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隣人部「学園都市?」 または、とある世界のはがない

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最後の作戦



男は、穴の底にうずくまって両手を地面に押し付けつつ
その呪文は、光が強くなると共に叫ぶような口調に変化していく。

「まずいにゃーやばいにゃー!
 あの男は呪詛で強引に"渦"を開けて、それを自らの身体で
 固定させようとしているぜよ!」
「そうか・・・じゃまた俺の出番・・・」
と上条がふらつく身体で穴の中に向かおうとして
ゴホッゴホッゴボ!!と血の混じった咳により身体を痙攣させる。
「ダメだ上条!そんな身体じゃあ無理だ!」
と俺は上条の身体を全力で押さえつけた。
「ふふふ、これはもう俺の出番しかないんだにゃ~・・・」
「お前もダメだ土御門。これ以上魔術使ったら死ぬって言ってたろうが。
 ・・・という事は、いよいよ俺の出番じゃね!?」
「「お前もダメだ羽瀬川/鷹やん!!」」
二人から肩を掴まれてハモられてしまったら意気消沈するしかねえ・・・

こうしているうちに穴の奥の光がどんどん強くなり、
しまいには光の中に輪のようなものが浮かんできた。
「!!・・・ついに"渦"が開いたぜよ!
 "渦"はただ単に開けるだけじゃすぐ塞がってしまうんだが
 あの男は自らの身体をテコにして、"渦"の中に潜む天使、
 AIMバーストを引きずり出そうとしてる。
 もし、一たび天使が引きずり出されたらもう"渦"を塞いでも意味がない。
 学園都市と東京が、第三次世界大戦時のロシアと同じ事態に見舞われるだろう」
「っマジか!?」
「土御門・・・最後の作戦だ。
 俺と二人でならどうにかして男を抑え込めるはずだ。
 羽瀬川、お前は俺達が奴を抑え込んでいる隙に霊蓋を"渦"に被せろ!
 もうこうなったら命がどうのとか言ってる場合じゃねえぜ。
 学園都市と東京に住む数千万人の命と生活が守られるんだったら
 俺達三人の命を賭けてもやるべきじゃねーのか!?」

「・・・おう!」「そうだな・・・!」



ドゴオオオオオオオオン!!!

突然、穴が大爆発したように光と爆風の奔流が押し寄せ
俺達はいきなり数メートル後方に吹き飛ばされた。
それと共に、穴の中からまばゆく光る巨人のような姿が浮かび上がった。
「っく!ついにやらかしたぜよ!」
「これが・・・AIMバースト、いや天使ってやつか!?」
「もの凄え圧力だ・・・!近づけねえぜ・・・」
「いやまだだ!まだ天使は穴の中から完全に姿を現したわけじゃない!
 今ならまだ間に合うんだぜよ!」
「よし土御門!俺がさっき言った作戦で行くぞ!俺が突っ込むから支援頼む!
 羽瀬川は俺の後に付いて来てくれ!」
「ああ・・・わかった」俺は腕の中にある霊蓋を強く抱きしめた。

「あ!小鷹先輩・・・!」足元で気絶していた筈の理科が起き上がっていた。
「り、理科!目が覚めてたのか?」
「せっ先輩・・・私も、行きます!」
「ダメだ!お前はまだ休んでいろ!」
「ならば・・・せめて、その懐の「体晶」を返して頂けませんか・・・?」
「な、何だって?」
「私も・・・後ろから支援します!
 あのAIMバーストを制御出来るのは、この私だけです!」
「・・・そうか。分った。
 じゃあ、これをお前に託すぞ・・・?」
俺は、懐から「体晶」の入ったカプセルを取り出し、理科に渡した。

「準備はいいな?」上条が前方を睨みつけた。
「「よし行くぞ!」」



「ーーー道ヲ創ル事。紙之紐ヲ用イ区切リノ穢レヲ清メン!」
土御門は懐から紙テープのようなものを取り出し、前方に投げ出した。
するとそのテープの方向に、まるでモーゼの伝説のような
穴からのエネルギーの奔流を切り裂く道が出来た。
俺達はすかさずその道を走り抜け、穴の中に突入する。
「ーーー折紙ヲ合セテ結界ノ守リヲ固メン!」
光る巨人が、無数の触手を閃かせて俺達に襲いかかってきたが
土御門が放つ式神によってことごとく弾かれる。
しかし、やはりというべきか、中心に行けば行く程圧力が強くなり
俺達はどれだけ身体を倒しても前に進みにくくなった。
後ろを振り返ると、土御門が全身血だらけで、ばたりと倒れるのが見えた。
「クソっ、土御門・・・!」
そして後方支援の無くなった俺達に容赦なく光る触手が襲いかかる。
「「ウァワワワワワー!」」

と、急に触手が縮こまり、俺達に襲いかかるのを止めた。
それだけではなく、光の圧力も心なしか弱くなっているようだ。
それに、どこからか声が聞こえる気がする。穴の中の絶叫呪文ではなく
よく聞くと、穴の外のほうからだった。
「・・・理科か!?」
もう一度後ろを振り返ると、穴の淵で倒れている土御門の隣に
理科が立っていて、手をこちらに差し向けて何かしゃべっているようだ。
そうだ、理科の能力は「心霊召還」すなわちAIM拡散力場群体との対話。
目覚めた理科が、その能力を最大限用いて、
この天使を抑えてくれようとしているのだ!

更に、何か別の声も聞こえる。それは数十人で唱和する歌のようだった。
いつの間にか、穴の周りにはシスター達数十人が取り囲んで
一斉に歌を唱和しているのだ。その中にはインデックスの姿も見える。
「・・・そういえばインデックスが言っていたな。
 歌の力は魔術を封じるのに最も有効なんだとか」
そうだ・・・俺達は単独で戦ってるわけじゃない。
ここに来た色々な人達に支えられて俺達は初めてマトモに戦えるんだ!
「よし、上条!行くぞ!」「おう!」



そして、ついに俺達はまばゆい光の中に、穴の中心に発生した"渦"と
その渦に取り付いたようになっている男の姿を発見した。
ついに男は、完成させた"渦"の中に身体を半分突っ込んで
自らを渦の構成部品と化させようとしているみたいだった。

「てめえ・・・
 もはやてめえには、何の容赦もしねえ。
 どんな事情があろうと、学園都市の、東京の
 数千万人の命を亡くしても良いって理由なんかどこにもねえんだよ!
 イルミナティだかグレムリンだか知らねえが
 そんな連中に操られて日本を壊滅させようなんて幻想は・・・
 この俺が、まとめてぶち壊す!」

上条は、右手の拳を固く握りしめ
全身で勢いをつけるようにして振り上げ、そして

ボゴッッッ!!!

"渦"を抱きかかえるような状態をとった男の顔に思い切り叩き付けた。
「グハァッッッ!!!」
男が身体をのけぞらせた隙に、上条が男の胴体に更なる一撃を加える。
そして、男の手と身体がついに"渦"から離れた瞬間、

「今だ羽瀬川!
 "渦"を霊蓋で塞げ!」
「ああ!」

俺は、霊蓋を両手に抱えて"渦"に突進した。
物凄い圧力が俺を押し返そうとする。
「ぐっっっ!」
それでも、俺は全身の力を頼りに、一歩一歩前へと足を踏みしめた。

この野郎・・・今まで俺は友達がいないだとか嫌われるだとか
散々下らない事を言ってたけどよ・・・
決してそんな事は無かったんだ。
友達が居て、初めて俺は友達を救おうと思ったし
友達が居て、初めて俺は友達の力を頼る事が出来たんだ。
あの"渦"は俺の心と同じだ・・・現実を認めねえ心の底に開いた穴だ。
今こそ、あの穴を・・・塞いでやる!!!

「ぐぁああああああ!!!」

俺は勢いを付けて思い切り"渦"に向かって跳び上がり
"渦"に霊蓋を被せた。