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IS  バニシングトルーパー 003-004

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stage-3 練習試合




 「いや、何とかしてくれるって信じてたけど、まさか昨日の今日で何とかなったとは思わなかったぜ」
 翌日の放課後の第二アリーナのグラウンドに立っている一夏は、一機のISを見上げて、驚きの言葉を口にした。
 IS学園の訓練用量産機・打鉄であった。
 「今日を予約した先輩にプレゼント持参で相談したら、快諾してくれた」
 「買収かよ!」
 淡々と真相を語ったクリスに、一夏がツッコミを入れた。
 「お前のためだろう。時間がない、早く始めるぞ」
 「おっ、おお」
 クリスと一夏は既にISスーツに着替えている。二人ともに青いISスーツだが、クリスの方は右腕にだけ長いクローブを着用していた。
 「篠ノ之の分も確保したかったのだが、時間がなくてな。すまん」
 「いえ、今は私より一夏を」
 「そうか、じゃ観客席に行ってくれ」
 「わかった」
 さすがISなしでアリーナに居るのは少々危ないと思い、クリスは箒をシールドバリアで守られている観客席へ行くように指示した。
 観客席へ行く箒の背中を見て、一夏は思わずクリスに聞いてきた。
 「箒って、何かクリスの言う事に素直だな。俺にはいつも仏頂面なのに」
 「そうか?確かに愛想が良い方ではないが、基本的には素直なやつだと思うが」
 「お前にはな。俺が相手だと直ぐに手が出るんだぜ」
 「それだけ親しいだということだ。幼馴染だろう」
 「いや、そんなバイオレンスな親しみは遠慮しておきたいぜ」
 「……無駄話はココまでだ。時間がない、装着しろ。一夏」
 嫌そうな顔で愚痴を零している一夏に、クリスが打鉄を指して一夏を催促した。
 「わかったよ」
 真剣なクリスを見て、一夏が直ぐに指示通り装着位置に座り、待機状態の打鉄に身を預かった。
 「よっし」
 瞬間に、打鉄の各部が一夏の体を包み込み、そして同時に大量の情報が一夏の脳へ流し込む。
 「おおお、何か数字が一杯映っているぞ」
 「今の起動状態とお前のバイタルサインの情報だ、大丈夫と思うが、一応チェックしておけ」
 「わかった」
 「今のお前はISと一体化した状態にある。振り向かなくても、後ろが見えるはずだ」
 「ああ、本当だ、観客席にいる箒も見えるぜ」
 「これでお前のISが完全に起動したな。次は俺だ」
 一夏の起動を見届けて、クリスは自分のISを起動しようと、胸元にぶらさげているドッグタグを摘み上げて、意識を集中させる。
 (来い、凶鳥の眷属!)
 一瞬、ドッグタグから光の粒子が噴出し、クリスの体を包んでいく。そして、一秒もかからない内に、コバルトブルーとミッドナイトブルーのツートンカラーの装甲が、クリスの身に纏った。
 洗練られたシンプルな直面構成の手足部装甲、「EX」の大字と社名を書かれた肩部装甲、八枚の羽根状パーツを持つバックパック、そして完全に目を隠したゴーグル状バイザー。それらが、今クリスが身を預かっているISを構成している。
 「クレマンくんって、やっぱり専用機持ちだったのか!」
 「キャ―――素敵~!」
 「織斑くんもこっち向いて~!」
 観客席から女子達の二人への呼び声を聞こえた。今日は男子二人がISを使って練習するのをクラスの女子達に知られて、是非見学したと言われたが、今の観客席はクラスの女子達以外に、別のクラスの女子、さらに先輩達も座っていた。
 「へえ、随分と華奢な機体だな」
 クリスのISを見て、一夏が感想を口にした。
 今のクリスが使っているISは、ヒュッケバインMK-IとMK-IIのパーツを流用したヒュッケバイン・タイプEX、通称エクスバインと呼ばれる機体。未だにロールアウトしていないヒュッケバインMK-IIIの代わりに、AMパーツと呼ばれる追加装備をテストするために作られたが、今はクリスの専用ISとしてこの学園に持ちこまれている。
 一般のISよりかなりスマートなシルエットで軽量化を図られ、背部のバックパックにテスラドライブと呼ばれる重力制御翼を八枚も装備しており、さらに多彩の武器を収納っているため、機動性と火力を両立したシンプルな機体としてまとまっている。
 「にしても、そのゴーグルとは一体……」
 「大人の事情だ、聞くな」
 「わっ、わかったよ」

 そうして、二人の装着が終わったところ、クリスは一夏に基本を教え始めた。
 「ISの操縦に一番の基本はイメージだ。イメージが上手くできればIS側がこちらの思考を忠実に反映してくれる」
 「なるほど」
 「とりあえず、お前は空を飛ぶイメージを始めろ」
 「おお」
 目を瞑って眉を寄せる一夏がイメージを始めるが、打鉄がちっとも動かない。数十秒を経ってやっと半メートルくらい浮かべたと思ったら、酔っ払ったようにふら付いて、最後は壁に手をついたまま移動するという、無様な状態になった。 
 「やれやれ、つくづく初心者だな」
 流石に見るに堪えないと思ったクリスは、壁に背を預かっている一夏の手を引いて、自分のISを上昇させる。
 「いいか、この上昇していく感覚を覚えろ」
 クリスに手を引かれ、一夏は緩々とアリーナの空へ飛び立つ。
 「きゃ――――!!」
 「手が、手が~~!!」
 「ご、ご馳走様でした!!」
 男子二人が手を繋がっているのを見て、観客席の女子からは全学園でも聞こえそうな黄色の歓声が上がった。一部女子はディッシュで鼻血を拭きながら、「カメラを持って来ればよかった!!」と嘆き喚いた。
 「おお、本当に飛べるぞ!」
 「言ったろ、イメージを明確に持て。でなければISに反映されない」
 少し手を引いて飛んでいたら、一夏は直ぐにコツを掴めて、一人で飛び始めた。
 「うむ。悟性はいいな」
 一夏が飛ぶのを見て、クリスが感心したように褒めた。
 「打鉄が接近戦主体なら、いかに敵を自分の間合いに入れるのが課題となる。空中機動は重要だぞ」
 「わかった」
 「んじゃ、時間もないことだし、さっさと戦闘の要領を教えておく。ブレードを展開し ろ」
 「おお」
 クリスに指示され、一夏は打鉄のブレードを呼び出して手に取った。
 それに対して、クリスはエクスバインの肘についてるパーツを取り外して、十字形に展開して手に取った。
 「その武器は?」
 「ファングスラッシャーだ。ブーメランのように使うものだが、接近戦にも一応カッターとして使える」
 「へえ~」
 「では、かかって来い、一夏!」
 「はっ!」
 日本刀の形をしているブレードで、一夏がクリスへ切りかかる。が、クリスに届くことなく、ファングスラッシャーによって防げられた。 
 「なんの!」
 ブレードを再び振り上げて、何回も違う方向から切りかかる一夏だが、悉くクリスに捌かれた。
 「真っ直ぐの太刀筋だな、生身でISを倒したあのおっさんを思い出すぜ」
 一夏の攻撃を捌きながら、クリスは以前ドイツ軍との演習で会った、示現流の剣士を思い出す。
 「だが一夏」
 「ん?」
 攻撃が一向に当ることなく、少々焦った一夏は、言葉を語る余裕がなかった。
 「これを剣道の試合と思ったら、大間違いだぞ」
 ファングスラッシャーで一夏のブレードを横へ捌いて脇を晒させて、
 「ふっ!」
 クリスはそこに回転キックの一撃を入れた。