【どうぶつの森】さくら珈琲
39.朝が来て
そのままリクに助けられながらふらふらと家に帰り、ベッドに入った。
もう出尽くしたのか、涙は出ない。むしろ泣けた方が楽なくらい、苦しく重い気持ちが胸にのしかかってきていた。
すごく疲れていたのになかなか眠りに落ちることはできなくて、そのうち朝が来てしまった。
彼のくれたガラスの天使は、昇ってきた朝日に照らされ、静かに輝いている。
下で、とまとたちの声が聞こえた。そして、どたばたという足音も。
「ちょっとリクー! 油敷かないで焼いたら焦げるに決まってるでしょぉ!」
「うっせーなちんちくりん!だったらお前が作ってみろ! あちちち! わりぃ、ヴィス変わってくれ!」
「……また?」
また二人が喧嘩している。みんなで朝ごはんを作ってくれてるんだ。最近、お世話になってもらいっぱなしだな。
幸せなんだと、思う。わたしは。
彼にも幸せになって欲しいんだ。今まで辛いことや、悲しいことがあった分、幸せにならないといけない。
それがいつか、今のわたしの幸せにつながってくれればいい。
……それは途方もなく先のことのような気がした。
「きゃー! ヴィスくんも焦げてるよ!」
「……あ。」
朝日はどんなときだって、明るい。
いつだって朝は待たなくてもちゃんと来るけれど。
わたしの朝は、いつ来るんだろう。
わたしはいつ、前のように笑えるんだろう。
「さくらさぁーん! 朝ごはん、つくりましたぁ」
わたしの部屋のドアを、とまとがノックした。
うまく笑えるよう、わたしは軽く頬を叩いて、気合を入れた。
作品名:【どうぶつの森】さくら珈琲 作家名:夕暮本舗