしたのと同じ頃。

司令部の玄関を潜ったエドは、ロイの執務室に向かって廊下を歩いていた。

丁度角を曲がる手前で、ブレダ・フュリー・ファルマンが丁度エドの前を通り過ぎ、それに気付いたエドは
三人に声を掛けようと歩みを速めた。


「でも大佐って得ですよねぇ」


言葉を紡ぎ掛けたエドは、三人の会話の中にロイの名前が出た事に気付き、喉の奥で出掛かった言葉を
止めた。


「私なんか彼女なんて居た事無いのに・・・大佐は女性の方から声を掛けられる事の方が多いし、
羨ましいですよ」

「そんなの俺だってそうさ。でもいいよなぁ・・・昨夜の大佐の相手がドクター・フレーズってのが
羨ましいぜ」


その会話に、エドの表情が凍り付いた。


昨夜の・・・相手・・・?

大佐の・・・?

それって・・・もしかして・・・


「でも背中に爪痕立てられる位ですから相当激しいんですね・・・僕大佐の顔観られないです・・・///」

「何でお前が照れるんだよ」


その会話を耳にした頃には、エドの顔は怒りで真っ赤になっていた。


「あ・・・んの・・・クソ大佐・・・っ・・・」


突然真後ろで発せられた言葉に、三人は思わず足を止める。

恐る恐る振り返った三人は怒りに満ちたエドに、一瞬にして固まった。


「あ・・・え・・・っと・・・エ・・・エド・・・・・・」


たどたどしく言葉を紡ぐブレダを睨み付け、そうしてエドはそのまま弾かれたように一目散に駆け出した。


「・・・・・・思いっ切り聞かれましたねぇ・・・・・・」

「怖かった・・・・・・」


取り敢えず無事で良かったと、三人は深く安堵の息を付いた。