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【どうぶつの森】さくら珈琲

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7.とまと


「あたしったら雨女なんですぅ」
―――そうなの?
「だってあたしが来てから雨ばっかじゃないですかぁ」
―――それは梅雨だからだよ。
「つゆって、そばの?」


 6月の半ば、梅雨のど真ん中とも言えるくらい、雨がひどい日のこと。
 わたしの家のドアをノックする音が聞こえる。こんな日に外に出る人なんているのだろうか、と思いながら扉を開けると、そこにはレインコート姿のたぬきちさんと、わたしより背の低い小柄な女の子が並んで立っていた。
 まさしくそのヒトの女の子が、とまとだった。

「今日からこの家に新しく住むことになった、とまとちゃんだも!」

 たぬきちさんに紹介された彼女は頭を下げる。小柄で真っ赤なほっぺ、茶色い髪をおさげにしているので、どことなく幼い印象だった。

「えへへ〜。とまとっていいますぅ」

 語尾を伸ばす癖のせいか、バニラとラッキーを足したようなちょっと気弱で間抜けなしゃべり方になる。未だに現状がよく読み込めないわたしは、とりあえず同じくあいさつをした。

「これからちょっと狭いけど、二人で暮らしてもらうだも」
―――は、はぁ。

 いきなりな展開に、少しついていけない。だが、別にたぬきちさんが無理難題を押し付けているわけではない。この家は屋敷のように広くて部屋の数が多いため、新しく来たヒトの住人と一緒に暮らすように、最初に契約を結んでいたのだ。
 ただ、わたしが引っ越してきてからというものの、誰一人わたし以外のヒトがこの村に訪れることはなく、そのことをすっかり忘れていた。

「大丈夫! 喜びも苦しみも、おまけに借金までも半分こだもっ!」

 どこがツボなのか、とまとには大ウケした。自慢のギャグがかわいい子にウケて、たぬきちさんも見るからにうれしそうだった。そのまま、とまとは社会勉強という名目のアルバイトに連れて行かれる。

「じゃ、とまとちゃんは早速ぼくのところでアルバイトしてもらうだなも」
「え〜っ、やだぁ。めんどくさーい」
「だーめ! するの!」

 まるで歳が離れたカップルのようにデレデレとした会話。土砂降りの中、ここだけ空気が花畑状態である。二人が去って行った後もなお、同居人が来た実感がわかないまま、わたしはとまとに譲る部屋を掃除しに行った。