ルック・湊(ルク主)
意外
「ねえ、マクドールさん。」
「ん?なんだい、湊?」
「この前にね、ルックから聞いたんだ・・・。真の紋章持ってたら、不老になっちゃうって・・・。」
詩遠が何気にぼんやりと、レストランのテラスでお茶を飲んでいたら、そこに湊がやってきておもむろにそう言った。
「・・・ああ、それ、ね。うん、そうだよ。」
「っやっぱそうなんだ・・・。」
ショックをうけているような湊の様子に、詩遠は首を傾げた。
「?俺の事心配してくれてるの?もしくは自分の事、心配?」
「っへ?あ、ああ、いえ、その。・・・詩遠さんて今、20歳なんですよ、ね?」
「そうだよ。まあ見た目はそう見えないだろうけどね?」
「ってことは紋章宿した時って、今の僕と同じ15歳だったんでしょ?」
「たしかそうだったと思うけど?」
「っそんな・・・、なんてこと・・・。」
「??」
「そんなに背もそれなりにあってかっこいい15歳だったなんて、ずるい!!」
え?そこ?
詩遠はニッコリとしたまま思った事は、とりあえずその突っ込みだった。
ほんと、色々面白い子だよね。
ブーブ言っている湊の頭に手を伸ばして撫でると、湊は詩遠を見てエヘヘ、と笑いかけてきた。
そして、ほんとなんか可愛いんだよね。
「そういえば湊はここには休憩に来たの?もうご飯の時間じゃないものね?そうならお茶、一緒に飲もうか。」
「あ、はい!もう用事は済みました。厨房にいる、ハイ・ヨーのとこに行ってたの。」
「?そうなんだ。ルックと一緒じゃないのは珍しいね。」
「そうですか?さっきまでね、ユズのとこにいたんです。」
ユズ・・・て、確か牛や羊、鶏などの世話をしている小さな少女だったっけか。
飼っている牛などに、“メンチカツ”“ハンバーグ”などといった非常にシュールな名前をつける子だったなと詩遠は思い出していた。
「ひよこさんをね、拾ったから、ゆずのところに届けに行ったんですよ。」
「ああ、そうなんだ。・・・そういえば君もよくひよことかと共にいるよね、世話、してるの何度か見かけた。ペット?」
ニッコリと詩遠が聞けば、湊もニッコリと笑った。そして口を開いた。
「・・・ええ。・・・非常食なんですけど、ね?」
思わず口にふくんだお茶をふきかけた。
まあ、それはそうだ、よね。
湊を見ていると、見た目の可愛らしさに、つい忘れがちになってしまうが所詮色々と物入りな戦時中。当然と言えば当然の話。
だけども、やっぱりこの見た目からは、つい違和感を感じてしまう。
「でもまあ、そこがまた、いいねぇ。」
「へ?何がです?」
「ああ、いや、まあこっちの話。お茶、美味しい?」
「あ、はい!美味しいです!こんなお茶、あったっけなぁ?飲んだ記憶がないんだけど。」
「ああ、これは家から持ってきたのを試供品としてね、ハイ・ヨーに。もし評判が良ければ取引しようかと思って。」
「へえーそうなんだ!絶対良いと思いますよお。美味しいもん。」
ここにシーナやルックがいれば、何商売しようとしてんだよ、と突っ込みが入っていたであろうが相手は湊、スルー。
と思っていたが。
「うん、この内容ならそうだなあ相場は・・・ああ関税とかも考えたらやっぱり・・・」
など、楽しげに詩遠に話してきた。
別に頭がいいわけではないが、もともと庶民出であり、小さなころから家のやりくりを養父であるゲンカクに任されていた湊は、意外にも商業系には強い。そして現在は、大きな組織のリーダーをしている上、参謀である軍師は交易の世界でも名の知れた貿易商をしていたシュウ。何気にこういったやりとりには詳しかった。
どうしよう、この子、ほんと面白い。
女の子、もしくはお人形さんみたいに可愛らしい見た目と、かなり天然な性格だという事はすぐに見てとれたが、それだけだったらここまで興味なんて湧かなかった。
「ああ、こんなところにいたんだ?」
「あ、ルック!」
不意に風使いの声がして、そして湊が嬉しそうにその名を呼ぶ。
「やあ、ルック。来たんだ?」
「・・・悪い?」
「いや?良かったらお前も飲まない?お茶。」
「一緒に飲もうよ、ルック。このお茶、すごくおいしい。あ、そうだ!新しいレシピを渡すの忘れてたぁ!ちょっと渡してくるねー。」
詩遠とルックをその場に残し、湊はまた厨房に入っていった。
「ねえ、ルック。」
「・・・何。」
「俺、あの子ほんと気に入ったんだけど。」
ニッコリと詩遠がそう言うと、ルックは無言でジロリ、と見てきた。
「せいぜい、首に縄、かけておくんだね。油断したら、つい、掻っ攫っちゃいそう。」
「そんなろくでもない事、微笑みながら言わないでくれない?それに、油断なんて、するつもり、ないから。」
「ふふ、あのルックがそんな事言うようになったとは、ね。これもやっぱりあの子のおかげ?まあ、安心しなよ、俺はお前も好きだから、無茶な事はしないよ?」
「・・・気持ちの悪い事、言わないでくれる?」
「あら、酷い。まあ、とりあえずは素敵なお兄さん、なんて位置に甘んじておこうかな。とりあえずは、ね?」
そう言って、詩遠は通りかかった給仕の女性が思わず赤くなるような、人を魅了してやまない笑顔で、そう言った。
ルックが舌打ちをしていると湊が戻ってきた。
「すいませんー、てルック?どうかした?」
相変わらず、こういった面には疎すぎる湊がニッコリとルックに聞いていた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ