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殺生丸さまの嫁とり物語 その1

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一.ファースト・キス
 
「殺生丸。また、りんに贈るものを探しているのか?」

殺生丸の母が、宝物庫の品を物色している殺生丸に声をかけてきた。この屋敷の宝物庫にあるものはお前のものでもあるのだから好きに使っていいぞと殺生丸に言ったのは自分だが、殺生丸は毎日のように宝物庫から品を持ち出してはりんのもとへ届けているらしい。

(意外と尽くすやつだったのじゃな、殺生丸・・・・)

母は息子の意外な一面を知って、楽しくなった。

「・・・りんは、もう16になる。簪など挿したほうがよかろう」
殺生丸は無表情のまま、そんな母に答えた。
母はそんな殺生丸を内心おおいに笑いながら、宝物庫の中に入ってきた。
「りんの黒髪は見事だからのう。この翡翠の簪が似合うじゃろう。これを持て」
そう言って母は息子に美しい緑色の簪を渡した。殺生丸はその簪をしげしげとみていたが、やがて目じりが下がった。おそらく、りんがこの簪を挿している姿を想像したのだろう。

(案外、わかりやすいやつじゃ・・・)

母は内心おかしくてたまらない。

「簪にあう、この緑の帯も持っていったらどうじゃ。ちと帯幅が細いのじゃが、りんの細い腰にはよく合うだろう」
殺生丸は帯を受け取って品定めするように見ていたが、再び目じりを下げた。おそらく、また、りんがこの帯をしている姿を想像しているのだろう。
「では、もらっていく」
相変わらず抑揚のない声のまま息子は言葉を返す。
母はもっと殺生丸をからかいたくなった。

「殺生丸、この白繻子の反物も持っていったらどうじゃ?」
「これを?」
「そうじゃ。人間の世界では娘は男のもとへ嫁ぐときに、白い着物を着ると聞くぞ。りんならば、この白繻子がよく映えるじゃろう。着物に仕立てるようにいえばよい」
「・・・・・」
殺生丸は無言のままだったが、その瞳の奥に動揺が走るのを母は見逃さなかった。
「どうした?殺生丸。まさか、お前、りんを普段着のまま、嫁にとるつもりではなかろうな?きちんと仕度を整えてやるのが、男のつとめぞ。特に人間の娘というのは、嫁入り衣装を気にすると聞くぞ。それとも、りんが嫁に来ることを承知せんのか?」
「・・・・・くだらん」
そう言いながらも、その白繻子の反物を受け取って、殺生丸は宝物庫を出ていった。後ろ姿に照れくささがすけてみえるようで、母はおかしくてたまらなかった。

「あいつ、母にずばりといわれて、動揺しとる。ほほほ。面白いのう。りんのこととなると、あの愛想のない息子がとたんにかわいく見えるから不思議なものじゃ」

りんが嫁にきたら、もっと息子をからかえそうだ。毎日、楽しませてもらえるに違いない。母は、息子をいじりたおす日々を想像してほくそえんだ。



殺生丸は母から受け取ったりんへの贈り物を持って、夜空を飛んでいた。母の言葉が殺生丸の心にこだまする。

「人間の娘は嫁ぐときには白い着物を着ると聞くぞ」

(そうなのか。人の世界では、着物にそういう意味があるのか?)

16歳になったりんは、急に大人びてきた。すらりと背が伸び、その体はしなやかで、やわらかかった。相変わらず、幼子のように殺生丸のひざの上に座ったり、白い毛皮にまとわりついたりしたが、りんの甘い匂いに殺生丸は時々りんを腕の中に力一杯抱きしめたい衝動にかられた。

りんを自分のものにしてしまいたい。りんをすべて、自分の中に取りこんでしまいたいほど、殺生丸はりんを欲していた。

しかし、りんは自分のことをどう思っているのだろうか。好きだ、大好きだと、いつも自分に告げているのだから、りんとて、自分のことを好いてはいるだろう。しかし、自分がりんを思うように、りんは自分を思っているのだろうか。りんは自分のもとへ来たいと思うだろうか。自分を選ぶだろうか。りんがどちらでも選べるように、しばらくの間、里に置くことにした。りんが、自分の意志で、好きな道を選べるように。しかし・・・里で過ごした日々の後で、りんは自分を選ぶだろうか。妖怪である自分を、人間であるりんが選ぶだろうか。会うたびにりんは里での日々のことをそれは楽しそうに語るというのに。

自分は?自分はとうに選んでいる。決っている。あの冥道でりんを一度失ったときに。りんが自分にとってかけがえのない存在であることを悟っている。妖怪であろうと人間であろうと関係ない。りんはりんだ。殺生丸が選んだりんだ。

(私は・・・恐れているのか?りんに・・・選ばれないことを・・・拒絶されることを・・・)

殺生丸は、これまで経験したことのない感情に戸惑っていた。



いつの間にか、りんの住む里の上まで来ていた。いつも待ち合わせる丘の上の大樹の下に、りんの姿を認めて、殺生丸は下降する。

「殺生丸さま!」
りんが嬉しそうに駆け寄ってくる。
「りん」

最近、二人は夜逢うことにしていた。昼間はりんは楓やかごめの手伝いをしているので、夜のほうが殺生丸と時間を気にすることなく逢うことができる。だから、夜に逢いたい。そう、りんが望んだのだ。殺生丸としては、己の欲するときにいつでもりんに逢いたいのだが、りんの気持ちを重んじて、こうして日が暮れてから里へ来ることにしている。

「りん。これを使え」
殺生丸は懐から、簪を取り出し、りんに渡した。
「うわあ!きれいな簪!ぴかぴかしてる!」
りんは目をきらきらさせて、簪を見つめた。
「でも、殺生丸さま、こんなきれいな簪、りんにはもったいないような・・・」
「馬鹿なことを・・・」
殺生丸はりんの手から簪をとりあげ、自らりんの黒髪にさしてやった。母の言ったとおり、りんの黒髪に、翡翠の簪はよく映える。殺生丸はりんの顔をじっとみつめた。
「殺生丸さま・・・ありがとう」
はにかむようにりんが笑う。
「・・・・この帯も使え」
今度は白い毛皮の中から、緑の帯を取り出してりんに渡した。
「この帯も?殺生丸さま、いつも、ありがとう。りん、殺生丸さまにもらうばかりで・・・」
「気にするな」
「でも・・・」
「りん。よく似合う」そう言って殺生丸はりんの頬に手を添えた。
「あ・・・」
りんの頬が赤く染まったのが、月明かりの下でもわかった。

(う・・・)

りんの甘い匂いが強烈に匂ってきた。

(この匂い・・・)

殺生丸はりんの肩に手を置いた。りんが殺生丸を見上げる。殺生丸がりんを抱き寄せようと腕に力をいれようとしたとき、りんの方から殺生丸の胸に飛び込んできた。そして精一杯背伸びをして、りんは殺生丸の顔に自分の顔を近づけ、唇同士を合わせた。そして、すぐ離れる。

(!!)

殺生丸は驚きに目を見開いた。

唇を離した後、りんは恥ずかしそうに殺生丸を見つめていた。

「りん・・・・」
「あの・・・殺生丸さまにありがとうって伝えたくて・・・嬉しいって伝えたくて・・・・殺生丸さま、怒った?」
「怒ってなどいない」
ただ、顔を真っ赤にしているりんが、愛しい。
「だが・・・・」
「え?」
「このようなことは、私以外の者にはするな」
「あ・・・当たり前です」