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ルック・湊(ルク主)

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出発



ルックのバカ。

本気で忘れて欲しいなら、僕の身体に忘れられない刻印なんか残さないで。
余韻も冷めやらぬうちに“忘れて、幸せになって”なんて言われても出来るわけ、ないでしょう?
本気で忘れて欲しいのなら、侮蔑や嘲笑でもいい、なんでもいいから僕にぶつけるなりすればいい。酷い言葉や態度でもって拒絶すればいい。

でも知ってる。
ルックはそんな事、出来やしない。あれほど皆から冷たい、とか毒舌、とか言われていたルックだけれども。
本当に人を拒絶したり蔑んだりなんて、した事ない。本当はとても優しい人。

・・・普通は忘れるのがその人にとって良い事だと思ったなら、拒絶した態度を取るのが優しさだ、と皆思うだろうか。
僕は思わない。
大切な人からの激しい拒絶ほど絶望的な事はないだろう。そんな奈落の底に突き落としてでも忘れた方がいい、なんて思うのは最早エゴなんじゃないかな、と思う。
勿論、どんな付き合いだったか、どんな理由なのかなど、時と場合によるのかもしれないが、少なくとも僕は忘れる忘れない、は僕が決める。
いくら忘れさせる為だと言えども人をどん底に突き落とすような事をする・・・いくらその人自身をも身を切るような辛さを味わいながらの行動だとしても、それは僕は強さだとは思わない。優しさだなんて、思わない。
だから、ルックが僕に忘れろ、と言った割に拒絶すらしなかった事・・・本当はそれを酷いともバカだとも弱いとも思わない。

大好きな優しいルック。
いつだって毒舌ながらも、人が何か言ったらちゃんと返してくれる。お願い事をしたら、文句をいいながらもいつも引き受けてくれる。口ではいつも辛辣だったけれども、まわりをちゃんと見てて・・・。
ある時なんか、同じように少し離れた所でずっと立っているビッキーが寒そうにくしゃみしているのに気付いたら、誰にも分からないようにそっと暖かい風を起こしていたのを僕は知っている。ついルックを見てしまったら、“くしゃみされるとあのテレポート娘にどこ飛ばされるか分からないからだよ!”と言ってそっぽを向かれたけれど。

でも・・・そうやって優しすぎるから、きっと色々苦しんでるのかもしれない。
僕に何も話してくれなかったけれども、ルックが何かに苦しんでいる事は知っていた。
それは多分・・・紋章にかかわることなんだと僕は思っている。
ルックは真の紋章の持ち主だ。彼自身の口からはそう聞いた事はないけれども、今までに数回、とてつもない魔力を見せた事がある。そして僕のこの、“始まりの紋章”が何よりもそうだと告げている。
だのにルックの両手には、その紋章の証が、ない。あるのは旋風の紋章。何かが、違う。

それに・・・。
ルックと抱き合うときでも、ルックはあまり服を脱がない。お風呂には一緒に入ったこともあるし誰もが一度や二度くらいはルックと一緒に入ったこと、あるだろう。大風呂だもの。ただ、なぜかいつもルックのまわりは不自然なほどに湯気が多く、あまり裸体をしっかり見たことがない。そしていつだって彼は先にあがってしまう。
だけれども、一度だけ、たまたま足首を見た事がある。うっすら、とだが跡のある足首。
あれは・・・足枷でもずっとされてないと・・・付かない・・・でしょ・・・?
それもかなり古そうな跡だったと思う。それでも未だに残っているという事実が見てしまった僕をもなんともいえない気分にさせた。
そして、何も聞かなかった。いや、聞けなかった。

ルック。
言いたくないなら、それでもいい、と僕はずっと思ってきた。
でも、もうそう思ってなんてあげない。
なにもかも黙って自分で背負いこんで、そして僕の前から消えるなんて、許してなんてあげない。
地の果てまで追いかけて文句を言うんだからね。
そして、どんな理由であれ僕は君から絶対離れてなんてやらないんだから。

君の落ち度だからね。
これほどに僕の心を奪っておきながら忘れろ、とだけ言い残した。
いっそやはり、立ちあがる事すら出来ないほど、僕の心を打ちのめすべきだったんだよ。
まあ、でも、そんな事されてもね、どのみち、忘れてなんて、あげない。
誰よりも僕の心に刻まれた人・・・。




どんな事をしてもこの国の基盤を確定させ、ゆるぎないものにする、と湊はシュウに告げた。
そして、自分は退任する、と。
最初はシュウも含めた上層部から猛反対を受けていた湊であったが、その志はゆるがなかった。
詩遠・マクドールの協力の元、国民誰もから賢王、名君と言われもてはやされつつも、ハイイーストの乱の方を付けた後で、湊は惜しまれつつ退任した。


「本当にありがとうございました、詩遠さん。数年かかってしまいましたが、詩遠さんのおかげでなんとか退任出来ました。これでようやく僕は本格的にルックを探しに行けます。」

湊はあの満面の笑顔で詩遠に礼を言った。

「俺は特に大した事はしてないよ。君の力だ。で、検討はついているの?」
「ええ。片手間ですがあらゆる情報は仕入れてました。僕はグラスランドに行きます。」
「そこに彼がいる、と?」
「いえ、絶対、という訳ではないです。ただ、ハイイースト県の事もあり、ハルモニアについてはかなり探りを入れていたんですけどね。そこで数年前くらいでしょうか、割に最近ですが、神官将ではありませんがそれに近いような仕事をしている男がいるんです。で、その男がね、気になりまして。」
「へえ。」
「仮面をね、ずっと付けているらしいんですけど。素性を調べようとしたんですが、ただの一個人のはずなのにまったく情報が入ってこない。」
「それは確かに気になるね。」
「ええ。紋章がらみの国だけに。」

さすが組織の力。そして湊の執念だよね、と詩遠はニッコリと思った。

「・・・。じゃあ、行こうか。」
「え?」

詩遠の言葉に湊は本気でポカン、としたようであった。

「何?俺は連れて行ってくれないの?」

詩遠はニコリとしたまま首を傾げる。

「い、いえ!!し、詩遠さんが一緒に来てくれるだなんてっ!!うわぁ、すごい嬉しい!!うん!行きましょう!!」

湊はまたこぼれんばかりの笑みを見せた。

「ふふ。じゃあ、どうしようか、ね?グラスランドは広い。やみくもに歩いてもかなり時間を弄してしまうし、ね・・・。レックナートに聞くのは酷だし、な・・・。」

2人は一度魔術師の塔を訪れていた。
そこにいたのは憔悴した女性。
門の紋章をもつ、歴史のバランスの執行者。
きっと彼女は色々な事を分かっているのであろう。そしてその上で何も出来ないのであろう。詩遠や湊の運命に関しても何も出来なかったように。大した事をも言えなかったように。
まあ詩遠の時は、門の紋章の絡みもあり、普通の天魁星よりは身近であったとは思われるが。

「こんにちは、お久しぶりです。その件なら、僕がお役に立てると思うよ?」

城を出たところで話をしていた2人の前に、見知らぬ青年が立ちふさがった。

「・・・誰だ?」

詩遠が顔を険しくさせ、棍を構える。

「・・・え・・・?・・・あ、待って、詩遠さん!この人・・・もしかして・・・。」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ