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お兄ちゃんの法則

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1. 言葉の魔法と魔法の言葉




「君はそろそろそうやって俺の保護者ぶるのをやめてよね」
「誰がお前の保護者なんかをすき好んでやるって言うんだ。俺はただお前があまりにもだらしないからだな」
「他には誰もそう思ってないんだから、だらしないって言ってもイギリスが勝手に思ってるだけだよ」
「他のやつらがわざわざ注意なんぞするか。すこしはありがたく思え、馬鹿」
「ほーら出たよ。それがイギリスのいつものパターンだよね。結局自分は身内だから叱れる、とか思ってるんだろ」
「……ッああそうだ悪いか。これでもお前の元兄なんだ。これで満足か」
「ちょっと、逆切れは止めておくれよ。……ていうか、イギリスって自分で思ってるほど保護者としても兄としてもできてないよね」
「何が言いたい」
「シーランドとか、今はスウェーデンとか、フィンランドのほうになついてるんじゃないのかい?つまるところ、俺のほうがまだいいお兄ちゃんになれると思うんだぞ」
「……あのなあ、アメリカ」
「なんでそこで哀れむような目をするんだい?!」
「ああ、おめでとう。たまには空気が読めてよかったな。でもな、アメリカ、兄っていうのは、それだけで務まるようなものじゃないんだ。わかるか?」
「バカにするのもいい加減にしなよ君」
「事実を述べているだけだから安心しろ、兎も角アメリカ、お前にはとても無理だよ」
「だったら君、やってみようじゃないか」
「うん?」
「俺がお兄ちゃんになる」
「誰の。ああ、言っておくけどシーランドを使うのはなしだぞ」
「うん、それは難易度が低すぎて俺のお兄ちゃんっぷりが上手く発揮出来ないから俺も賛成だね」
「難易度……?」
「いつでも挑戦し続けるのがヒーローだ。というわけでイギリス」
「んだよ」
「今日から一日、俺がお兄ちゃんで君が弟なんだぞっ」


生徒会室の空気の温度は一気に下がり、セーシェルがいそいそと鞄から携帯電話を取り出しボタンを押した。そこに慌てて近寄って(つまりアメリカとイギリスから遠ざかって)フランスが話しかける。
「あれ?セーシェルお前、携帯はよくわからないから持たないって言ってなかったっけ?ていうか契約したんならおにい……俺に番号教えてよ」
「あ、これケータイじゃないんすよ。モナコさんに持たされたんですけど、困ったときにはこのボタンを押せって」
「なんじゃそりゃ」
俺も年なのかねえ、最近わからないことばっかりだよ。呟くフランスはすぐに眉をひそめ、
「ん?この足音は」
生徒会室のドアが勢いよく押し開けられた。
「待たせたなセーシェル。さあ行こうか」
「ああっモナコちゃんずるいわー。セーちゃんを勝手に連れ去ろうとしてるー」
「君は勝手についてきただけだろう」
「そんなことないよねえ?セーちゃんはベルベルお姉ちゃんと遊びたいやろ?あっチョコレート、チョコあるよ!」
「チョコ!」
「君!セーシェルをもので釣るのはなしだってこの間女子会で協定を結んだばかりじゃないか!」
あっという間にセーシェルを囲んだふたりが座ったままの彼女の上でああでもないこうでもないと言い争いをはじめる。こちらでも置き去りにされて頭を抱えかけ、しかし胸の前で握り拳を作り再び気力を取り戻したフランスは、そちらでも睨み合いが続く会長の執務卓のあたりを伺いながら女子三人に近づいた。モナコとベルギーの後ろに立ち、ふたりの肩の後ろに軽く手を回す。
「それじゃあここは間を取って、三人まとめて俺と遊ぶっていうのはどうかな?」
沈黙のあと、笑顔で振り向いたモナコとベルギーが口を揃えて、
「「お断りします」」
「あ、でも、せっかくならフランスさんにおごってもらえるかも」
フランスのすぐ下でふたりが頭を突き合わせて小声で意見交換をはじめた。
「俺、特に変なこともしてないと思うんだけどね……少なくとも後ろのふたりよりは」
「そんなこと言ってると気づかれるっすよ」
「あ、一応お前も気にはしてたんだ。まあ、あれはほとんど大丈夫だろ。俺はただ巻き込まれたくないだけ」
「それについては同感すねー」
深く頷くセーシェルの後頭部が急にモナコとベルギーの顔に隠されて見えなくなる。すると両手に花、という言葉が脳裏に浮かんだフランスはなんとなく頬が緩むのを感じた。これはこれで悪くない。ほんとうに。
「フランスさんがいてもこの場合ははっきり言って邪魔なだけなのだが」
「お兄ちゃんからフランスにはあんまり関わるなって言われてるけど」
この際のことだ、何気なくひどい評価が漏れ聞こえるのも無視できる。
「「セーシェル(セーちゃん)が言うなら仕方ない」」
「よっし、じゃあ行くか」
「フランスさんのおごりですよね?」
「ああ、うん、セーシェル、お前はほんと……」
言いながらそそくさと脱出したので、生徒会室のドアを閉めることもしなかった。


イギリスは軽いショック状態に陥っていた。
(アメリカが、兄?)
目の前に立っている元弟は執務机によりかかって、イギリスからは目を逸らしている。はずかしがるらくらいなら言い出さなければいいのに、とイギリスは思いながら、自分の顔にまで怒りとは違う熱さがのぼってきたのを感じた。
それを振り払おうと顔を上げる。
「お前はまた、突拍子もないことを……」
「実に論理的な帰結だと思うんだけど」
「アメリカではそうなのか?」
「イギリスだと違うのかい?」
しばらく睨み合いが続き、なにも考えていないようなアメリカの澄んだ目を見つめながらイギリスは考えた。イギリスにとってはもう、アメリカの考えることはまったくわからなくて、それはもう彼がなにも考えていないに近く、突拍子もなく飛び出すなにもかもに反応しなければならないなんてたまったものではないけれど、でも俺がなんとかしなければという使命感をイギリスはどうしても捨てきれず、この場合にしろイギリスが引き受けなければしわ寄せはそれこそシーランドに行き、ただでさえあいつは俺になついてないのに、あれ?ならアメリカの言うことは正しいのか?なんだそれ、意味わかんねえぞ。いや大丈夫だ、スウェーデンもフィンランドもそこらへんはきちんとしつけてるだろうし最近はミクロネーション相手に仕切り役やってるからしっかりしてきたしって、違くて、あれ、俺なんでアメリカと睨み合ってたんだっけ?
「呼んでみなよ、イギリス」
「は?」
「試しに俺のこと、お兄ちゃんって」
「アメリカ、お前、この俺をいったいなんだと思っている」
「君、形から入るの得意だろう?」
「そういう問題じゃねえだろ?!……だいたい、なんでこんなに下らないことにいつまでもこだわってるんだよ、お前」
「こだわってるのはイギリスだよね?ひとこと俺のほうが優れてるって認めればいいだけなのにさ」
「それは、拘るところだろ」
(拘るに決まっている)
なにしろあのころのイギリスにとってアメリカとの時間は欧州での腹の探り合いが続く日々の中においてはオアシスそのもので、そうして手探りとはいえ彼は心からアメリカがまっすぐ生きていかれることを願ってアメリカに与えるべきものを、感情を選んでいた。
作品名:お兄ちゃんの法則 作家名:しもてぃ