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IS  バニシングトルーパー 026

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stage-26 ギリギリアウトだよ



「チッ……安っぽい味ですわね」
 ノートPCの横においてあるコーヒーを一口啜って味への不満をもらしつつ、赤髪の白衣女性は自分の視線をPCのディスプレイに戻す。
 IS学園に来てもう数日、来客用部屋の住み心地は中々だが、部屋に置いてあるコーヒーは安っぽいインスタントのものしかないのが玉に瑕だ。しかしコーヒーを飲むためにわざわざ部屋を出るのも面倒くさい。

 (いや、そんなことより今は……)
 一昨日の模擬戦について、MK-IIIの稼動データ解析はまだ完全に終わってないが、中々満足の行く結果を示している。二日目の操作でよくあそこまでやれたものだ。
 シャルル・デュノア。大人しい顔の裏に秘めているあの大胆な操作センス、このまま放っておくのが惜しい。何とかして手に入れたいものだ。
 クリストフ・クレマン。ヴィレッタの操作テストを見学させてもらうために、よく研究者達に雑用を手伝いをしてた無口なガキが、今じゃ専属テストパイロット。随分と出世したものだ。
 (にしてもエクスバインボクサー。あの男が設計した機体ね……あんな由来不明な技術を大量に使うなど、正気を疑うわ)

 カーク・ハミル博士と仕事での意見衝突も、二人の離婚原因の一端であった。カーク博士は強力な技術であれば、残骸から解析できたオーバーテクノロジーだろうと構わずに使うが、マリオン博士は信頼性の高くて既に完成した技術のみを使うことに拘っている。

 デスクトップにある時計で時間を確認すると、生徒達の授業がそろそろ終わる頃だと気付く。
 千冬にシャルル・デュノアを放課後に此処へ来させるように頼んであった。もう直ぐここに来るだろう。
 手元にある紙束を集めて、ホッチキスで留めた後マリオン博士はページを捲って内容に欠けがないか確認する。

 丁度確認し終わった時、ドアをノックする音がした。顔を上げてマリオン先生は返事をした。
 「開いてるわ、入りなさい」
 「はい」
 「こんにちわ」

 開いたドアから現れたのは男子制服の纏っている生徒二人、クリスとシャルロットだった。
 「何故あなたまで? 私はシャルル・デュノアしか呼んでなくてよ?」
 「細かいことは気にしないで下さいよ」
 そう言いながら部屋の中に入ってきたクリスは手に持っているビニール袋を机に置いて、マリオン先生にわざとらしい笑みを見せる。
 ビニール袋に入っていたのは、学食から買ってきた熱いコーヒーとチョコケーキだった。

 「ふんっ、気が利くわね。こういう所があの男に似てなくて良かったわ」
 「マリオン先生ってツンデレですね」
 「ベアリング弾を口に詰むわよ」
 「……すみません」
 口でふざけながら、クリスはコーヒーとケーキを袋から出した後、勝手に椅子に腰をかけた。

 「あの、一昨日はすみません。大事な機体を傷つけて」
 クリスの隣席に座ったシャルロットが最初に口にしたのは、詫びの言葉だった。
 一昨日の模擬戦ではやはり強力な物理的打撃が多かったので、機体のエネルギーシールドを貫通したダメージは多少あった。
 それはエクスバインボクサーも同じ。もしろボクサーの方の損傷率がやや上まで行ってる。
 「構わなくてよ。そのための重装甲だもの。でも今日あなたを呼んだのは、そういう話をするためではないわ」
 「では、一体……?」
 「移籍の話なら、お断りしますよ」
 マリオン博士が口を開く前に、クリスが慌てて割り込んできた。
 「クリス……」
 隣でクリスを見上げているシャルロットの横顔は、微妙に嬉しそうに見えた。

 「……なぜあなたが返事をする」
 「いや、これはその……話し合ったの結果です」
 「話し合った? シャルル・デュノアの移籍はあなたと関係ないはずよ」
 「そうでもないですよ」
 「そう? でもどうでもいいわ。私が言いたいのは移籍の話しじゃない。さすがに別の国の代表候補生を攫っていけるほどの権限を持ってないから、別の方法を考えるわよ」
 「そ、そうですか……」
 別の方法とは、やや不穏な響きで危険を感じる。

 「これに目を通して頂戴」
 さっきチェックしてた厚い紙束を、マリオン博士はシャルロットへ差し出す。
 「これは何ですか?」
 受け取った紙束を捲りながら、シャルロットは質問する。隣のクリスも身を乗り出して、内容を覗き込む。

 「協力の返礼として、私が考えたラファール・リヴァイヴの強化プランよ。貴方ならきっとこれの良さが分かると思うわ」
 「これは……!」
 プランの詳細をチェックしたシャルロットは嬉しそうな声を上げた。しかしクリスは渋い顔になった。

 「左腕のパイルバンカーを更に大口径のリボルビング・バンカーに換装して、シールドと搭載武器の一部を削って、背部とスカートアーマーにそれぞれブースターとスタビライザーを増設して、バランサーも新型に換装する。おまけに、プラズマホーンを……」
 「ちょっと待って!」
 マリオン博士の解説が終わる前に、クリスからストップが掛かった。

 「あら、何かしら。作業の心配は要らないわ。MK-IIIとMK-IVの予備パーツを少し改修すれば直ぐに完成できる」
 「いやいやいや、そんな改造したら、まんまゲシュペンストMK-IIIみたいになるじゃないですか!」
 「全然違うわね。MK-IIIより装甲が軽いし、推進力だって及ばないわよ。その代わりに、機動性はMK-IIIより小回りが効く。これなら、あのドイツ製の高機動型ISとも互角にやれる……というのが私なりの結論よ」

 「嬉しいです……僕のためにこんな素敵なプランを……」
 クリスが阻止しょうとしているのにも関わらず、本人のシャルロットは乗る気満々のようだ。

 「喜んで貰えたみたいね」
 「ありがとうございます!! 大事に使います!!」
 「あああ、シャルルがマリオン先生の脳波に毒されていく……」
 まるで世界破滅の光景を目にしたように嘆きながら、クリスは力が体から抜けていくのを感じる。

 「後は貴方が書類にサインすれば、今日からパーツの細部改修を始め、今週中に仕上られる予定よ」
 「はい!! サインします!!」
 「ちょっと待て!! よく確認してからサインしないと!!」

 「それともう一つ。クリス」
 「……はい?」
 「パルチザン・ランチャーの試作品、オクスタン・ライフルを一丁持ってきたわ。あのセシリアって子に渡したい。これも協力への返礼よ。本当は機体の方にも改造を加えてやりたい所だが、さすがに時間ないし、イギリスのワンオフ機に手を出すわけにはいかないわ」
 「セシリアにですか……わかりました」
 一昨日の一戦でかなりショックを受けたみたいで、昨日から元気がない。何とか元気付けてやりたいものだ。
眉を顰めて、そんなことを考えてしまう。

 「しかし、俺には何もないんですか?」
 「ある訳ないでしょう」
 「ただ働きかよ!!」
 「とにかく話は以上よ。準備するから少し外で待ていて頂戴。まず機体の状態を確認する必要があるから、デュノアは私と一緒に来るように。クリスはあのセシリアって子を呼んで来て頂戴」
 「はい……」