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とある転生者の話(第二部)

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第十六話 最速最強お嬢様降臨!



side:シルバー

な…何をしてるんだあいつは!?
さっきまでの剣の舞がパァじゃないか!!
しかも交代先が草タイプのチコリータだと!?
「小娘!血迷うたか!?
ホーホーに草ポケモンなんぞ自殺行為じゃぞ!!」
「じーさん、それは勝ってから言いなね。
…まぁ…もうチェックメイトだけどね」
アユムは笑っている。
何か策があるのか?
「さぁ、じーさん。自分の無知を呪うといい。
お嬢!はっぱカッター!」
その言葉と共にチコリータの周りに現れる大量の…
……いや、大量だなんて言葉では言い表せない物量の木の葉が舞う。
「な、なんじゃこの量は!?」
さすがのジジイも戸惑っている。
ホーホーは為す統べなく木の葉の餌食になる。
葉が消えた時には、既にホーホーは倒れていた。
「し、信じられん…量も火力も桁違いじゃ…!」
そう言って倒れたホーホーを戻す。
「しかし、同じ草のポケモンにはどうかな?」
次のポケモンはマダツボミ…またお前なのか。
「ふぅん、はっぱカッター以外で倒されたい、と?」
「速さではこちらが上じゃ。
全て当てきる自信でもあるかのぉ?」
そう言い終わると、ジジイはマダツボミに言った。
「マダツボミ!あのポケモンの足を蔓のムチで捕まえてしまうのじゃ!」

しかし、蔓が出た瞬間、チコリータが消えた。
「いつから自分のが速いと錯覚した?」

勝負は一瞬にして決まった。

「な、何が起こったんだ!?」
オレは気づいたら叫んでいた。
「正解は後で。
…さて和尚さん、約束は守ってもらうよ」
「…そうじゃのぉ。
お嬢ちゃんのような気高い誇りを持つ子の連れじゃ。
成長段階なのじゃろう。
先ほどの発言を退こう。」
アユムは満足そうに頷く。
すると後ろから煩い奴がやって来た。
「っ!?シルバーと…女の子!?」
「…ヒビキか」
どうやらアイツはアユムを知らないらしい。
オレはアイツが嫌いだ。
バカみたいに真っ直ぐで…嫌だ。
「ふぅん…あの子がヒビキ君か……」
アユムは間接的に知ってたようだ。
「……行くぞ。早く答えが知りたい」
「せっかちだなぁ。挨拶は人の基本だよ?」

side:アユム
そんなにヒビキのこと嫌いなのかな?…いい子なんだけど。
ボクはヒビキの方を向いた。
「初めまして、君はヒビキ君で合ってるよね?」
「…君は?」
すごく警戒されてる…仕方ないか、シルバーと一緒にいるからね。
「ボクはアユム。君と同じウツギ博士…君の父上にポケモンを託されたトレーナーの一人だよ。」
「なんでそんな人がそいつといるんだ?
そいつが何をしたか、キミは分かっているんだろ?」
「知ってるし、理由も聞いてない。必要ないから。」
「な!?」
ヒビキは唖然としている。
「そいつは泥棒なんだ!盗まれたポケモン、ワニノコの為にも―」
「君にワニノコの気持ちの何がわかるの?」
「そんな泥棒に使われるのがいいはずがない!!」
あぁ、シルバーが嫌う理由、分かった。
…真っ直ぐすぎるんだ、彼は。
「…君にワニノコがそう言ったの?」
「はぁ?ポケモンの言葉なんかわからないよ。でも悪人に使われたら誰だって―」
「さっきから気になるんだけど、なんでシルバーが悪人なの?
彼が何をした?泥棒?なんの理由もなくしたとでも思ってるの?
どうせ理由だってろくに聞いてもないんだろ?だったら黙ってろよ。
ワニノコが可哀相だ?君がワニノコからそう聞いたとかならまだしも、そうでないなら君のしていることはシルバーに対しての名誉毀損、訴えて勝てるんだけど。だいだい―」
「アユム、こんな馬鹿は放っておけ!」
シルバーに止められた。
仕方ない、時間切れか。

side:シルバー

アユムがオレをかばう理由はわからない。
しかし、これ以上話させなくていいと思った。
アユムは言葉を続ける。
「…ヒビキ君、今日はボク達疲れてるし見逃すよ。
――次、同じような事を言ったら、容赦しない。」
…今までに見た事のない怒り。
なぜこんなにも他人の為に怒っているのだろうか。
オレはアユムを抱き寄せ、穴抜けの紐を使った。