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GANTZ Paradise Lost 田中星人篇

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第一話・雄三君?




ジリリリリリリリリリリリリリリ・・・・・・・・


「ん・・・あ・・・・」

朝、けたたましい目覚まし時計の音に俺は叩き起こされる。

「ったく・・・るっせーな・・・」

文句を言いながらも時計を止める。
・・・日曜日くらいゆっくり眠らせてくれよ・・・
寝巻きのままで洗面台の前に立つ。
鏡には寝起きでささくれ返った髪と涎の跡がだらしなく残った、見事なまでのアホ面の俺が映る。
俺は鏡台の上から歯ブラシを取り、歯磨き粉を塗る。


シュコシュコシュコシュコ・・・・・・


俺以外誰も居ない部屋に歯ブラシの音が空しく響き渡る。


―――そう言えば・・・・―――


俺は昔を思い出す。
思えば、この部屋で一人暮らしを始めてもう2年になる。


―――最初に一人暮らしの話が持ち上がったのは確か・・・中3の終わりぐらいの時だったか―――


突然だが、俺には家族が居ない。
一応、戸籍上は居る事になっているがそれはあくまでも、うわべだけ。
そう、俺は養子なのだ。
だから俺は、本当の父親も母親も知らない。
知っているのは偽者の両親気取りの偽善者と、そのバカ息子だけ。

「・・・・結構な人生じゃねえかよ・・・・」

俺は自嘲した。

「見下されて、比べられて・・・・ホント、俺って大したモンだわ・・・・」

俺は歯ブラシを元の場所に戻した。
そのままダイニングへ向かい、冷蔵庫を開ける。
一人暮らしに見合った、小さな冷蔵庫だ。
中には缶入りの炭酸飲料や冷凍食品なんかが整然と並べられている。
その中からパック入りの麦茶を取り出し、グラスに注いで一気にあおる。

「・・・ぷぅっ・・・・・・」

ひと心地つきながらそこにあったリモコンでテレビの電源を入れる。
スピーカーから天気予報の女子アナの声が流れ出し、それに続いて画面の上に日本列島の天気図が映る。
それを脇目に見ながら、着替える。


これが、俺の朝だ。
何の変哲もない、ほぼ無意味な習慣。
平凡すぎる、クソ面白くもない日常。



―――そんな俺が、非日常に遭遇した・・・・・か―――



俺は後ろを向いた。
そこには俺の制服や上着なんかがハンガーに吊るしてあるのだが・・・・その一番右端の台の上に、例のブツはあった。

「・・・・・ガンツ・・・・スーツ・・・・」

俺はふと、その単語を口にした。
特に名前はついていないのだろうが、何となくそんな名前なのだろう、と思う。
命名の理由は昨日のあの黒い球体(ガンツ)の中に入っていたからだ。


・・・・・・しかし、あのガンツとやらは一体何の為に存在しているのだろうか・・・


あの中坊曰く、死者を集めて宇宙人と戦わせるとの事らしいが・・・・じゃ、何で宇宙人と戦わにゃならんのだ?
生きてる人間を集めてるならまだしも、死んだ人間を集めてどうする?
いや、待て、むしろどうやって死んだ人間を生き返らせてんだ?
疑問が溢れ出して止まらない。


「・・・・ま、別に良いか・・・・なるようになるさ・・・・」


と、いつも通りの無気力精神を発揮していると・・・


ピンポーン・・・・


チャイムの音が鳴る。

「人が休日を謳歌しようとしてる時に何だ?」

俺は席を立つ。

「宗教勧誘とかだったら、ブチ殺してやる・・・」

思わず、そんな危険な台詞が零れる。
が、しかしドアの向こうに居たのは宗教勧誘などではなかった。


ガチャッ・・・・


ドアを開ける。
そこには・・・


「あの・・・工藤さんのお宅でしょうか・・・?」