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第一章




すべての戦いを終え、
中央司令部の再建作業を1ヶ月程した後、
エドワードとアルフォンスは賢者の石を持って駅に向かった。

二人の旅の目標は体を元に戻すこと。
やっとその願いが叶うときが来たのだ。

一時期は諦めかけた。
賢者の石の原料が生きた人間だということを知った時、絶望を感じた。
でも、立ち止まることはしなかった。


父、ホーエンハイムが最後に二人の息子に残した賢者の石は、赤く美しく輝いている。

ホーエンハイムは賢者の石の犠牲者すべての人と会話し、皆で戦っていた。
そうして残った人たちに息子たちの体を戻す手助けをして欲しいと頼んだ。
だからこそ二人はこの石を使うことを決意した。
父が最後に残したものだから、父の命のカケラでもあるから、
この石の人たちが承諾してくれたから、
「父親らしいことをさせてくれ」と言った父の想いを受け取るため。




「じゃあ行ってくる。」

「行ってきます。」

駅にはロイやリザだけでなく、
ブレダ、フュリー、マリア、アームストロング、ブラックハヤテ号、皆が見送りに来ていた。


「行って来い。」

「気をつけて。」

「行ってらっしゃい。」

「待ってますぞ。」

「ワン!!」

「ありがとう皆、行ってくる。」

「行ってきます。」


「行ってらっしゃいエドワード君、アルフォンス君。」

「ありがと中尉、男前になって帰って来るぜ。」

「兄さんそれ僕のセリフだよ。行ってきます中尉。」


「必ず戻るんだ。」

「もちろんです。」

「当たり前だろ。大佐は分かってるよな?」

「…君の席を用意しておこう。」

「とびっきり良い席頼むぜ。」

「善処しよう。」


エドワードは体を取り戻した後、正式な軍人になることを決めた。
初めは皆、賛成しなかった。
確かに、これからこの国は良くなるかもしれない。
だが、軍は軍でしかない。
イシュバール戦のようなことは起きないとしても、人を殺したくないというエドワードには厳しい世界だ。

ロイだけでなく、リザも、アルフォンスも皆が反対した。
それでもエドワードが折れることはなかった。

体を取り戻した後は、俺たちの旅を支えてくれた皆のために、この国を守りたい。
皆のために生きたい。それがエドワードの考えだった。

少しでもいい、少しでもいいから、
今までわがままに付き合ってくれた皆の力になりたい・・・・
大切な皆を、自分達が守られてきたように守りたい・・・・


エドワードのその想いが伝わったのか、
ロイが折れ、アルフォンスが折れ、皆が折れていった。


「なぁ大佐―――

「ちょーーーっと待ったーー!!!!」

エドワードの声を掻き消すように遠くから叫んでるのはハボックだった。
車椅子で向かってくるにしては随分と速い。


「まっ間に合った!!」

「少尉、大丈夫か?」

「これを見ろ!!!」

そう言ってハボックが自慢げに取り出したのはカメラだった。

「全員そこに並べ!!」

息つく暇もなくハボックは全員を並ばせ、
いくぞーハイチーズ!!という掛け声でシャッターを押す。
それと同時に汽車の汽笛が鳴った。

「現像出来た頃に戻って来いよ。」

「了解。」


二人は皆に背を向け、走り出す。
アルフォンスが汽車に乗り込む。
エドワードは続こうと片方の足を汽車に乗せた所で立ち止まる。
そして振り返り、まっすぐにロイを見た。


「大佐、戻ったら言いたいことあるから。気合入れて待ってろよ。」

その言葉にリザだけは少し微笑んだ。
ロイは何のことか分からなかったが、分かった分かったと頷いた。


「よし、じゃあちょっくら行って来る。」

「行ってきなさい。」


二人を乗せた汽車がゆっくりと出発する。
日差しが差し込み、まるで光に向かって走り出したかのようだった。



「さぁ、我々も仕事に戻るぞ。」

「「「イエッサー」」」



汽車の中、この時の二人の兄弟の心は希望に満ちていた。



作品名:past 前編 作家名:おこた