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ハガレン短編集【ロイエド前提】

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やきもち




「えーと・・・生胡桃と小麦胚芽と砂糖とバニラオイルと・・・げ・・・ミルクぅ・・・?」


ホークアイに貰ったメモを読み上げながら、エドは市場に向かって歩いていた。

ロイを待っている間、暇を持て余すので、ロイに何か作ってやろうと思い立ったエドは、ホークアイに
簡単に作れるちょっとした物は無いかと聞いた所、お菓子のレシピと材料の書かれたメモを渡された。

ロイが帰って来るまでに作っておいて、夕食のデザートとしてお茶と一緒に出そうなどと考えながら、
エドは材料を買いに意気揚々と街へ出た。

あれやこれやと物色しながら材料を揃え、鼻歌交じりにロイの家へと向かったエドは、ふと、
一人の女性がメモを片手にうろうろとしている所に出くわした。

どうやら困っているらしいと把握し、エドはその女性に声を掛けた。


「どうしたんですか?」


エドが声を掛けると、その女性はほっとしたように表情を和らげた。

彼女は二十代前半くらいの、可愛らしい女性で、その立ち振る舞いで育ちの良さが理解出来た。


「道に迷ってしまって・・・この住所なんですけど、ご存知ですか?」


そう言って、女性はメモを差し出した。

エドがメモを覗き込むと、そこに書かれていた住所はロイの家の近辺だったので、エドは良かったら
案内がてら一緒に行きましょうとその女性を誘った。

彼女は嬉しそうに「ありがとう」とエドに礼を述べ、二人は並んで歩き出した。

彼女は、名をマーガレットと言い、ずっと憧れていた男性とつい先日、漸く食事をする機会があったのだが、
その時のお礼をしたいと思い、その男性の家を訪ねる所だったのだそうだ。

だが初めて訪れる場所だったので地理が解らず、途方に暮れていたと言う事だった。


「彼はとても素敵な方なのよ。」


うっとりとして、マーガレットは相手の男性の事を話した。

知的で、クールで、でもその微笑みは優しくて、とまるで夢を観ているかのように話すマーガレットに、
余程その男性の事が好きなのだろうなとエドは思った。

エド自身、ロイに対しての想いがあるので、マーガレットの気持ちは痛い程良く理解出来た。

感情移入しながらマーガレットの話に相槌を打ちもって、そうして漸くその場所近辺に辿り着く。


「えぇと、で、その人の家、解る?何て人なの?」


エドがそう聞いてやれば、マーガレットはにっこりと微笑んで言葉を紡いだ。


「ロイ・マスタングと仰る方ですわ。」


ぴし、と。

瞬時にエドの表情が凍り付いて固まった。


「・・・え?」


ほんの少し間を置いて、聞き返す。


「ロイ・マスタングって・・・東方司令部の・・・?」

「マスタング大佐をご存知ですの?!」


きらきらと瞳を輝かせ、マーガレットは声を上げた。


「いやあの・・・えっと・・・少し・・・ね・・・でも大佐、まだ帰って無いよ・・・?」


仕事中だからとマーガレットに告げると、彼女は残念そうに「そうですの・・・」と言葉を零した。


「あの・・・じゃあマスタング大佐にこれをお渡し戴けます?」


そう言ってマーガレットは、エドに封筒を差し出した。


「先日お食事をご一緒させて戴いた時、ご無理を言って撮らせて戴いた写真ですの。」


特に断る理由の見付からなかったエドは、仕方無くマーガレットから封筒を受け取った。


「それでは、マスタング大佐に宜しくお伝え下さいね。」


マーガレットは深々と頭を下げると、その場を後にした。

暫らくその場に立ち尽くしていたエドは、数分後に我に返り、ロイの家へと向かった。

部屋に入り、荷物をテーブルに置いて。

気の抜けたように息を吐き、手の中の封筒を見詰める。

もやもやと、何とも言えない気分。

エドは決心したように封筒を開封し、中から写真を取り出した。

次の瞬間、エドの怒りが脳天を突き破った。

マーガレットに寄り添われ、満更でも無さそうに笑みを浮かべているロイが、そこに居た。


「・・・ふぅん・・・」


低く、唸るように声を漏らして。

エドは写真をテーブルに置き、買い物の紙袋の中から砂糖を出した。

にやり、と不敵な笑みを見せ、エドは寝室へと移動する。

そうしてベッドの前に立ち、徐に砂糖の袋を破り。

バサァッ!と、エドは砂糖をベッドに撒き散らした。

白い粒子が空中を舞い、辺り一面に広がる。

そしてもう一度テーブルの上の袋に手を突っ込み、今度はミルクを出して。

ミルクの蓋を開け、再び寝室に戻って、今度はばら撒いた砂糖の上に、ミルクを撒いた。

エドはそれ観た事かと言ったような表情を浮かべ、ミルクと共に持って来た先程の写真を枕の上に置いた。


「ざまぁ観ろ、だ。」


ふん、と、鼻を鳴らし、エドはそのまま部屋を出た。


「全く、自業自得だっての。」


そう、ぶつぶつ言いながら。

今日は、ハボックの所に泊めて貰おうと勝手に決め、エドはロイの家を後にした。



その夜、ロイが部屋の様子を観て真っ白になったのは言うまでも無い。




                                         Fin.