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雨の季節に

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シカマルの旧友であり、同期のナルトがついに火影に選ばれるという知らせが届いたのはもうずいぶん昔の話になる。さすがに九尾を腹に飼っているせいか反対も多かったんだろう、話がまとまるまでにこれほど時間がかかったことは今までなかったと五代目火影の名を就任した綱手がぼやいていたことは周知のことだ。頭の固い木の葉の上層部がナルトを監視下に置きたがったせいもあってか、火影という名を戴きながらも、それと見合わないほどの拘束がナルトに約束させられていた。随分めんどくさいことになったとナルト本人も思ったことだろうがそれ以上の譲歩を上層部は見せず、追々どうにかしていくさ、というナルトの楽観極まりない言葉でことは終息を迎えた。
里中に新しい火影の話が回るころには随分ナルトの周りも落ち着きを見せて、正式に発表がなされる頃には違った意味でナルトの周りは騒がしかった。引き継ぎはどうするのか、補佐官はどうだとか、ナルトがきちんとすべてを把握するまで綱手が張り付いていたから輪をかけて騒がしかったのも仕方ないことといえる。
そしてナルトの就任式のころには、祭り好きなナルトのせいか、里の人間のせいかわからないが、ちょっとしたお祭り騒ぎに里中が浮足立っていたものだ。近隣の里ともうまく友好関係を結べている現状と、里が崩壊するという数年前の傷もすっかり癒えて活気づいている今だからこそと言うのもあったのだろう。何よりその事件の立役者となったナルト自身が火影になると言うのだから、里の人間が異様に騒ぎ立てるのも無理のない話なのかもしれなかった。
賑やかな町を眼下に控えさせながら、引き継ぎの合間に少しだけあいた休息をこれから自室と呼ぶようになる執務室の中で過ごしていたナルトは、先ほど届いたばかりの我愛羅からの密書を見てひっそりとほくそ笑んでいた。
我愛羅の少しくせのある字をたどりながら、ナルトはともに送られてきた巻物ひどく感情をこめて指を滑らせる。その巻物が起こすちょっとした、でもナルトからしたらとてつもなく大きな事件を思い出して留めていた息を、期待に昂った感情を落ち着かせるように細く吐いた。

「…長かったな」

小さく吐き出した言葉は誰に向けられることもなく、一人きりの執務室の中にひっそりと沈んでいった。ナルトはふかふかとした椅子に背を預けながら海老茶の色をした閉じ紐に軽く指を引っ掛けて、結び目の封を確認する。我愛羅に頼んだ甲斐もあり、封はぱっと見ではわからないほど繊細に書き記されていた。本来ならば自分ひとりでやるべきことなのだろうが、余り繊細な作業が自分自身に向いていないということをナルト自身は理解していたし、何より中の物が結構物騒なもののため、里内でどうこうしようとすれば何かしら問題が起こらないとも限らない。特に監視の目が強いこの時期に下手な行動は慎んだ方がいいだろうと判断したわけで、ついこの間、個人的に訪れた我愛羅についでとばかりに頼みこんで封を施してもらったのだった。我愛羅は閉じる、という行為において見た目以上に長けている、さすが風影といったところだろうが性格的なところも多いだろう。そしてお礼はきちんと礼として請求された。これについてはおそらく、彼の兄と姉が深くかかわっているに違いないとナルトは読んでいる。何にしろ我愛羅に頼んで正解だったと内心で呟きながらそっと懐にそれをしまい、ナルトはそのまま窓のほうに視線を向けて小さく欠伸をした。町並みは朝とも思えない人だかりで満ち始めて、大通りに至っては市から仕入れたばかりの野菜などを売る声さえ聞こえてきそうだ。
町を何と考えることもなくナルトが眺めていると、こんこんと小さくノックをする音が聞こえ、ナルトは首をすくめてまるでいたずらっ子のように笑った。誰がその無駄に重々しい扉の向こう側に立っているかを知っていたからだ。どうぞと言う前に扉が開くのを見て、声聞いてから開けろよなと言う不満は、漏らす前に入ってきた男シカマルによって掻き消された。

「奈良シカマルです。先ほど、春野上忍から伝言を聞きまいりました。」
「…なんか、シカマルがかしこまってると気持ちわりぃな。」
「うるせーよ。」

で?とシカマルがちょっぴり不機嫌に聞いてくる姿もナルトの想像通りだった。ナルトはぼろが出ないように不自然じゃないくらい小さく口元を意識的に下げてシカマルを見つめる。大事なのは、大したことじゃないとシカマルに思わせることだ。つややかな机の向こう側でこちらを見るシカマルに一瞥だけくれてやってから、懐から先ほど大事にしまった巻物をぞんざいに取り出して机の上に置いた。シカマルはちょっとだけ首をかしげて見せて、これは、と視線で尋ねてくる。勘が異様に鋭いから、今変に反応すると警戒されちまうなぁとナルトは思いながら、我愛羅が丁寧に刻んでくれた封が見えにくいように持ち直しシカマルの前に出した。

「これ、掃除してたら出てきたんだ、時間あるときにでも、解読してみてくれよ。」
「解部に回せばいーじゃねーか。」
「手続きとか、いろいろめんどくさい。それにどうせ後一週間もすればシカマルは俺の補佐になるんだからいいだろ。」
「へいへい。全く人使いのあらいことで。」
「じゃあ、報告よろしく。」
「了解。用ってそれだけか?」
「まさか。ここにある山積みの書類をな、」
「じゃあな、頑張れよ。」
「手伝えよそこは!」

ははは、という乾いた笑いを残してシカマルは扉から出て行った。それを見て、ナルトはほっと胸をなでおろす。餌には引っかかった、後は待つだけだ。ナルトはシカマルが出て行った扉を静かに見つめながら、やっぱり子供のように首をすくめた。


作品名:雨の季節に 作家名:poco