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ルック・湊(ルク主)

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家事



「ルック様」
「ん?なんだい、セラ。」
「私も・・・家事を手伝わせて下さいませんか?」

ある日、いつもの如くルックが掃除にいそしんでいると、おもむろにやってきたセラが言った。

「え、いや、いいよ。」
「いえ。私もその・・・家族の一員として、家事をしたいと思います。ルック様のお役に立ちたいんです。」

家族、と言う時に、少し照れたようにセラが言った。
家族・・・良い響きだ・・・と何気にルックは感動した。
しかしそんな事を言うなんて、この子もずいぶん大きくなったもんだなぁと、ふと思う。まだ10歳だがとてもしっかりしたもの言いだし、ほんと立派に育ってくれていて良かった、とも思う。

家事、か・・・。
ていうか家族の一員とか言われても、ね。
家事してるの、自分だけだし、とルックは思う。ほんとレックナート様、せめて自分の部屋の、そう、せめて棚の埃くらい払う事は出来ないものか、と。
まあ、言っても詮なきことだけれども。
それにしても、うん、家事、ね・・・。なんていうか、ほんのり一抹の不安がある。なぜだろう。こんなにこの子はしっかりしているのに。

「そうだ、ね・・・じゃあ、とりあえず、ここの埃を払っててもらおうかな。」

ルックはそう言って手にしていたハタキをセラに渡した。この部屋は久しぶりに立ち入るが・・・だがこれくらいなら、問題ないであろう。

「はい!」

ハタキを受け取り、セラはとても嬉しそうに返事をした。
ルックは、そんなに喜ぶのなら、頼んで良かったな、と思いつつその部屋を出て、先に昼食の用意をしに行った。

一方セラは、ルックに頼まれたことが嬉しく、はりきっていた。そしてハタキで棚の上を払った。ちなみにまだ10歳ではあるが、セラは割に背がある。この間ルックに測ってもらったら150センチを超えたところだった。
だから棚の埃を払うくらい、難なく出来るはずであった。
ここの部屋がルックでさえも久しぶりに立ち入る部屋でなかったならば。
サッとハタキで払ったとたん、もうもうと埃がセラを襲う。その思いがけない攻撃にセラはむせ出した。

「っゴホッ、ゴホッ!!・・・く・・・。まさかここまで強敵とは・・・。このままでは埃を払う前に私がやられてしまう・・・。・・・そうだわ!」

良い事を思いついた、とセラはニッコリとした。

ルックは簡単な仕込みを終えると気になっていたので先ほどの部屋に向かっているところであった。すると聞こえるはずのない何やらたくさんのものが落ちるような音がする。

「!?」

とりあえずルックはそのまま転移魔法を使い、セラのいる部屋に移動した。
そこは部屋を出て行く前よりあからさまに散らかりまくり、もうもうと埃がまっている惨状であり、そしてセラはそんな中、埃だらけになって茫然と立ちつくしていた。

「・・・セラ?・・・いったい、何が・・・?」
「・・・ルック様。申し訳ありません。その、埃が襲ってまいりましたので、いっそ風で払えばいいと思い、風魔法を使ったら・・・。」

・・・うん。
ルックは笑顔で固まった。とりあえず・・・風の紋章は今度外させよう。ていうか本当は全部外したいところだけれども、流水は固定されているし、ね・・・。

「いいよ、セラ。ここは僕が後でやっておく。えっと、そうだね、じゃあ、今ちょっと食器などの洗いものがあるから、それを洗ってもらっていいかな?」

自分がやる、と言ったとたん、とてつもなく悲しげな表情をしたセラに負け、ついまた頼んでしまった。やはり一抹の不安があるが・・・。

「はい!」

するとセラはまた嬉しそうに返事をし、台所に向かって行った。
うん、多分掃除はまだ高度だったんだ。やり方も教えてなかったし。(やり方も何も埃を払うだけだが。)食器洗いなら、自分がやっていたのを横で見ていた事もあるし、大丈夫だろう。
ルックはそう思い、このすさまじい状態の部屋の片づけを始めた。

台所についたセラはいそいそと溜まっていた鍋や食器をスポンジで洗う。

「・・・て、結構落ちにくいものもあるんですのね・・・。ふ、ここで油断したらきっと泡で手が滑ってお皿を割る、というベタな結果になるという事ですよね?そうはいきません。私もそうそうだまされませんよ。」

セラは最早誰に話しているのか分からないが得意げにそう言いつつゴシゴシと落ちにくい鍋を擦っていたが、やはり汚れは落ちにくい。お湯を使えば簡単なのだろうが、そんな高度な技が彼女に思いつく訳もなく。

「そうだわ。勢いをつけたら・・・。」

良い事を思いついた、とセラはニッコリとした。

ルックはある程度片付いた所で、やはり心配な為、台所に移動した。今度ははなから転移魔法を使う。
そして到着した途端溺れるかと思った。
そこは津波警報すら凌駕する勢いで水があふれ倒していた。

「なっ!?」
「あ、ルック様!も、申し訳ありません!」
「ゴボッ、え、えっと、セラ!この水、どこかに移動出来る!?」
「は、はい、やってみます!」

2人して溺れそうになりながら、セラはなんとか手にしたままの杖を振った。とたん、台所に溢れかえっていた洪水のような水が消える。

「・・・ふう。」
「申し訳ありませんでした、ルック様。」
「・・・えっと、どういう経路でああなった訳・・・?」
「その・・・鍋の汚れが中々落ちなかったので、水を勢いよくその汚れに攻撃させれば落ちるか、と・・・。」

ふふ、そうだよね?あれだね、ジェット洗浄ってやつだね?
ルックは遠い目になりつつにこやかに思った。

「・・・セラ、ちゃんと言ってなかった僕が悪いんだけど、そういう汚れなら、お湯を出せば多分落ちるから・・・。」
「そうだったんですね?さすがルック様です!かしこまりました、では・・・」
「いや!いい、大丈夫だ。そうだな、そろそろお昼ごはんの時間だから、レックナート様のところに行って知らせてきてくれるかい?」
「は、はい、分かりました!」

セラが行ってしまうと、ルックはフウ、と長いため息をついてから風魔法を応用して室内を乾燥させていた。

その頃とあるバナーの釣り場所では、いきなりどこからやってきたのか大洪水の如く襲ってきた水により全身ずぶぬれになった某英雄様が静かに怒っていた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ