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Weird sisters story

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Atropos 4




内部は、一時騒然となった。
当然だろう。アスラン・ザラと言えば、知らない者など居ない。
前対戦中では信じられないほどの戦績をあげ、伝説のエースとさえ謳われている男だ。
彼は大戦が終わると、彼の親友と共にぱったりと消息が途絶えた。
死んだと言う者や、どこかで隠れながら生きていると言う憶測もあったが、結局はわからずじまいだったというのに。
「なんでそんな奴が…ザフトに与したのか!?」
元々ザフトの人間である。
それは驚くほどの事ではないのだろうが、地球軍こちらとしては大問題だ。
ネオは考え込んでいた顔を上げると、レイを見据える。
「どこでその情報を手に入れた、レイ」
「この間の潜入捜査の時だ。Sシリーズの開発、そしてザフトの軍事拡張の為に呼ばれたらしいが」
レイはあくまで、淡々と言葉を紡ぐ。
しかしそこでネオは確信した。確かに、記憶は変わっている。
レイの記憶を地球軍の人間、それもザフトに居た時と同じように、独立し様々な任にあたるポジションに設定するよう、指示したのだ。
つまり彼がザフトにいた頃に得た知識や記憶は、全て潜入捜査した時のものとして引き出せるようにしている。
だが、まさかそれがアスラン・ザラなどという大事だとは。
少々苛つきながら、ネオは更に訊ねる。
「アスラン・ザラがあの中に居るというのか?」
「あの赤い機体…X23−S、セイバーだ」
「『S』…やはりSシリーズなんだな?」
「そうだ。Sシリーズの機体は全部で5機。そのうち3機はここにあるが…残り2機は今見えているアレだ」
レイは戦闘画面にアンノウンと標されているあの2機を示した。
「いくらSシリーズであろうと、あんな腕を持つパイロットなどそうそう居るものではない。恐らく、セイバーに乗っているのがアスラン・ザラだろう」
「…もうひとつは?あれも中々の動きだが」
「X56−S、インパルス…フォースシルエットを装備している。機体番号はαだ。パイロットは、」
そこで、レイは口噤んだ。
なぜだかその情報だけ、うまく出てこない。
「さぁ、記憶に無い。恐らくザフトの一兵士だろう」
「そうか。…しかし、また厄介な事になったな。どうする?」
ネオは諦めたように苦笑する。
何しろ、今自分たちは伝説のエースと戦っているのだ。
「現在のカオス、アビスの残存エネルギーは?」
レイは近くにいた通信兵に声を掛けた。
程なくして、はっきりとよく通る声が返ってくる。
「残存エネルギー、40%を切っています」
「そろそろか。カオス、アビスにエネルギーを温存して置くように伝えろ。それから基地南部の索敵を強化」
「何をする気だ?」
ネオが怪訝そうな顔で訊ねてくる。
レイはコンソールを弄り、インパルスの機体を映し出した。
「他のSシリーズの機体がそれぞれの戦況に特化したものだとすれば、このインパルスは3種類のモジュールを自由に換装する事によって、汎用性を高めていると言っていいだろう」
「なるほどね…」
ネオは軽く顎に手を当てながら、画面に見入った。
確かに他の機体のように変形しないし、どこか浮いた存在だ。
更にレイはインパルスの頭部を画像解析する。
「エネルギーに関しても同様だ。このパワーレシーバーで母艦からのエネルギーを受信し、着艦する事なく補給する事が可能だ」
続いた説明に、ネオは殊更驚いた。
「ザフトはそこまで進んでるのか…」
「もっとも、これはインパルスにのみ搭載されている機能だ。本来ならSシリーズ全般に搭載するつもりだったが、他の機体では容量が大きすぎた」
「それで、このインパルスそろそろが補給に入ると?」
先程のレイの言葉を汲み取って、ネオが口を開く。
それにレイが頷くと同時に、焦った声が飛んでくる。
「き、基地南部、S53ポイントに、敵機です!」
「遊撃部隊か」
慌てる様子もなく呟くと、的確に指示を飛ばした。
そんなレイを見て、ネオは思う。
レイは軍人として、最高のスペシャリストだ。
そうやって、小さい頃から育てられてきたのだろう。
(辛かっただろう、な)
何もかもひとりでやってきたのだ。
誰も頼る事もなく、心を休める事さえ出来ずに。
(だからお前は、俺にあんな事を頼んだのか)
自分のようになって欲しくない、と言ってきた。
あの時、彼の記憶を消す直前。
託された、小さな紙切れと共に。






「なんだ…?」
敵の攻勢が徐々に弱まってきている。
自分達が圧し過ぎたのだろうか。
母艦からの情報に寄れば、敵の援軍はこちらに向かってきているとの事。
ここで殲滅してしまっては意味がない。
アスランはライフルによる牽制を少しだけ弱める。
『隊長』
静かな通信が入る。
画面には、シンが映っていた。
あれだけの戦闘をこなしておきながら、彼は至って冷静だ。
『エネルギー、切れるんですけど』
アスランは少しだけ苦笑する。
インパルスは着艦せずともチャージする事が可能だ。
その為か、シンはその配分を考えずに行動している。
あれだけブースターを噴射させていれば、尽きるのも早い。
「俺が擁護する。その隙に後退しろ」
アスランは高度を下げた。
それを追うようにカオスもついてくる。
画面に映っているインパルスが徐々に下がっていく。
それを確認して、アスランは海面付近まで来ると、追撃させないように海の中にいるアビスをマークした。
だが、それと同時に緊急に通信が入った。
『たっ、隊長!こちら遊撃隊B1!攻撃を受けています!我々はどうすればっ!』
「何だと!?」
アスランは一瞬、息を呑んだ。まさか、敵援軍を挟撃する為の部隊が発見されたと言うのか。
「作戦を変更!各個に応戦、基地制圧を第一目的にする!…っ!」
カオスとアビスがセイバーに向かって一斉射撃を開始した。
避けきれないと判断したアスランはMSに変形し、シールドで防御する。
衝撃をやり過ごすと、来ると覚悟していた次の攻撃はなかった。
見れば、カオスとアビスはセイバーが怯んだその隙に、後方へと向かっている。
「…まさかっ!?」
敵の意図に気付いたアスランは、直ぐに通信回線を開く。間に合え、とそう願いながら。
「シンっ!補給中止だ!ニーラゴンゴ、敵が向かっている。ミラージュコロイド解除、対MS戦闘用意!」
急発進によるGの負荷を感じながら、アスランは母艦へと向かった。
しかし、叫ぶような声が聞こえてくる。
『こちら、ニーラゴンゴ!駄目だっ、アビスがもう…!』
通信の最後には衝撃に驚く人の声が聞こえた。
「クソッ!」
舌打ちして母艦に張り付くアビスをロックした。
上空では、カオスを相手にしているインパルスが見えるが、元々パワーが尽きかけているのだ。
そう長くは持たない。
ビームサーベルで薙ぎ払う。
アビスは変形すると、海の中へと逃げた。
「被害状況は!?」
『右舷メインエンジン損傷!火災発生!出力、75%に低下!』
「………っ」
アスランは渋面になった。
母艦がやられ、遊撃隊も抑えられている。
そして更にそこへ、敵の増援が向かってくるのだ。
これでは、もう。
「………全機に通達」
アスランはアビスの猛攻を避けながら、苦々しく呟いた。
「撤退する。各隊、速やかに離脱しろ」
驚いたように、それぞれの部隊から「了解」の声が返ってきた。
作品名:Weird sisters story 作家名:ハゼロ