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比翼連理 〜 緋天滄溟 〜

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19. 破壊



 ―――まことおまえたちは酔狂な神だな。

 そう笑んだのは冥府の王。
 そして、再び同じ言葉を耳にした。
 その言葉を口にしたのは今死の淵に佇む、いや、死の腕に抱かれた人間……シャカだった。

  死を恐れもしない人間などいない。
  滅びることを恐れぬ神などいない。

 どちらをも超越し凌駕しているとでもいうのだろうか……と痩身を見た。
 結局、この者は僅かにでも可能性というものがあるのならば、それを求め続けていくような者なのだろうとタナトスは考えに至った。
 その手にかかる重量は羽根のように軽い。だが、ひとつの星のように重い命のようでもあった。その重みをひしひしと感じながら両腕で受け止め、神々の王と嘯く玉座を目指し、神道をゆっくりと歩み進んだ。
 我ながら無謀な賭けに乗っていると思う。だが、充分に楽しむことはできるだろうとタナトスの気持ちはいつになく、昂ぶっていく。
「この扉を開けたら、もう後戻りはできぬが。アテナを待つ必要はなかったのか?」
「―――間に合わぬほうがいい」
「腐っても聖闘士か」
「……」
 気分を害したのか、それとも反論する気力も失せたのか沈黙するシャカにフンと鼻で笑ったタナトスは扉を押し開くと、ちきりと右手の指輪が締め付けた。指輪の囁きに耳を傾けると呟いた。「おまえの因縁もようやく決着がつくのだな……」と。