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Weird sisters story

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Lachesis 2




片目に工廠工事の許可証を見ながら報される言葉に耳を傾ける。
「ザクに関しては、ガナーザクウォーリアが中破、ザクウォーリアが大破、ファントムは被弾によりシステムコントロールに不都合が生じているとの事」
「パイロットは?」
「はっ、ルナマリア・ホークは右腕、右肩に怪我を負っていますが、命に別状はありません。レイ・ザ・バレルも軽度です。ただ…」
紫の軍服を纏う男が言葉を濁す。
ギルバートは、書面から目を離し彼を見た。
「アスラン・ザラは今もなお、昏睡状態です」
静かに吐き出された言葉に、短く息をついた。
「彼がこうなってしまうとは…」
「出来る限りの事はやったと、医師も言っておりました」
「あぁ、後は彼自身に任せるしかない。――引き続き、状況確認の方を頼む」
「わかりました」
男は敬礼し、踵を返した。
やがて聞こえてくる扉が閉まる音を聞くと、ギルバートは立ち上がり、外の様子を眺める。
襲撃の後が生々しく残る工廠。
いくつかのハンガーはまだ黒い煙を昇らせていた。
「さぁ、始めようか」
ギルバートの唇は、古い友人の名を模ったあと、薄く微笑まれた。






次々に運び込まれてくる残骸は、ついに山と呼べる量になった。
その傍らで溜息をつくと、コツリと頭を小突かれる。
「そんな重っ苦しい事するなよ」
「だってあれ……」
ヴィーノが指し示す先にある、ガラクタと見間違うかのような機体。
それが、大量に並んでいるのだ。
「あれを修理しろって…分解して組み立て直した方が早いよ」
「コストの問題もあるんだろ?ここは軍事工廠だからな」
「俺がやっと整備したのに……」
「文句言うなよ。機体を直す事だって整備士の仕事だ」
そんな事を言いつつ、ヨウランもかなり疲れた表情をしている。
ヴィーノは足元に落ちていた何かの破片を手に取った。
塗装ごと黒く焦げていて、最早何の機体の物なのか判別がつかない。
「残ったのはインパルスとセイバーだけかぁ…」
「洒落になんねーよな、3機ごと持って行かれるなんて」
「なぁ、やっぱあれってコーディネーターなのかな?」
あんなに複雑な機体を、いとも簡単に動かしてみせたのだから。
見上げて尋ねてみると、ヨウランは肩をすくめて見せた。
「余計な事は言わない方が身の為だと思うぞ」
そんな忠告に、はぁ、と再び溜息を落とし持っていた破片を投げた。
軽い音を立てながら跳ねる様を見ていると、それはちょうど誰かの足先で止まった。
徐々に視線を上げてみる。
「ルナっ!?」
「ごっちゃごちゃね」
右腕が包帯に巻かれたままで、ルナマリアは苦笑してハンガー内を見て言った。
「もう大丈夫なのか?」
「こんな大変な時に寝てられないわよ」
歩み寄ってくるルナマリアがふと、立ち止まる。
不思議に思って見てみると、彼女は一つの残骸に視線を絡めとられていた。
「あれはもう駄目だから、分解して使えるものだけ取るんだとさ」
ヨウランの言葉に、ルナマリアが苦い顔をする。
彼女の先に横たわるのは、もはや原形を留めていないザクウォーリア。
緑にカラーリングされた痕跡すらなく、全開になっているコックピットがやけに目に付いた。
「ねぇ、あの時何が起こったの?」
ルナマリアが視線を戻して訊いてきた。
ヨウランとヴィーノは二人で顔を見合わせると、難しい顔をして唸る。
「元々、整備不良だったんだよ、このザク」
「回路のどっかがイカレてたみたいで、何回機動テストやっても決まってトラブルを起こしてたんだ」
「なのにあの人が勝手に乗ろうとするから…。俺、ちゃんと言ったんだけど…」
「聞かずに発進しちゃったわけね」
続けられた言葉に、こくりと頷いた。
「武装も何もないのに…」
「それに加え、アビスのあの火力が相手じゃあな」
ビーム砲を被弾した直後、ザクウォーリアは爆散こそしなかったものの、機体の上部が大きく爆発した。
おそらくショートした火花と多大な熱によるものだろう。
その衝撃の最中ファントムから放たれたビームライフルがガイアを狙い、ルナマリアはなんとか危機を乗り越えたものの、武装を破壊されてしまいどうする事も出来なかった。
ファントムの方も、システムがパワーダウンしたらしく、追撃の手はそこで止まる。
遠ざかっていく3つの機影を、虚しく眺める事しかできなかった。
「どうしてこんな事になったのかしら…」
ルナマリアの呟きに、答えるものは誰もいなかった。






ピピッ。
静かな空間に響く音。
ライトが赤から青に変わったのを確認して、そっと中へと入った。
真っ白なベッドと生命維持の機材以外に、何も無い。
レイは躊躇いなくベッドへと歩み寄った。
瞳を閉じている様はいつか見た彼の寝顔そのもので、声をかければ起きるのではないかとさえ思ってしまう。
直ぐ傍にある画面から、拍動を知らせる電子音が規則的に聞こえてくる。
横たわる彼の、左の手を取った。
アスランの左腕には、包帯が巻かれてあった。
「…貴方は、左腕、なんですね…」
かつては自分も、同じ状況に陥った。
消せない、傷痕。
彼はあの時、何故自分を助けたのか。
ぎゅっと握り締めても、伝わってくるのは哀しいくらいの暖かさだけで。
「泣いている人間を、見過ごせなかったんじゃないんですか」
すとん、とレイは膝から崩れる。
祈るように、左手を額に当てて俯いた。
「………俺を泣かせて、どうするんですか…」
消え入りそうな声。
その言葉に、いつからか立ち尽くしていた赤い瞳の少年は、そっと背を向けた。


作品名:Weird sisters story 作家名:ハゼロ