二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

IS  バニシングトルーパー 003-004

INDEX|2ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

 「くぁ!!」
 かなり重い一撃で、一夏はバランスを崩れた。この機会を逃すことなく、クリスは銃器を呼び出した。
 「隙だらけになったぞ」
 左手で握ったフォトンライフルSで一夏の胴体を狙う。
 パンッ!!
 遠慮することなく、クリスがトリガーを引いた。銃声が響いたと同時に、一夏の体が大きく揺らいだ。
 「一夏っ!」
 観客席にいる箒が、心配そうな声を上げて席から立ち上がった。周囲にいる一年の女子達も銃声を境に雑談をやめ、緊張した顔持ちで男子二人を見つめる。
 実際、ISにはエネルギーシールドというものがあって、それによって操縦者の命が危険に晒すことはないから、銃撃の一発でどうにかなるわけがない。
 だが頭の中で分かっていても、ISの稼動経験が少ない新入生達にとって、銃撃されること自体がかなりの衝撃かもしれない。
 「ふんっ」
 一夏を撃ったクリスは、銃を降ろさないまま、しゃがんだ一夏を数秒間見つめて、そして嬉しそうに笑った。
 「初心者にしては、上出来だな」
 「……そりゃどうも」
 一夏もゆっくりと体勢を立て直して、手に握ったブレードを降ろした。
 ブレードの刀身に、一つ大きな焼き跡があった。
 
 「いや、咄嗟にやったものだから、殆ど賭けだったんだ」
 「ISを使った以上、これ位はできて当然だぞ」
 「手厳しいな」
 クリスの蹴りでバランスを崩れた一夏は、咄嗟にブレードの刀身を脇の位置に移動して、クリスの銃撃を刀身で受け止めた。
 「ふぅ~」
 一夏の無事が分かって、箒は胸を撫で下ろして、再び席に座ったが。周囲の女子生徒がまだ騒ぎ始めた。
 
 「い、今のクレマンくん、クールで素敵~!」
 「ええ、あの織斑君を苛める冷たい視線、堪らないよね!」
 「今夜のおかず、決めたわ!」

 「バイザーなのに視線が見えるのかよ」
 「何か言った?一夏」
 「いや、独り言だ」 
 「そうか。とにかく、ISの視界はお前の視界だから、どんな姿勢でも、相手の動きには対応くらいができるはずだ」 
 「覚えておくよ」
 「それでいい。次は……うん?」
 一夏に次を教えようとした矢先に、アリーナに入ってきた一機のISがクリスの視界に映った。
 入ってきた青いISは、自分のクラスメイトであるセシリア・オルコットが装着したものだった。

 「あらあら、基本から教えてますの?そんなで来週にはまとも戦えるのかしら?」
 クリスと一夏の存在を気付いて、セシリアの方から近づいて、話しをかけた。
 「まあ、最善を尽くすつもりだ」
 「クスクス、無駄な足掻きですわよ。あなたはともかく、そっちの織斑くんが使っているのは量産機ではありませんか」
 「…いい機体だよ。打鉄は」
 「ご冗談を。量産機ですわよ?それも訓練用、刀一本しかありませんし。私を前にして、万が一にも勝ち目はありませんわ」
 「そうとは限らないぞ。ISの世界において、勝敗を決めるのはISの性能だけではない」
セシリアのセリフに気が障ったのか、クリスの声のトーンは明らかに下げてきた。それに気付いた一夏がクリスの顔を覗いた。
 (何か不機嫌そう!?)
 「何をおしゃいますか、あなただって、高性能の実験機を使っているではありませんか。量産機を使うなら、代表候補生である私の専用機とでは勝負になりませんもの。さすがに私も気が進みませんから、ここで織斑くんが私に自分の非を認めて謝れば、見逃して差し上げてもよろしくてよ」
 クリスのイラつきを気付かずに、セシリアがご自慢の長い金髪を翻して、傲慢な言葉を一夏に放つが、今の一夏はセシリアの言葉より、クリスの方が気懸りだった。
 「……オルコットさん」
 低いトーンまま、強い力を篭った声で、クリスが言葉を発した。
 「なんですの?」
 「貴女は、量産機では専用機に勝てないと言ったな」
 「ええ、そう申しましたわ」
 「なら今から貴女に課外授業だ。ISの性能が勝負を別つ絶対差でないことを、織斑先生の代わりに貴女に教えて差し上げよう」
 「…どういう意味ですの?」
 「俺はこの量産機・打鉄で、貴女に練習試合を申し込む」

 「早く第二アリーナに行こう!男子生徒がイギリス代表候補生と練習試合をやるらしいよ」
 「えっ、どっちの男子生徒?」
 「ほら、あの銀髪の方の」
 「ああ、クリストフ・クレマンだったけ?なんで試合することになったの?」
 「さあ……でもとりあえず見に行こう」
 アリーナにいる女子生徒たちが言いふらしたのか、第二アリーナの観客席がどんどん埋められていく。
 「ったく、一週間後に試合があるだろうに、あの馬鹿ともが」
 「あわわわ、クラスメイト同士、喧嘩はやめさせないと」
 「先生…」
 観客席にいる箒が振り返ると、何時の間にか千冬と真耶が後ろの席に座っていた。

 「悪いな、一夏。元々はお前の練習が目的なのに」
 「気にするなよ。お前が取って来た機会だろう」
 グラウンドの隅に、既に打鉄から降りた一夏と、打鉄を装着しているクリスの姿が居た。
 「すまんが篠ノ之の所に行ってくれ。すぐに終わる」
 「おっ、お前も頑張れよ」
 「一夏」
 「ん?」
 踝を転じてグラウンドから出ようとする一夏を、クリスが呼び止めた。
 「……ISの性能差は確かに存在していて、其れを埋めるのは簡単じゃない。特にお前は経験が少ないから、苦戦するのは必至だろう」
 「……」
 「だから、この一戦はお前への手本でもある」
 クリスが真っ直ぐに一夏の目を見据える。
 「よく見ておけ、この戦い」

 「じゃ、行って来る」
 そう言って、クリスは打鉄と共にアリーナの空へ飛び立った。
 クリスが空へ飛んでいく姿を見て、一夏がクリスの言葉を思い返しながら、踵を返して出口へ向かった。

 アリーナの上空で、セシリアは既にご自慢のレーザーライフル「スターライトMK-III」を構えて待っていた。
 「量産機を使ってこのブルー・ティアーズに挑もうなんて、あなた冷静そうに見えて、実はお馬鹿さんだったのね」
 「御託はいい、さっさと始めよう。せっかく取って来たの使用時間です、無駄にはできん」
 「あらら、せっかちな殿方ですわね」
 「三分で片を付く」
 「…ふん!ならばお望み通り」
 セシリアがライフルを構えて、
 「三分間、たっぷり踊って頂きますわ!」
 言葉が終わるのと同時に、トリガーを引いた。
 「!!」
 間一髪のタイミングで、身を斜めにしてかわす。避けたビーム弾がグラウンドの地面に当たって、塵土が舞う。
 それを合図に、両者同時に動き出した。

 「射撃の精度がここまでとは」
  首撃をかわしたクリスが、直ぐに曲線移動でセシリアの攻撃をかわしながら距離を詰めようと接近するが、セシリアも其れがわかっていて、距離を取りながらレーザーライフルを連射する。
 「だが、それ故に読みやすい!!」
 セシリアを攻撃を悉く避けていくが、距離は一向に縮まない。結局観客が見えたのは、距離が保たれたまま、クリスが一方的に攻撃されている場面だった。

 「なるほど、打鉄で専用機に勝負をかける青臭い馬鹿だと思ったら、どうやらハースタル機関のテストパイロットの名は伊達じゃないらしい」