ルック・湊(ルク主)
封印
「そろそろ具合も良くなってきましたね。」
「うん、ありがとう、グレミオさん。ごめんなさい、お世話になって・・・。」
「何を言ってるんですか!湊くんなら大歓迎ですよ。坊ちゃんも嬉しそうですしね。」
「え、詩遠さんが?なんで?」
「そりゃあ湊くんが大好きだからですよ。ほんと、実の弟のように想っていらっしゃるようで。」
「そうなの?嬉しい、僕も詩遠さん、大好き!」
ニッコリと笑った湊に、グレミオも微笑みかける。
「昼食、出来たら呼びにきますね。そうしたら、起きて一緒に食べましょうか。」
「もう、起きていいの!?」
「そうですね、もう大丈夫そう。でも、お昼、食べる時までは一応まだ横になっておきましょうね。」
そうして優しく微笑んだ後、グレミオは部屋を出ていった。
しばらくするとノックがあり、今度は詩遠が入ってきた。
「もう、起きていいんだって?」
「はい!」
「良かった。思った以上に熱、出ちゃったもんね。ほんとここで安静にしてて良かったよ。」
「ごめんなさい、迷惑、かけちゃって。」
湊が申し訳なさそうに言うと、詩遠はニッコリしてベッドサイドにやってきて、椅子を置き、座った。
「迷惑な訳、ないでしょ?むしろいつまでもいてていいくらいなのに。」
「あはは、ありがとうございます。」
詩遠は湊を覗き込むようにして続けた。
「ほんとにね、ムリはしちゃだめだよ?きっとね、疲れてるんだよ、今回珍しく風邪、ひいちゃったのも。だからね、戦争、大変だけど、たまにはゆっくり何もしない時間も作ったらいいよ。」
「詩遠さんもそんな時間、作ってたの?」
「ふふ。そう切り返されるとは、ね。うーん、まあ、俺は適度に発散、してたし、ね?」
「発散?どんな事?」
「色々、かな?色々。ああ、ルックでも遊んだよ。」
とも、じゃなく、でも、ですか。
さすが詩遠さんだ、と思いながら湊は笑った。詩遠もそれをみてニッコリほほ笑む。
「ルックやシーナと仲、良かったんですね。」
「そうだね。でもルックとは最初はあんまり付き合い、無かったんだよ。」
「そうなの?」
「まあ、最初の出会いではやらかしてくれたけど、ね?彼。本拠地にやってきてからは特に誰としゃべる訳でもなかったし、ね。」
何やら思う事でもあるのか、気がついてルックを見ると考え事をしている事がよくあった。
かといって近づいて話しかけようとすると、『何か用?』と取り付く島もない。
魔術師の島では、なんていうか、性格云々はアレだけれども、もう少し生き生きしていたような気がするんだが、と詩遠は思っていた。
そしてたまに、遠い目になる。
なぜだか気になり、次第にちょっかいをかけるようになった。
最初はただ鬱陶しがってはいるものの、空っぽの人形を少し彷彿とさせるような対応していたルックも、こちらがしつこく絡んでいくと、次第に少し人間味のある(性格自体はアレだったが)反応を示すようになってきた。
何か分からないが、あれか?ある意味人見知りでもしてたのか?
というよりも島から出てきて、人とどう接したらいいのか分からなかった、とか?
よくは分からないが、それ以来、更に色々ちょっかいをかけるようになった。
シーナが仲間になってからは、更にそこにシーナも加わって・・・。
「まあ、でも、ちょっかいかけてるうちに、気づいたらこういう悪友的な関係になってたけど、ね?」
少し何か思い出していたような詩遠が、また湊にニッコリとしてそう言った。
湊もそれに対してニッコリと微笑みかえす。
「・・・ルックって、何か・・・いえ、やっぱ何でもないです。けっこう反応、面白いですよね、ルック。それにブツブツ言いながらも、結局言う事聞いてくれたりして、やっぱり優しいし。」
湊は何か言いかけたがやめたようである。
「そうだね。」
「そして詩遠さんも、優しい!」
「俺が?ふふふ、そうなんだ、それはありがとうね。」
「何がありがとうなのさ。」
ほんわかとした空気の中、いきなり声が聞こえた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ