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断食月

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オマケ


 館の表を半裸の大男が、それも何か奇声を発する物を小脇に抱えて歩いていたので、目に留めた執事テレンス・ダービーは危うく護身銃を一発ぶっ放してしまう所だった。踏みとどまったのは、それが当家の主人だと気づいたからだ。
 夕方出て行ったと思ったら、こんな時間まで遊んでいたらしい。腕時計によると今は午前二時。断食月なので近所中が騒いでいるのをいいことに、テレンスは二階の窓から怒鳴った。
「早く! 早く入ってください! ご近所に恥ずかしいから!」
「おおダービー! 見ろ、私はやったぞ!」
 主人は得意絶頂満面の笑みで、バサバサして変な音を出す塊を差し上げて見せた。しかも顔と言わず体といわず血だらけで、破れた服があっちこっちでピロピロしている。当然、中身は露出しているわけで、どう見たって通報されても仕方がない。季節の変わり目に出没する(そして逮捕される)人々みたいだ。
「いいから! わかりましたから!」
「いま見せてやるぞォ!」
「はいはい!」
DIOが玄関口から入っていったのを確認して、テレンスは溜め息を吐きながら階段を下りた。
 階下のホールでは、はやくも主人が居合わせた部下一同を前にして獲物を見せびらかしている。手にぶら下げているバサバサした塊は、どうやら大きめな鳥らしい。
 そういえば、この数日DIOはどこかの廃屋で面白い鳥かなにかを見つけて遊びに行っていた。なぜかそんな事が周知徹底されているのは、たぶん部下達が万が一、現場に居合わせた場合に、素早く他人のふりが出来るように、という配慮だろう。
「あら、捕まえたんですのね」
とミドラーが言えば、
「そうとも! 熱い戦いだったぞォ! なにせ、こいつときたら……」
と武勇伝が始まりかける。それを絶妙のタイミングで黄の節制が遮って、
「これ、ほんとにスタンド使い鳥なんすか? 凶暴っぽいのは見て判るけど」
と、暴れている鳥をつついた。二人の間に意思の疎通があったのに気づいた風でもなく、
「何を言うか! さんざん攻撃されたのだ! こう氷でもって、こう……」
DIOは身振り手振りの注釈つきで、懇切丁寧に鳥のスタンドの様子を説明した。が、誰も理解できない。その脇からマライヤが金切り声を発している鳥の頭を撫でている。
「ちょっとカワイイ顔してるわ。ねえDIO様、このコ、なんて鳥なんですか?」
「ハヤブサだろうッ!」
根拠はない。いや、昼間のうちに図鑑で調べたのかもしれない。
 話が始まった瞬間にどこかへ消えていった要領のいいダニエル・ダービーと、身振り手振りが始まった時点で部屋に帰ってしまったホル・ホース、それからとうの昔に寝てしまっていたンドゥールを羨みつつ、テレンスはホールの隅に立っていた。出来れば話がこっちに転がって来るのは避けたい事態だが無理のようだ。
 主人と鳥を囲んで無責任にいじくっている一同の頭を超えて、喜びを隠しきれない主人の檄が飛んできた。
「ダービー、例のモノを持って来い!」
 ああやっぱり、と八割がた諦め気分で、テレンスは地下の自室に帰って『例のモノ』を取ってきた。二、三日前に命じられて、彼が作ったものだ。
「よォーし、良く出来ている!」
褒められてもちっとも嬉しくないが、それは鳥の頭サイズの、かぶり物というか何というか、とにかく飾りだった。ひらひら翻る長い羽毛が使ってあり、明らかに飛ぶには邪魔だが、雇用主の命令では仕方がない。
 隠し切れないどころか、はみ出してくる嬉しさで上機嫌のDIOは、無限の体力で暴れ続ける鳥の頭にソレを載せた。
「……」
当たり前だが、落ちる。
「……載せるんですか、それ」
「……どうやって……?」
さすがに部下一同の理解を超えたセンスのようだ。まあ、普通は考えないだろう。誰が鳥の頭に飾りをつけたがるだろうか。しかも、翼長1メートルの猛禽に。
「アレを持ってこい」
今度はわからない。テレンスは九割がた諦め気分で尋ねた。
「何ですか?」
「何とかいったろうッ! くっつけるヤツだ!!」
「ああ、接着剤ですか?」
「そうだッ!」
「手芸用ボ○ドと木工用○ンドとセメダ○ン、どれがよろしいですか?」
「なんでもいい! 一番くっつくヤツだッ!!」
 すべてを諦めきった穏やかに暗い心境で、テレンスはそれをも取って来た。
「ア○ンアルファです。すぐくっつきます」
「よし!」
 その後、鳥の体力が復活してスタンドの全容が知らしめられたり、主人の指同士が接着剤でくっついたりと、色々あった挙句の果てに、かぶり物は鳥の頭に収まった。事のついでにスカーフ様のモノを首に巻かれた鳥は、憔悴しきった様子で明け方の空にヨロヨロと飛び立っていったのだった。
 部下達の
『ごくろうさま』
の視線を浴びながら。


 それから数週間たつと、DIOと鳥の関係は著しく友好的になったらしかった。
 二人は塔の一室で、当時彼らが夢中になっていた映画のビデオを共に鑑賞しては『ブルー○・リーごっこ』をして遊び戯れるようになったのだ。
 テレンスがヌンチャクと衣装を作らされたのは、もはや言うまでもない。
作品名:断食月 作家名:塚原