二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ルック・湊(ルク主)

INDEX|147ページ/174ページ|

次のページ前のページ
 

表明



“どうか・・・僕を忘れて・・・幸せになって欲しい。・・・君にはあの笑顔でいて欲しい。”



「こんな夜更けに、何。」
「・・・すまない。一つだけ、頼みがあって。」
「・・・。聞こう。」
「・・・湊を、頼む。」
「・・・いやだ、と言ったら?」
「どうしようも、ないだろうね。だが分かってる。君は頼みを聞いてくれる、と。じゃあ。」
「待てよルック。せめて訳を聞かせろ。」

眠っている所に、かすかだが気配を感じ、目を覚ました詩遠のもとには、いつの間にかルックがいた。
その様子が妙であった為、詩遠はいつものちゃかすような様子もなくルックに耳を傾けた。
だが理由を問う詩遠に答える事もなく、ルックはかき消えてしまった。

「坊っちゃん!?こんな夜中に、どこへ行くんです!?」

その後、詩遠はすぐに支度をして家を出ようとした。するとそれに気づいたグレミオが起きてきた。

「ちょっと湊のところに行ってくる!」
「え!?今何時だと思ってるんです!?危険ですよ!朝じゃだめなんですか!?」
「すまないグレミオ。行かせてくれ。朝じゃ、ダメなんだ。」

その詩遠の表情に気づいたグレミオはため息をついて思わず持っていた詩遠の肩から手を離した。

「まったく。気をつけて行ってきて下さいね。あと、あちら様にご迷惑をかけることのないように。」
「相変わらず子供扱いして。でもうん、分かった。ありがとうグレミオ。」

そして詩遠は走った。
通常の人ではありえない早さであの距離を、走った。
デュナンにつき城に侵入する。詩遠にとっては誰にも気づかれずに最上階の湊の部屋のベランダにたどり着くのは訳もない事だった。
とりあえず屋上で、さほど乱れてはいない息を整えた。
ベランダから中をのぞくが、あいにく何も見えない。どうしようか、押し破る訳にもいかないし、と逡巡しているとソッと窓が開いた。

「・・・詩遠さん・・・?」

そこには憔悴したような表情を隠しもしない湊が立っていた。

「湊。」
「いったい・・・どうしたんです?」
「君に会いに来た。」
「え?」
「ルック。」

名前だけを言ったにも関わらず、湊は理解したように頷き、それから気づいたように言った。

「すみません、そんな場所で。どうぞ。お入りください。」

詩遠は軽くうなずいて中に入る。
湊は部屋に戻りながらつぶやくように話しだした。

「・・・僕には何が何だか、分からないんです。あんなに、ずっとそばにいたはずなのに。そりゃ、戦後は離れ離れだったけど・・・。」
「うん。」
「もしかしたら、ルックがずっと僕に言ってくれなかった何かに関係あるのかもしれない。」
「ルックは、やはりここに、いた?」
「えへへ、つい数時間前までは一緒だったんですけどね?ふいに、僕にお願い事をして・・・そして行ってしまいました。」

湊が振り向き、笑って言う。だがその笑顔はいつもの笑顔とはかけ離れていて。詩遠は近寄ってソッと湊の頭を撫でる。
湊はキュッと唇をかんだあと、また口を開いた。

「僕を忘れて、どうか幸せになって欲しい・・・ルックはそう言いました。」
「湊・・・。」
「ふざけんな、ですよね?その時もすぐにそう言えば良かった。柄にもなく固まっちゃって・・・。じゃあその隙にルックは・・・行っちゃった。」
「うん。」
「なぜ・・・何も話してくれないんだろう。どんな事だって、僕は受け入れるのに。」
「うん。」
「それに・・・あんな痛そうな表情なんて、見たくなかった。あんな表情を僕に残していくなんて・・・ルックは酷いよ。」
「・・・うん。」
「詩遠さん。」
「・・・ん?」
「詩遠さんもルックになにかお願い、されたの?」
「・・・ああ。君を・・・頼む、と。お願いなんてされなくても、なのに、ね?」
「・・・・・・。詩遠さん。」
「何。」
「さっそく、じゃあそれに甘えて、僕からもお願いがあるんですが。」

少し俯き加減で言う湊に、詩遠は首を傾げた。何だろう。

「ご迷惑をおかけするのを承知でいいます。どうか僕の執務を少し手伝ってもらえないでしょうか。」

思いがけない事を言われ、詩遠はますます首を傾げる。

「君の、執、務?て、王としての?」
「はい。実は最近旧ハイランドである、ハイイースト県で、きな臭い話がのぼっています。・・・ハルモニアがハイランド王国の再建を目論んでいる、という。」
「そうなのか?」

本当に人間というものはなんと愚かなんだろう。争いごとは止むことを知らない。そしてこうやってこの湊が懸命に治めているにも関わらず、よそでは嫌な噂しかなかったりする。一度グラスランドに行った時にはこの国に反感を持っているミリトという村がある事も知った。
・・・完全な平和など、夢物語でしかないのかもしれない。

「はい。確かな筋の情報です。今のところは何も動きはありませんが・・・。」
「そうか・・・。で、俺に何を手伝え、と?」
「本当に申し訳ないのですが・・・。この国の治安を確定し終えたいんです。その為のさまざまな業務と・・・そしてきっとここ数年の内にハイイーストを巡ってハルモニアとの間で動乱が起きると思います、それは、防げたら防ぎたい、とは思いますが・・・多分・・・きっと・・・。それにも・・・手を貸していただきたいんです。」
「・・・訳を聞いても?なんだかとても急いで何かをしようとしている風にも感じるんだけど。」
「・・・ええ。僕は・・・王を退任します。」
「え?」
「もちろん、今すぐじゃありません。とりあえず安定した治安作りを終え、そして多分起きるであろうハルモニアとの確執の片を付けてから。」
「それは・・・」
「ええ。そうです。・・・もちろんその間も、と思っていますが・・・、多分片手間だと見つからないでしょう。どれほどかかってもこの座を退任して・・・。王を退任した後で、僕は本気でルックを探します。」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ