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のび太のBIOHAZARD『ENDLESS FEAR』

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AREA13『疑念』


のび太達が上に向かおうとしていた頃、出木杉は、ステーシャと話していた。
「…出木杉か。今まで何処にいたんだ?」
 ステーシャがそう訊くと、出木杉は応える。
「地下の休憩室でちょっとね。僕一人いなくたって、作戦には特に影響しないんだろ?」
 出木杉がそう言うと、ステーシャは言う。
「確かにそうだが、あんまり単独行動が多いと怪しまれるぞ」
 ステーシャがそう言うと、出木杉は、
「今度から気をつけるよ」
 と言った。そして、続けて言う。
「…そういえば、『V-ウィルスA.M.』を投与するのは、誰にしたんだい?」
 出木杉がそう言うと、ステーシャは応える。
「ああ、それは、『相葉真理奈』という奴にした。既に睡眠薬で眠らせてある。後は投与するだけだ」
 ステーシャがそう言うと、出木杉が言う。
「……彼女は戦闘経験があまりないようだけど、役に立つのかい?」
 出木杉がそう訊くと、ステーシャは応える。
「狩谷の話だと、『センシティブ』を撃破したらしい」
 ステーシャがそう言うと、出木杉が言う。
「どうやら彼女も成長したようだね。あの時は、震えてばかりの只の小学生だったのにね。これも彼の力ってところかな?」
 出木杉がそう言うと、ステーシャが言う。
「…そういえばお前は『ススキヶ原T-ウィルス散布及びB.C.W.戦闘データ算出実験』に参加していたんだよな。あいつらと交戦したのか?」
 ステーシャが出木杉にそう尋ねると、出木杉は応える。
「……交戦を始める直前に、ブラックタイガーに突き落とされたから、実際に戦ってはいないな」
 出木杉はそう言った。すると、昇降口の扉が開き、岡田が入ってきた。
「…どうやら作戦は成功したようだな」
 岡田は、その体つきに似合った野太い声でそう言った。するとステーシャは言う。
「まぁな。邪魔されそうになったが、出木杉がフォローしてくれたから、なんとかなった」
 ステーシャがそう言うと、岡田が言う。
「…いつも非協力的な出木杉がこの作戦に協力するとはな」
 岡田がそう言うと、出木杉は言う。
「僕だって一応第三特殊部隊の隊員だからね。手伝う事だってあるさ」
 出木杉がそう言うと、岡田が言う。
「……まぁいい。俺の役目はここまでだ。俺は上に戻る。後は適当にやっとけ」
 岡田がそう言うと、ステーシャが岡田に訊く。
「もう上に行くのかい?」
 ステーシャがそう言うと、岡田は応える。
「…個人的にこういう作戦は嫌いなんだよ。敵と直接対峙して、己の力のみで相手を捩じ伏せるのが好きなんでな」
 岡田がそう言うと、ステーシャが岡田に言う。
「そりゃ凄い。日本の武士の精神だな」
 ステーシャがそう言うと、岡田が言う。
「……別にそういうつもりじゃないけどな。まぁいい、俺は上がるぜ」
 岡田はそう言うと、『自動昇降機』と書かれた扉に向かい、その扉の奥に入った。やがて、エレベーターが昇る音がした。すると、ステーシャが出木杉に言う。
「出木杉、『V-ウィルス[A.M.]』の投与はお前に任せる」
 ステーシャはそう言いながら、出木杉に、『V-ウィルス[A.M.]』と書かれたラベルが貼られたカプセルを渡した。すると出木杉は、そのカプセルを受け取りながら言う。
「僕がやるのか?」
 出木杉がそう言うと、ステーシャは応える。
「ああ、別に大丈夫だろう。お前も第三特殊部隊の一員だからな」
 ステーシャがそう言うと、出木杉は言う。
「それは有り難いね。安心してよ、仕事は完璧にこなすからさ」
 出木杉がそう言うと、ステーシャは言う。
「じゃ、俺も事務作業があるから、上に行ってるぜ」
 ステーシャはそう言うと、エレベーターを使い、上に向かった。すると、出木杉は、真理奈がいる部屋に入った。その部屋は、ベッドとデスクと薬品棚の様な物がある部屋であり、真理奈はベッドに寝かされていた。出木杉は徐に足を進め、真理奈の前まで来た時に、部屋全体を見回した。
(……監視カメラに盗聴器が仕掛けられているな。大方、僕と真理奈を接触させ、隊の中で怪しい動きをしている僕の実態を暴こうとしているんだろう。凡人は凡人なりに考えているようだね。)
 出木杉はそう考えると、『V-ウィルス[A.M.]』のカプセルを、デスクの上にある注射器にセットした。そして、出木杉は考える。
(…このまま、策を講じると、瞬く間に僕の実態がばれて、特殊精鋭部隊に奇襲されるだろう。まぁ、あの程度の凡人共は簡単に倒せるけど、それでは意味がない。大事なのは、のび太君と、その仲間があいつらと戦い、勝つ事。その為には、真理奈の協力が必要不可欠になるだろう。まぁ、僕の腕の見せ所かな。)
 すると出木杉は、真理奈にウィルスを投与した。
(鍵は彼女、真理奈にあるという事かな。)
 投与を終えた出木杉は注射器を捨て、その部屋のデスクの椅子に腰掛け、デスクの上にある、何かのメモ用紙に文字を書いていった。






その頃、19階の会議室には第三特殊部隊が集まっていた。そして、岡田がステーシャに尋ねた。
「ステーシャ、投与は済んだのか?」
 岡田のその言葉を聴いたステーシャは応える。
「いや、それは出木杉に任せた」
 ステーシャがそう言うと、岡田が言う。
「そうか、確かあの部屋には監視カメラと盗聴器が仕掛けられていた筈だな。出木杉に不審な動きはあったか?」
 岡田がそう言うと、ステーシャは応える。
「さっき見たけど、投与は間違いなく行ったみたいだな。不審な動きは特に見当たらなかった。強いて言えば、何か書いていたな。あの監視カメラにズーム機能は無いから、何を書いているかは解らなかった」
 ステーシャのその言葉を聴いた岡田は言う。
「出木杉の事だから、小難しい数式か何かでも書いているんだろ。真理奈に『V-ウィルス[A.M.]』さえ投与出来れば問題はない」
 岡田がそう言うと、霧生が言う。
「ならば後は頃合いを見て作動させるだけか」
 霧生がそう言うと、ナーシャが言う。
「頃合いって大体いつ頃?」
 ナーシャがそう尋ねると、岡田が応える。
「のび太をエレベーターシャフトから突き落とした直後だな。そのタイミングが一番いい」
 岡田がそう言うと、ステーシャが言う。
「じゃあ、後はあいつ等が来るのを待つだけだな」
 ステーシャがそう言うと、後は誰も話をしなかった。






その頃、のび太達は、10階にある第二エレベーターの前に立っていた。
「このエレベーターで上の階に行ける筈よ。早く行きましょう」
 玲がそう言うと、玲はエレベーターを起動した。暫くして、扉が開いた。すると、9人全員はエレベーターに乗り込んだ。
「真理奈ちゃんは助け出せるんでしょうか?」
 ふと、織恵がそう呟いた。すると、巌が言う。
「恐らく、無事とは言えないが殺されてはいないだろう。どんな目的で連れ去ったかは解らないがな」
 巌がそう言うと、のび太も織恵に言う。
「…大丈夫ですよ。もっと上の階に行けばきっと助けられる筈です」
 のび太がそう言うと、織恵は言う。
「……そうよね。こんな所で挫けてる訳にはいかないよね」