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ルック・湊(ルク主)

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濫觴



「わぬしは・・・何を考えておる・・・?」
「・・・あなた様にお目通りが叶って良かった、と。」
「ほぉ。激しく憎悪の目を向けられておった気がするのは・・・さほど昔ではあるまい?」
「あなた様にとっては・・・そうでしょう。私にとっては・・・これでも、長い道のりでございましたゆえ。」
「ふむ。・・・で?」
「はい。」
「何を目論んでおる。」
「・・・私に出来る事を。人でなく・・・魂すらまともでない器にすぎずとも、この世に生を受けた事をそしてそんな機会を与えて貰った事をようやく感謝出来るようになった私に、出来る事を。・・・・・・恐れ多くも申し上げさせていただけるのであれば。」
「申せ。」
「泰斗であられるあなた様には・・・どうか・・・何も・・・関与する事なく・・・私のする事を・・・ただ見ていていただければ、と。」
「・・・そんな事がまかり通る、と?」
「・・・。」
「・・・わぬしのなそうという事。今を持っても分からぬが・・・。」
「・・・。」
「・・・そして、わぬしが臥薪嘗胆であったのであれば・・・今捕らえてでも、と思うたが。よい。承知した。」
「・・・ありがとうございます。」
「うむ。わぬしには、位を与えておこう。」






「セラ。僕は復讐を果たそうとしているんだよ?君がそれについて来ることはない。君はただ魔力が高いだけの、人間なんだ。どうか、ここで幸せに暮らして欲しいんだ。」

魔術師の塔を出ようとしたところで、ルックはセラに捕まった。ため息をついて諭すも、セラは首を縦には振らなかった。

「いやです。セラは・・・セラの世界はルック様あっての事です!ルック様がおやりになる事はセラもやる事。ルック様が立ち向かおうとなさるのであれば、それが例え神であっても、セラは同じように立ち向かうだけです!」
「・・・いつの間に君は、そんなにわがままで我の強い子になってしまったのかなぁ。自分を持って欲しい、とは思っていたけどね、君のそれは自分を持つとは、違うんだよ?どこでそんな風に育ったんだろうね。」
「なんと仰られましても、セラは曲げません。ルック様が例え私から逃げるように去ってしまわれても、私はただ魔術を使ってルック様の前に現れるだけです。無駄でございますわ!」

そう言ってルックに向けてくる目は本気を物語っていた。ルックはまたため息をつき、独りごちた。

「・・・振り払う為に“復讐”などと言ったのが間違いだったのかな・・・、それで余計に君は熱くなってしまったのかな・・・?」
「え?」
「・・・いや。何でもない。・・・分かったよ、セラ。だが連れてはいくが、ずっと考え直してくれる事を願ってるよ。」

そう言うと、セラは“はい!”と笑顔で答えた。

笑顔・・・。
最後に見る顔が笑顔じゃなかったのが切ない。
ルックはそっと思った。

「ルッ・・・ク・・・?」

デュナンへと、湊に会いに行くと、いつもの如く彼はとても嬉しそうにルックを迎えた。
そうして湊はルックとの時間を過ごす。いつも忙しいはずの彼は、ルックが来ると是が非でもそうやって時間を作り、かけがえのない時を過ごしてくれた。
そして夜更け。
2人での時間を過ごした後でぐっすりと眠っている湊を、ベッドから出たルックはそっと見つめた。

湊。
たぐいまれな存在。
愛しい人。
初めて会った時から、ずっと自分に暖かい笑顔を向け続けてくれた人。あの大好きな笑顔で、どれほど心が暖まった事か。
五感のほとんどがうつろであった自分に、輝く色をくれた人。

そんな彼でも運命には勝てなかった、と戦争の結末を見て思った。
負の感情がまた高まった。
だが。

その後も彼はあの笑顔を惜しみなくふりまいている。それが偽りの仮面であればすぐに分かった。むしろそうであればいっそ楽であったのかもしれない。
湊は違った。心の底から、本心から笑顔を向けている。
そして、さも愛しそうに日々を過ごす。
そう、あれほどに大切なものを失ったはずの彼は、それでも何かを怨む事なく、愛しそうに日々を送っている。
そして忙しく大変な王としての責務を、少年の頃からあの笑顔で果たしてきた。
そんな彼を改めて知り、生まれて初めて、世界が愛おしいと思った。

ふと、湊の事が好きなんだと自覚した時の事を思い出す。
レックナート様との会話。懐かしく淡い昔の色。

“誰かを好きになれば・・・”

・・・レックナート様。
あなたは正しくて、そして間違っていた。

「ルッ・・・ク・・・?」

湊から離れ、大きな窓から見える月を見上げていると、目が覚めたのか湊の声がした。

「起きたのかい・・・?」

そのまま、湊が眠っているまま、ゆけば良かった。ならあんな湊を見ないで・・・。

「うん。どうしたの、ルック?」
「・・・湊。愛してる。」
「っ!?」
「だけれども・・・ごめん・・・。」
「・・・ルック・・・?」
「どうか・・・僕の願いを聞いて欲しい。」

そうして自分が告げた言葉により、顔の表情、色を失った湊を見るのが最後になってしまうなんて。

そんな事を思い返してから、ルックはセラを伴い、レックナートにも告げずにその場所を去った。

ただ、レックナートはその時、全てを知っていた。そして、身動きの取れない自分を今ほど呪った事はないと激しく思うしか、彼女には出来なかった。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ