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隣のバンゴハン 【俺ティ】

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食事を終え、



空になった皿を重ねはじめた綾部に気づいた真冬は直ぐ様、手伝いの声を上げた。

「こっち、私が運ぶよ」
「お。悪いな」
「かまへんでー」
「……かめへん、やろ?」
「…………」
「分からんくせに、無理に喋るな」
「すみません」

カチャ、という音を立てながらシンク代へと運び、下せばご馳走になったお礼に洗おうか、と申し出たものの予想はしていたが案の定。

「いらん。残っとる汚れ洗うんは二度手間やん」
「………そうすね…」

素気無く却下されたため、もう帰ろうかと肩を下げつつ踵を返したところ唐突に名を呼ばれ、振り返ってみれば洗剤をスポンンジに落としていた綾部が、振り返る事ないまま口早に用件を言い放った。

「かっ、帰りっ!近くまで送ったったるからちょお居間で待っとれ」

云うなり、目に見えぬスピード(大げさな表現では無い)で食器を洗い始めた綾部の背中に、まん丸にした目を素早く瞬かせてみたけれど・・・・最後にはその顔を盛大に崩し、嬉しさいっぱいの笑みを、浮かべて見せた。
背中しか見せない彼には届かないけれど。
水の音で届かないだろうその背に、小さな声でもう一つ。

「…ほんと、凄いよね。あやべんてっ」

元々届けるつもりだった方の、本音を。
こんなにも、誰かを喜ばせることが出来る彼は本当に、凄い。
今度は声を大きくしてちゃんと届けようか、それとも。
働き者の背中を眺めながら思案しだした時、その背にまたも掛かる、二つの重み。

「ちょお、ええですかね?」
「お話、あるんですわ。お時間、頂けますぅ?」

「……うん。良いけどね。いいけどさ。………まるでどこぞのヤンキーみたいですよ?お二人さん…」

両肩にそれぞれ梅次と一華の手が乗せられ、顎をしゃくりあっちへ行こうぜと促す彼らに真冬は頬を引き攣らせる。しかし、云ってみたもののヤンキーは私じゃね?と内心自ら突っ込みを入れてみたり。梅次も同じことを思っていたのか、胡乱気な瞳を送ってくるのに今度は口端を引き攣らせた。
そのままズルズルと引きずられるようにして廊下へと連れ出されると、予想はしていたのだが、やはり。

「まどろこしいの嫌いなんで直球勝負、で行かせて貰いますけどね」

―― 兄ちゃんの事、どう思っとるんですか?

「…………」

来るとは思ってたんだ。
いつか、来るんじゃないかと思ってたんだ。
思ってたけどね、確かに直球で、って宣言されましたけれどね。
廊下の壁に背をピタリと張り付け、真冬は二人を見返した。
何処かに逃げ道は無いかと探してみたものの、彼らの目は酷く真剣で。逃げ道を得られないと悟った真冬は潔く。

「ハァ…どうって……と、友だ…ちは否定されたからぁ」
「否定されたんすか」
「だっ、だって!友達宣言したら『小学生か!』って怒鳴られたんだもんっ!」

すかさず突っ込んだ梅次の言葉で新しい傷が生まれた真冬は訴えるような表情でその時云われた言葉を繰り返してみたが、これがまた傷に塩を塗る発言となったようで更に、肩を落とす羽目となった。
床に手を付き項垂れる彼女に、少しだけ哀れに思ったらしい梅次がその肩に優しい動きでトン、と手を置いてくれたが救いにはならなかった。最後は自棄になって、「仕方ないから『知り合い』にまで格下げしたのに…っ!そしたら『知り合いレベルで口出しすんなっ!』って怒鳴られるし…っ!」と、当時の会話を全部ぶちまけ愚痴る始末。これは手に負えないかもしれないと一歩分、距離を取った梅次に対して、一連の遣り取りを無言で見ていた一華がここで少し、動きを見せた。
僅かばかり、瞳を細めたのだ。
その後、変わらず落ち込んでいる真冬の真ん前に移動し、しゃがみこむと。

「黒崎さん」

間近に、真冬の顔を覗き込み。
戸惑う真冬へと、にっこりとした笑みを。

「え?…え?」

この突然の行動に、当然ながら真冬は戸惑いを隠せないでいるが、一華は気にもせずニコニコと笑みを貼り付け続け。

「やっかましい兄ですけどね、それでもうちらの大切な兄やから」
「へ、?や、やかまし…ぅえ?」
「兄を、よろしくお願いしますね」
「え、あ…は、い?あれ?え?」

さらっと言って。
すくっと立ち上がると呆気にとられた梅次と理解の追いつかない真冬を残して居間へと戻って行ってしまった。残された二人は消えた入口をじ、ッと見つめていたがややして互い、視線を合わせ。

「……今のは、…つまり?」
「いやぁ…俺にも、さっぱり…えぇ?」

さっぱり分からないけれど、あの言い方ではつまり、そういう事になるのではないか?
導き出した答えに納得がいかず首を捻る。
夕飯前は同じ意見を主張していた姉が、いつなにがあってそんな結論に至ったのか。
戸惑い二人、不安げな視線を交わすがしかし、彼女がそう言うならこれ以上自身がどうのと言った所でしょうもないだろう。そう気づいた梅次は簡単に、前言を翻し。

「ほな俺からも。兄ちゃんを頼みます」
「は、…はぁ…ぅえぇ?」

言うだけ言って、姉同様スタコラと居間へ戻ってゆく姿に真冬一人、唖然。
ここから、どう動けばいいのだろう。
宜しくも、頼みますも何も、だから結局なにをどうしろと?
原因不明の頭痛にまで襲われ、思わず唸り声を上げた頃。

「……自分、こないなところで何しとんねん」
「…………私が聞きたいよ……」

呆れた様子の綾部の声が。
対して、返した真冬の言葉は心の奥深くから吐き出したもの。
全く、本当に。
疲労に瞳を移ろわせだす真冬に、怪訝そうな色を覗かせた綾部だったがしかし、深く追求する事はせずただ、帰宅を促す声だけを彼女へと送った。

「したら、送ったるから準備せえ」