二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Hero-ヒーロー-

INDEX|2ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

2章 お互いさまのふたり



トイレのドア開けて部屋へ戻ると、相手は腕を組んだまま胸を反らし、叩きつけるように鋭く言葉を放った。 
「手はちゃんと最後に洗ったんだろうな!」 
「洗ったけど、久しぶりの再会で最初の言葉がそれだなんて、なんだかひどいな」 
と情けない声を上げると、
「勝手に入り込んできたくせに」とフンと鼻を鳴らす。 
 
そしてそのまま神経質そうなグレーの瞳が、頭の髪の毛の分量、額の広さ、顔や上半身、おなか、そして足先まで一通りジロジロと検分すると、大げさに首を横に振り大きくため息をついた。 
「……はぁー……。あまりにもひどいザマだな、ハリー・ポッター」 
フルネームで呼ばれて、その呼ばれた当人の方が、ひどく驚いた顔になる。 
「えっ!一目で僕が誰だか分かってくれたの?こいつはすごい。昔と見た目が変わりすぎたせいで、ほとんどの人が会っても僕だと気付かないのに、マルフォイはすぐに分かったんだ!」 

その言葉にドラコは不機嫌そうに顔をしかめる。 
「貴様はまだ自分のことを『僕』呼ばわりしているのか?その年にもなって。余計に情けない!」 
「年齢とそれは関係ないだろ!それに今さら別の呼び方に変更するのも面倒だし」 
ムカムカした顔で言い返すと、ドラコは相手に指を突きつけて、畳み掛けるようにもう一度言ってきた。 
 
「本当に情けない!それのどこが英雄なんだ?伝説のヒーローのハリー・ポッターなんだ?面影がちっともないじゃないか」 
指が相手の腹、胸元、頭を次々と指差す。 
「なんだその大きな腹は?丸々と肥えて、みっともない!上半身の筋肉はどこへ行った?そして哀れみさえ感じる禿げ上がった頭。しかもわずかに残っている後頭部の毛はくしゃくしゃだし、背中が曲がって前かがみなのも腰が弱っている証拠だ。貴様は魔法用の杖じゃなくて、本当の杖が必要みたいだな。――本当に見れば見るほど情けない姿だな!」 
ドラコの言葉は容赦ない毒舌だったけれども、でっぷりとした体型も、ハゲているのも全てが事実なので仕方がなかった。
しかし……、ここままで容赦なく指摘されると、逆にムシャクシャしてしまう。

ハリーだってとても大人しいとは言えない性格だったし、近頃は年のせいで一層怒りっぽくなっていた。
沸点が低くて、ついカッとなってしまう。
どの世界でもじーさんは短気と、相場が決まっているし。 
 
「それはみんな君のせいだ!悪党の頭なら、自分がトップだと言うのなら、ちゃんとそれなりのことをしろよ。僕の体が太ったのも、筋肉が落ちたのも、頭がハゲたのだって、みんな君のせいだ」 
「なっ!なんだって。変な言い掛りをつけるな。ただの自己管理が出来ていないだけじゃないか」 
ドラコは真っ赤になって言い返す。 

「自己管理なんか、もちろんしていたさ。ああしていたとも!バッチリ体調を整えて、筋肉トレーニングは毎日欠かさず、アルコールも適量しか取らず、食事にも気をつけて、箒や呪文のレッスンも日々精進していたというのに、この20年間一度だって自分の出番がなかったんだからな」 
ハリーも逆に相手に指を突きつけた。 
「大悪党が登場しなきゃ、ヒーローにはお呼びが掛からないんだ。――分かるかい?毎日筋トレしても、何もない日々が過ぎていったら、だらけてくるのが人間だ。仕事も定年退職して、年金も毎月決まった額が入ってくるし、ハウスエルフがいるから家事に困ることもない。――つまりだ、何もすることがなくなるんだ。今日も悪党は現れず、ヒーローの出番も何もないまま、ソファーに寝転んでテレビを見て、暇つぶしにポテトチップスを食っていたら、こうなったんだよ。コレステロールの固まりで悪かったな」 
フン!と派手に鼻息を上げて、ハリーはそっぽ向く。  
「それに君だって、かなり変な変わり果てた姿じゃないか、マルフォイ。昔の面影がないのは君だって同じだ!」 
 
ハリーは言葉を続けた。 
「まるで詐欺だ!」 
「何がいったい詐欺なんだ。変な言いがかりをつけるな」 
ああ言えばこう言う間髪を入れない受け答えは年を取っても健在だ。
長年培ってきた二人の言い争いは、むしろ合わせたみたいにテンポまでいい。 
 
「君は『闇の貴公子』とか、すごい名前で呼ばれていたじゃないか。逆に自分ときたら『我らがヒーロー、ハリー・ポッター』だったんだよ。君は『麗しの貴公子』で、僕なんか何のひねりもない『正義のヒーロー』っていう単純な名前で、いったいどっちが主役か分かったものじゃなかったよ、まったく!」 
フフンと相手が優越感に満ちた顔で憎たらしく笑った。 
「仕方がないじゃないか、自分はルックスがよかった。スタイルはいいし、足も長い。目鼻立ちも血統もよくて、頭脳明晰で、冷酷無比。やはりトップに立つものは、カリスマ性が必要だ。それがないと家臣が付いて来ないからな。わたしはそのすべてを兼ね揃えていたんだ」 
ぬけぬけとドラコはふんぞり返って、言い放つ。 

ハリーはそんな相手を半場呆れた顔で見返した。 
「それはさぁー、昔の話だよ。過去だよ、過去!分かる?──確かに君のほうが僕より女性たちに人気者だった時代もあったさ。週間魔女マガジンとかゴシップ雑誌で何度も特集は組まれるし、「恋人にしたい有名人のナンバーワン」に何度も選ばれたよね。僕には蚊帳の外というか、相手にされてなくて、やっとお情けでギリギリ8位に滑り込んだくらいだったのに。ああ、くそーっ!」 
「まっ、仕方がないさ、諦めろ。僕の顔がいいのは生まれつきだ」 
いけしゃあしゃあと言い放つ。 

「それは昔の話だと言ったんだよ、分からないヤツだな。今の君ときたら、ただのガリガリのギスギスのシワシワのショボイじーさんじゃないか。まるで骨に皮がくっ付いているだけの、干からびたイモリたみたいだ」
「――なっ!言わせておけば、失敬なっ!今流行りのメタボリックシンドロームで、内臓にたっぷり脂肪が付いる貴様のほうが、数倍はカッコが悪いぞ」
「僕の場合は恰幅がいいって言うんだよ。マルフォイの場合は顔も青白いし、髪はホサボサの伸び放題だし、まるで墓場からよみがえったゾンビみたいだ」
「いくら自分がハゲているからって妬っかむな。わたしには伸ばすだけの髪の毛があるんだからな」
と、今ではもう真っ白になってしまった肩の下まで伸びた白髪を嫌味ったらしく後ろへと払う。
しかしそこには昔の艶やかさも、鮮やかなプラチナの色合いも失せて、ただのゴワついた白髪があるだけだ。

「ふん!マルフォイ家の代々の遺伝らしいね。やっぱりの君の生え際だって、かなり後退しているくせに。頭半分はピカピカだ」
「キューピーそっくりの髪しか残っていない貴様が偉そうなことを言うなっ!」
「僕には白髪がない!」
「量が少ないくせに!」

ふたりの口喧嘩は止むことがなく、永遠に続いていく。
傍から見れば、どちらもいい年をした、ただの口達者なじいさんたちの喧嘩にしか見えなくて、情けないほど低次元の言い争いをしていることにふたりは気付いていない。
作品名:Hero-ヒーロー- 作家名:sabure