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青エク集

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お腹空いた(燐雪)



「あ、奥村くん!丁度良かったー。今ね、新しい料理のレシピについて考えててー。良かったらこれから一緒に考えて作ってくれたら嬉しいな!」

雪男が燐が待っているであろう下駄箱に向かっている途中、廊下の端でそう言っている女の子の声がした。
思わずそのまま立ち止まって隠れてしまった。
そっと様子をうかがうと、立ち止まっている燐に、同じクラスの女子だろうか、可愛らしい子が話しかけているのが見えた。

「あー悪りぃ。俺、これから雪男と約束あるから。」
「え、弟さん?兄弟ならまた今度、じゃだめ?今日、つきあってもらえないかなぁ?」

その女子はとても可愛い笑顔でそう言っている。
・・・確かに兄弟だし、約束と言っても、たまには一緒に買い物をして帰ろうか、などと言っていただけだ。
これじゃあ、仕方ないかな、女子を優先してあげても、などと雪男が考えていると、燐が口を開いた。

「悪りぃね。俺、雪男優先だから。」

そうニッコリと笑うと、燐は“じゃあね”とこちらに向かって歩いてきた。

何、今の兄さん!

ちょっとそんな顔であっさりとそんな事言うなんて、色々反則だと思う、などと雪男が考えていると、燐が雪男に気付いた。

「あれ?雪男じゃねぇか?偶然だな・・・って、おまっ、なんて顔してんだよ!?」

燐がギョッとしたように、だが赤くなってびっくりしている。
そんなびっくりされるとは、一体自分はどんな顔をしていたと言うのだろうか?
雪男が考えていると、燐が“行くぞ”と歩き出す。

「あ、待ってよ、兄さん。」

そうして二人で仲良くスーパーに買い物に行った。
買い物をすませて店を出ると、あたりはもう薄暗くなっている。
だんだんと冬が近づいて、日も短くなっているようだ。

「なんか急に寒くなったよなー。」
「うん、そうだね、兄さん。」

雪男が燐にうなづいていると、“だからさ、”と燐が手を伸ばしてきた。

「・・・何?」
「手、つなごうぜ?」
「な、何言ってんだよ、こんな外で!?」
「えーいいじゃん、昔はよく手、つないで帰ったじゃん。」
「それは子供の頃の事だろ!?だいたい寒くなったのとどう関係があるんだよ。」
「だってさ。」

そう言って燐は強引に雪男の手を握った。

「ちょっと兄さ・・・」
「こうしてると、暖かいだろ?」
「っ!!」

ニッコリと繋いだ手を持ち上げる燐。
やっぱり兄さんの笑顔は反則だと思う。
雪男は内心でつぶやいた。

「つか、お前の手、冷たいなー。」
「兄さんが子供体温すぎるんだよ。」
「んだよそれ!」

手から伝わってくる体温が暖かい。
じんわりと、雪男の手だけでなく、心までをも暖めてくれる。
こんなひと時、久しぶりだな、とポカポカした気持ちでいっぱいになった。
お腹空いたね、などと言いながら手をつないだまま仲良く帰る。


*******


「・・・あの・・・兄さん・・・?」
「ん?何、雪男。」
「ちょっと・・・。家帰ったとたん、何この体勢?」
「え?だってさー!さっき手、繋いでた時のお前もたいがいで更に煽られたってのもあるけどさー。放課後廊下で会った時のお前の顔!!赤くなって、そんでめちゃくちゃ可愛い顔されて俺、どうしようかと。むしろその時にそっこう押し倒さなかった俺を褒めて!」
「ほっ、褒められるか!!ちょ、兄さん!!せ、せめて先にご飯・・・お、お腹空いたんじゃ・・・」
「あー、後後!!先にこっち頂かせて!!今はある意味こっちのが空いてるから!!」
「ちょ・・・さっきまでの僕の穏やかな暖かい気持ちを返せ!!」
「何言ってもムダ。俺にはおまえの声は煽られてもマイナスにはならないんだって。じゃあ、いただきまーす!」
「兄さっ・・・ンッ」





作品名:青エク集 作家名:かなみ